どんな経験を積むと、市場価値が上がるのか?
リクルートが毎年出している「就職白書」の2021年版によると、学生が就職先を決める決め手となった項目第1位は「自らの成長が期待できる」となっている(下の記事参照)。
成長が期待できる環境で働くことが安定——。今は新社会人の時期から将来の市場価値を意識して就職先選びをする人が増えているのだ。
しかし、この市場価値を左右する経験とはどんなものなのか?「ジョブ型」が広まる中、職業ごとに求められる専門スキルを磨けばいいのか?
この疑問について、NewsPicksはこの3月末にパーソルキャリア「サラリーズ」の協力を得て、同社が蓄積した100万人以上の勤労者の職務経歴書から見えてきた「年収800万円以上の人が持つワークタグ(仕事に限らず、人生においてやってきた経験とそこから得たスキル)」を緊急入手。
営業やコンサルタントなど、5つの職種別に「稼げるワークタグ」を分析したNewsPicksの記事と連携して(詳細は記事末尾にて)、本稿ではビジネスパーソン全般の調査結果を紹介する。
果たしてどんな経験をしてきた人が高給を得ているのか。「サラリーズ」責任者の正能茉優(しょうのう まゆ)さんに傾向を聞いた。
「サラリーズ」が持つキャリアデータの中でも、【年収800万円以上】の人が持つワークタグのトップ20を表にすると、次のような結果となった。
1位は「管理」、2位は「事業」、3位は「運営」で、他の上位タグを見てもマネジメントを想起させる言葉が並ぶ。
20代〜30代がキャリアアップの際に想像しがちな「専門スキル」より、チーム運営や事業運営にまつわるワークタグが多い理由を、正能さんは次のように説明する。
「一般的に年収アップという観点で見ると、自分1人で成果を出すこと以上に、チームとして成果を出せるかが問われます。だから、組織として力を最大化することができる経験を持っている人のほうが、年収も高くなるのです」
組織で働く以上、「チームで成果を出す」ための経験が評価されるというわけだ。
こう書くと、管理職としての経験が市場価値を高めると考える人がいるかもしれないが、必ずしもそれだけではない。
2位の「事業」や4位の「設計」の意味を深読みすると、そもそも「チームを統率・けん引する」仕事には2つの文脈があるからだ。
組織のリーダーとして仕事をする
事業の上流から携わる
このうち、2に関する仕事は「課題を見つける」「戦略を立てる」「ルールメイキング」などもある。
「例えば新規事業でルールメイキングから携わるには、個人の成長だけを追うだけでは難しい。社内外の関係者とタフな交渉をして、利害関係が異なる他部署とも調整をしながら前に進んでいくことが求められるからです」
特に若い時期は、こうした経験は会社から与えられたタスクをこなすだけでは得られないと正能さんは言う。
「大学時代にハピキラFATORYでの活動を始め、今はパーソルキャリアでサラリーズという事業の責任者をやっている私も、最初から事業運営のノウハウを持っていたわけではありません。
まずは自分が事業を通して社会に実現したいことと、社会的にインパクトを出すための数字目標を考え、それを達成するにはどういうリソースが必要か?を逆算しながら社内外の人たちと交渉する。
例えばこんな動きは、『ポジションを与えられたからできた』というより、自ら事業の存在意義とその実現方法を考え続けたからできること。年齢は関係ないように感じます」