今年の東京大学の入学式で述べられた祝辞が、学内で話題になっている。
藤井輝夫総長は4月12日、祝辞の中で「東大関連ベンチャーの支援に向けた取り組みを積極的に進め、2030年までにその数を700社にするという目標を掲げています」と明言。
「起業というと、会社を興して利益をあげることとイメージされがちですが、そうした理解は十分なものではありません」と続け、新入生に起業家精神を持つことの大切さを説いた。
祝辞にもかかわらず、全体の3分の2程度が起業についての話だったこともあり、在校生に驚きを与えたのだ。
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昔から、国家公務員や日系大手企業への就職などで保守的なキャリアを歩むことが多いと言われる東大生。彼らの目に、保守の対極とも言える「起業」の2文字はどのように映ったのか。
筆者自身、東京大学に通う学生の1人として興味を持った。
そこで、複数の東大生に今回の祝辞に対する率直な感想を聞き、現役東大生の起業に対する考え方やキャリア観を探ってみた。
あまり知られていないかもしれないが、東京大学はすでに日本一のベンチャー輩出校になっている。
2021年5月に経済産業省が発表したデータによると、2020年に存在が確認された大学発ベンチャーは2905社。そのうち、東大発のベンチャーは323社と最も多い。
数だけ見れば、東大はすでに起業のメッカと言っても過言ではない。
起業を志望する東大生への支援も盛んだ。
2004年創業のUTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)は、本郷キャンパスに本社を置く。現在までに累積で約850億円、5本のファンドを運営しており、140社以上に投資を行っている。
大学の産学協創推進本部が運営するスタートアップ支援プログラム「東京大学 FoundX」の動きも見逃せない(FoundXディレクターの馬田隆明さんインタビューは以下)。
スタートアップに興味がある卒業生・研究者に無償で起業に役立つリソースを提供し、先輩起業家に気軽に相談できる環境も用意しているという。
他に、「東京大学アントレプレナー道場」という起業を初歩から学べるプログラムも用意されている。東大生であれば、履修登録することなく受講できる。
藤井総長の言葉を裏付ける取り組みは、かなり進んでいるのだ。
一方で、現役学生の起業に対する本音はどのようなものなのだろうか。筆者の知人で、学部の異なる東大生5名に、総長祝辞に対する感想を聞いてみた。