ベンチャーキャピタルの仕事は「総合格闘技」成長支える3つの思考法

ベンチャーキャピタルの仕事は「総合格闘技」成長支える3つの思考法

  • ベンチャーキャピタリスト

3月11日、経団連が「スタートアップ企業の育成に向けた提言」を発表した。


時価総額10億ドル(約1160億円)以上のユニコーン企業を100社に増やすことや、その旗振り役としてのスタートアップ庁設立などを盛り込んだ同提言は、「起業後進国」と呼ばれる日本の現状が変わるきっかけになるのではと、大きな注目を集める。


もっとも、同提言内で一部言及されているように、スタートアップ産業の活性化にはリスクマネー(ハイリスク・ハイリターンが見込まれる投資マネーで、多くの場合ベンチャー投資を指す)の供給増加が不可欠だ。


そこで大きな役割を担うのが、ベンチャーキャピタル(以下、VC)である。


VCとは、未上場の新興企業に対して出資を行う投資ファンド。そこに所属する投資担当者はベンチャーキャピタリストと呼ばれ、今注目を集める職業の一つだ。


メルカリやランサーズといった名だたる企業への投資実績をもち、日本で最も影響力のあるベンチャー投資家の1人とも目される、グロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)代表パートナーの高宮慎一(たかみや しんいち)さんは、「ベンチャーキャピタリストの仕事は総合格闘技」と語る。


「Entrepreneur behind Entrepreneurs(起業家の背後にいる起業家)」とも表現され、幅広い知見や専門性と、起業家同様のタフさを要求されるVC。高宮さんに、その仕事の詳細と職種の未来について聞いた。

グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮慎一 経歴

目次

ベンチャーキャピタルは「世界を前進させる装置」


—— 高宮さんが考える、ベンチャーキャピタリストの定義について教えてください。


あえて定義をするなら「イノベーションを普及させ、世界を一歩前進させる社会装置」でしょうか。


VCはLP(Limited Partner:機関投資家やグループ企業など、VCが運営するファンドへの出資者)と呼ばれる投資家から預かったお金をスタートアップ企業に投資し、投資先の成長をファイナンスと経営の両面で支援する仕事です。


起業家に伴走し、エグジットと呼ばれるIPO(Initial Public Offering:新規株式公開)または、M&A(Mergers and Acquisitions:企業の合併・買収)で株を売却して、投資家にリターンをお返しします。逆に、エグジットに至らないとお返しできません。


投資家に経済的リターンをもたらすことだけが、私たちの役割ではありません。また投資家も、経済的リターンを得ることだけが目的だとは限りません。


実際、イノベーションの普及や雇用の創出などの社会的価値に、起業家への投資を通じて貢献しようというモチベーションを持っている投資家は少なくありません。


金銭的リターンと社会的意義という、近視眼的に捉えると対立しそうな2つのモチベーションを、スタートアップ投資という仕事を通じてうまく両立させる——。VCは、社会インフラ的な役割を担う組織体だと思っています。


—— 投資先となるスタートアップ企業だけではなく、VCに資金を提供する投資家、そして社会にも向き合う職業なのですね。


皆さんが目にしやすいVCの役割はおそらく、スタートアップ企業への支援、つまり「起業家に対しての価値提供」だと思います。


もちろん、そうした「スタートアップ投資家」としての動きは主たる役割ですが、同時に「ファンドの運営責任者」としての責任も背負っています。


僕ら自身も投資家から資金調達をするのですが、僕は海外からのファンドレイズ(投資家を集めファンドを組成すること)を担当しているので、起業家の皆さんの苦労が身に沁みます。

ベンチャーキャピタルのビジネスモデル

投資家とVCの関係性は、VCと起業家の構造に似ています。VC自体もファンドという“プロダクト”を持つスタートアップ企業であり、そのプロダクトに対して投資家に出資してもらっているのです。


ベンチャーキャピタリストは「総合格闘技」

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