【要点解説】就職・転職前に「会社の未来が見える」決算書の読み方

【要点解説】就職・転職前に「会社の未来が見える」決算書の読み方

    会社説明会やOB・OG訪問、口コミサイトなどなど。


    就活や転職活動を始める時、「企業分析」に向けて情報を集める方法はたくさんある。だが、人に聞く場合はどうしても相手の主観が入ってしまう。


    そこで、企業の特徴を客観的に分析したい時に使える情報が、上場企業が必ず出している決算書だ。


    貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書。その企業の業績を表す数字から“健康状態”をきちんと読み解くことができれば、同じ業界の企業でどこが伸びそうかも見えてくる。


    では、具体的にどの指標をチェックすれば、企業の未来がわかるのか?


    本稿では、難しい数字の羅列から知りたい情報を見いだす方法を、決算分析に精通するNewsPicksの平岡乾(ひらおか けん)記者が解説。


    就活前に知っておきたい5つの項目について、NewsPicksの学生インターン2人が聞いた。


    1. 企業の競争力はどこを見ればわかる?

    2. 給料アップの可能性はどう見極める?

    3. 買収されるリスクは?

    4. 就職先で「伸びている配属先」を選ぶなら?

    5. 新しいことに挑戦できる企業かどうか?


    ※この記事は、NewsPicksに掲載した動画の無料ダイジェスト版になります。本編は末尾にあるリンクをご覧ください。

    写真右がNewsPicksの平岡乾記者
    NewsPicksの平岡記者(写真右)に質問する学生インターン

    目次

    1. 競争力を知るには「営業利益率」を見よう


    最初に学生インターンが質問したのは、就職先を選ぶ時、どの数字を見れば各企業の競争力がわかるのか?だ。


    分析方法はいくつかあるが、平岡記者は小売業界大手のイオンと、「セブン-イレブン」など複数の小売チェーンを持つセブン&アイ・ホールディングスの2社を比較しながら、「学生がここだけは見ておくべき指標」を説明する。

    就職・転職前に「会社の未来がわかる」決算書の読み方-1

    学生インターン鈴木朋宏(以下、鈴木):就職したい企業ランキングのような人気投票ではわからない、企業の本当の競争力を見る時は、決算書でどの指標を見ればいいんですか?


    平岡:まずは「営業利益」を見るのがいいでしょう。例えば小売企業なら、本業となるスーパーマーケットチェーンで、どれだけのコストを使って利益を出しているのかがわかるからです。


    特に、売上に対して利益がどれくらいあるのかを表す「営業利益率」をチェックしてみましょう。


    業界内で売上高が1位の会社だったとしても、営業利益を見比べると、同じ業界で売上高が5位の会社とそれほど変わらないという場合があります。


    つまり、5位の会社のほうが営業利益率が高い。これがわかっているだけでも、競争力があるかどうかの判断がしやすくなるのです。

    就職・転職前に「会社の未来がわかる」決算書の読み方-2

    鈴木:なぜ、営業利益率を見ると会社の競争力がわかるのですか?


    平岡:企業の売上高というのは、世の中に対する「お役立ちの総和」なんですね。一方、利益とは「その会社にしかできない貢献度合い」を示す数字です。


    だから後者のほうが、より正しく会社の強みを表している。


    鈴木:営業利益率を見る時は、やはり同業の競合他社で見比べるのがいい?


    平岡:そうですね。営業利益率は、業種、業態によって「何%くらいが平均値なのか」が変わるので。


    実際に、イオンとセブン&アイ・ホールディングスの決算を例に見ていきましょう。


    2010年以降、どちらも売上高が伸びていて、特にイオンはいろんな会社を買収することで8兆円を超える売上高を記録しています。一方のセブン&アイ・ホールディングスは5兆円規模。この数字だけを見ると、イオンのほうが競争力が高いように思えます。

    就職・転職前に「会社の未来がわかる」決算書の読み方-3

    ところが、2021年2月期の決算書で営業利益率を見ると、イオンは売上高が約8.6兆円で営業利益が約1500億円。2%弱の営業利益率になっています。


    対するセブン&アイ・ホールディングスは、営業利益が約3600億円で、イオンの2倍近い数字でした。売上高は約5.7兆円でイオンより低いものの、営業利益率に換算すると6%くらいになります。

    就職・転職前に「会社の未来がわかる」決算書の読み方-4

    鈴木:なぜこの差がついたのでしょう?


    平岡:もちろん要因はいくつかありますが、一つはセブン&アイ・ホールディングスがセブン-イレブンなどで展開しているプライベート・ブランド「セブンプレミアム」が好調だからです。


    一般的なプライベート・ブランドは、他のメーカーの商品より安いことが売りですが、「セブンプレミアム」は高級志向を打ち出して他社の商品より値段が高くても買ってもらえるようにしています。


    営業利益率とこの事実を掛け合わせて考えると、先ほどお話しした「その会社にしかできない貢献度合い」が読み取れるわけです。


    鈴木:会社ならではの商品に競争力があるから、高くても売れる。そういうことなんですね。


    2. 給料アップの余地は「1人あたり営業利益率」でチェック

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