起業や独立、新しい会社への転職などのチャレンジを思い浮かべる時、失敗への不安も一緒に浮かんではこないだろうか。
困難のない挑戦はない。頭では分かっていても、変化や未知のものを避ける「現状維持バイアス」が働くのが、人間の本能でもある。
このバイアスに、読書を通じて対処できるようになったと語るのが、メンズスキンケアの市場を拡大させたブランド「BULK HOMME(以下、バルクオム)」の創業者・野口卓也(のぐち たくや)さんだ。
学生時代は小説家を目指し、19歳の若さで初めて起業した時は電子書籍アプリを制作するITベンチャーを立ち上げたほど。無類の本好きである。
そんな読書家の野口さんに、若手ビジネスパーソンのお守りとなるような「苦境に陥った時に救ってくれる5冊」を、印象的なシーンとともに聞いてきた。
—— 野口さんはバルクオムの前に電子書籍アプリの会社を立ち上げたほど、本好きだと聞いています。
そうですね。若い頃は小説家を目指していたこともあり、年間100冊は読んでいます。
ビジネス書の主要な新刊は、実用書から自叙伝までほぼ全部読みますし、漫画や小説も読んでいます。
—— バルクオムを起業後、今のようにブランドが知られるまで、さまざまな困難があったかと思います。本が救いとなったのは、どのような瞬間でしょうか?
バルクオムを立ち上げてから2年くらいは、思うように売り上げが立たず、じわじわとメンタルがむしばまれるつらい日々が続きました。
他にも社員が辞める、よくない噂が立つなど、経営をしているといろんなことが起きます。
僕はネクラで傷つきやすいので、従業員数が50名を超えて順調と言える今でさえ、毎日「つらいな」と思いながら仕事をしています。
けれど、先輩起業家の自伝や体験談を読むと、僕の経験している苦境なんてちっぽけなものだと思わされます。
僕は経営者の人生や頭の中を、トレースできるような本が好きで。
ライターによってきれいに修正された言葉ではなく、句読点の打ち方まで本人の息遣いが聞こえてくるような、経営者自身の生々しい言葉で書かれている本です。
僕には会社を追われた経験も、生きるか死ぬかの大きな借金を背負った経験も、まだありません。
ですが、そういった経営者の本を追体験するように読んでいたおかげで、これから先、本当の困難に向き合わざるを得なくなった時の不退転の覚悟ができました。