会社が社員を育てる時代から、個人でキャリアを切り開く時代となり、「副業(以下、文脈に応じて「複業」表記)」はずっと身近なものとなった。新入社員でも、副業を始める人が増えている。
しかし、フルタイムで働く会社員にとって、興味はあっても「どう始めればいいのか」「本業と両立し続けられるのか」と、ハードルの高さを感じることも多いのではないだろうか。
パラレルキャリア研究所の代表を務める慶野英里名(けいの えりな)さんは、出版社に勤務しながら、これまでパラレルキャリアに関するイベントを80回以上開催。
自身も複業でキャリアを切り開きながら、たくさんの副業経験者と対話してきたという。
そんな慶野さんによる実践的な副業の始め方解説から、タイムスケジュールのコツ、副業疲れの防止法までを、「複業ライター」の岡田が聞いた。
岡田:今回は、私もいち複業実践者として、パラレルキャリアの研究をしている慶野さんにいろいろ学ばせてもらえたらと思っています。
最初に聞きたいのは、なぜ会社勤めをしながら複業を始めたのか?です。
慶野:私は小さい頃から文章にかかわる仕事をしたいと決めて、戦略的にキャリアを描いていたつもりでした。
しかし20代前半で2度、自分が思い描いていた未来がひっくり返る経験をしたんです。
1回目は、大学卒業の間際。学生ライターとして編集プロダクションに所属していましたが、突然、社長が病気で余命宣告を受け、会社をたたむことになりました。そこに就職するつもりで、就職活動もしていなかったんです。
2回目は、新卒1年目の時。1年の就職浪人を経て、ようやく希望する医療系の出版社に入社しました。
しかし配属先は、なんとコールセンターの庶務。入社するまで、その部署があることすら知らされていなかったのにです。
それで、未経験ながら知り合いが出す書籍の編集担当を買って出てスキルを磨きつつ、社内ではいろんな方に相談しながら異動を願い出まして。入社2年目に、なんとか編集部門に異動できました。
岡田:強烈な原体験ですね。
慶野:会社は潰れることがあるし、配属は個人の人生の満足度が優先されにくいことを痛感しました。
編集部門に異動してからも、人生をかけられる旗を探してあれこれ活動していたのですが、一番しっくりきたのが「パラレルキャリア」だったんです。
「会社の中で閉塞感を感じていて、なんとなく今の状態を変えたい」「けれどロールモデルがいなくて、方法が分からない」。
自分自身がそう感じて始めたパラレルキャリアについて、同じような悩みを持つ方にも情報提供することで、人生をポジティブに変えていくお手伝いがしたいなと思いました。