働き方改革や、コロナ禍によるリモートワークの普及で、副業を始める人が増えている。
収入を増やすため、好きな仕事に取り組むため、スキルの幅を広げるため。目的は人それそれだが、副業を通じて新たな見識を得ることで、キャリア形成に転機が訪れるのは間違いない。
これは、副業を「受け入れる」側の社員も同じだ。社外の人たちと協業する機会は、視野を広げるチャンスになる。
では、副業を単なる業務委託で終わらせず、する側の人、受け入れ側の社員双方の未来を明るくするには何が必要なのか。
2021年に創業以来初の「副業人財」の公募を始めたオムロングループの事例を通じて、キャリアにメリットをもたらすコラボレーションのあり方を探った。
—— まずは受け入れ側となった大藪健二さんに、オムロン ソーシアルソリューションズで副業希望者を募集した背景を教えてもらえますか?
大藪:オムロン全体が「物売り」から「ソリューションビジネス」に転換していく中で始めた新規事業を、軌道に乗せるというのが大きな目的です。
我々が担当したプロジェクトでは、昨年3月にリリースした「Facility Log(ファシリティログ)」というクラウド型ビル管理システムを使って、お客さまにとっての新しい価値を生み出すのがミッションでした。
—— 「ファシリティログ」は、どんなサービスなのですか?
大藪:もともとオムロン ソーシアルソリューションズのお客さまだった鉄道会社を含めて、ビルや大型施設の管理を行う企業が抱えるメンテナンスの人手不足問題を解消するサービスです。
今は、高度成長期に建てられた施設が老朽化していく中で、どう維持していくかが喫緊の課題になっています。一方で、そういう古い建物の管理を担う人材は、ベテランの定年退職などもあって年々減っています。
そこで「ファシリティログ」は、スマートフォンやPCで簡単に点検業務をできるようにした上で、収集した点検データを管理側がすぐに見れるようにしています。
分かりやすく言うと、これまで人が紙に手書きする形で行ってきた点検業務をDX化するのが狙いです。
ただ、リリース前からデータ活用の仮説は持っていたものの、収益化に向けてどうやってデータを加工・提供すればいいのか、試行錯誤を続けていました。
そこで、データサイエンティストの板津勇太さんに副業で入っていただき、データ活用の仮説をブラッシュアップして新たな機能・サービスの形にするまでを一緒にやってきました。
—— 板津さんは、なぜこの副業プロジェクトに興味を持ったのですか?
板津:私は約10年間、AIベンチャーやコンサルファームでデータサイエンスの仕事をしてきましたが、ビルのようなリアルな対象物のデータを収集してビジネスにつなげる経験はしたことがありませんでした。
そんな中、登録していたビズリーチでオムロンの副業人財募集を見て、仕事の幅を広げる意味でもやってみたいと思ったんです。
新規事業ということで、これからマネタイズの素地をつくっていくフェーズだったのも、やりたいと思った理由の一つでした。