広告費ゼロでブランドのファンを増やす「LUSH」驚異のPR術

広告費ゼロでブランドのファンを増やす「LUSH」驚異のPR術

広報・PR関係者の間でたびたび話題に上がる企業がある。


色鮮やかなバスボムやスキンケア商品を世界に展開する、英国生まれのコスメブランド「LUSH(ラッシュ)」だ。


注目を集めるのは、そのユニークなPR手法。多くの企業がSNS広告やメディア露出を通して認知を高めようとする中、LUSHは「広告枠を買う」ための予算取りを一切しないという。


その代わり、人権擁護や自然環境の保全など、企業の考えを伝えるエシカル(倫理的)なキャンペーンを展開することで、ハッピーでヘルシーな生活を応援するというブランドメッセージを伝え続けてきた。

LUSHが行ったキャンペーン例
出典:ラッシュジャパンCompany Profile(2021年)より

昨年11月は、FacebookやInstagram、TikTokなどのSNSが恣意的に表示アルゴリズムを操作しているという理由で、過度に見続ける若者への悪影響を懸念して一部SNSアカウントの運用停止を発表(詳細は後述)。多くの反響を呼んだ。


PRの語源は「パブリック・リレーションズ」。社会の公器として、文字通りパブリック=公衆と真摯に向き合いながら、共感する顧客を増やしてきたのだ。


このような姿勢に引かれて、2014年からラッシュジャパンのPRを務めてきたのが小山大作(こやま だいさく)さん。世界中でファンをつくるLUSH流PRの秘訣を聞いた。

ラッシュジャパン 小山大作さん 経歴

目次

PRで社会に影響を与える仕事を


—— まずは、小山さんがPRの仕事に就いた経緯を教えてください。


もともとは映画業界に携わりたいと思っていました。PRに興味を持つようになったきっかけは、アメリカ留学中に見た禁煙啓蒙のCMで。


最初、女性の顔がアップで映って、いかに喫煙が体に悪い影響を与えるかを語り始めるんです。それがだんだんズームアウトしていくと、首に太い呼吸器がつながっていて……。


「もっと早くに分かっていたら、こんなことにならなかった」というメッセージで終わるんです。


—— 強烈なCMですね。


今でも鳥肌が立つくらい、こんな広告表現があるのかと感動しました。その他にもアメリカでいろいろと考え方が変わる機会があって、自然とマーケティングやコミュニケーションにのめり込んでいったのです。


そして帰国後、新卒でPR会社に入社して仕事のイロハを学び、2006年に化粧品ブランド・エスティ ローダーグループの「アヴェダ」へ転職しました。


ここで初めて、商品プロモーションの枠を超えて、企業が大切にしていることを伝えるコーポレートコミュニケーションも担当しまして。PRの仕事の意味を、すごく実感した期間でしたね。


3社目はスマホが広がっていった時期と重なっていて、日本におけるデジタルマーケティング業界そのものを発展させるためのPRを担当していました。いろいろな企業のデジタル施策を表彰する、アワードの企画運営などもやっていました。

過去の経歴を語るラッシュジャパンの小山大作さん
PRパーソンとしてのキャリアを語る小山さん

—— さまざまな商品プロモーションから、コーポレートPR、デジタルマーケティングまで経験してきたのですね。


今並べて話してみると、すごくきれいなキャリアに聞こえるかもしれませんが、いろいろと悩んだ時期もありました。


働きながらずっと思っていたのは、自分が持つPRのスキルをどう使うのか。ただ仕事として給料をいただくだけではなく、社会に対してどう影響を与えられるか、影響を与えていきたいかを考えるようになっていったんです。


そこで、たまたまその時にラッシュジャパンの募集を見て、これだ、と。


顧客データを活用「しない」

残り4403文字(全文5264文字)

続きを読むには

JobPicksに登録する3つのメリット

  • JobPicks記事が
    すべて読み放題
  • ロールモデルが
    投稿した経験談が
    読める
  • 職業研究に役立つ
    メルマガが届く

この記事に関連する職業

経験談・年収・キャリアパス・将来性などのデータ・ロールモデルをこちらでご覧いただけます