新型コロナワクチン接種証明書アプリやマイナンバーカード活用など、国民向けのサービス開発から行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)まで。大小合わせて、すでに1000近くのプロジェクトを推進しているというデジタル庁。
2021年4月に始動した同庁は、「オープン・透明」を合言葉に民間から多くの人材を採用していることでも知られている。
2021年12月時点で約600人いる職員のうち、3分の1を占める200人近くを民間企業から採用。パラレルワークを実践する非常勤職員も数多くいる。
そんなパラレルワーカーたちは、日頃どんな形で仕事に取り組んでいるのか。会社勤めをしながらデジタル庁で働く新徳雅隆(しんとく まさたか)さん、長谷川 亮(はせがわ りょう)さん、高野葉子(たかの ようこ)さんの話を通じて、現状とこれからを知る。
── まずは皆さんがデジタル庁に応募した経緯を教えてください。
新徳:私はデジタル庁が初めて民間採用を行うと話題になった時に、募集内容を見て興味を持ちました。
当時のジョブディスクリプション(募集要項を記した職務記述書)群の内容が、どれも特化していたので。尖った人材を募集しているというメッセージ性があり、中央省庁としてはとても現代的な内容だと感じたんですね。
一方、もちろん一朝一夕で変わるわけはないのでまだまだレガシーな部分もあるなという印象でした。
そこで、新卒から約10年働いたSIerで担当した官公庁向けの大規模開発と、ITスタートアップでのモダンなソフトウェア開発、両方の知識が生かせるかもしれないと思ったんです。
結果、無事に内定をいただき、初の民間人材として去年の4月12日に入庁しています。
長谷川:私も同じ4月12日入庁で、民間採用の第1期です。応募のきっかけは偶然の出来事でした。
勤め先のメガベンチャーでデータ人材を募集するため、他社の募集要項を調べていたら、デジタル庁が検索にひっかかったんです。
「何で省庁がひっかかるんだ」と疑問に思い確認したところ、デジタル庁がデータ人材を募集していて。それを見て、面白そうだし国のデータにも興味が湧いたので応募しました。
高野:私は昨年7月の入庁なので、民間採用では第2期にあたります。きっかけは、育児休暇中にSNSで見つけた募集要項でした。
2021年に出産し、育休明けのキャリアを考えていたタイミングだったこともあり、「面白そうだ」と応募しました。
── デジタル庁で担当している仕事内容は?
高野:私は広報を担当しています。
主な業務は、公式SNSやnoteを使ったPRや報道対応、国民の皆さまとのコミュニケーションなど。ステークホルダーが数多くいるので、各方面とのリレーション構築を始めている段階です。
デジタル庁の発足直後は、メディアの注目度が高かったので報道対応がメインでした。
今はそれに加えて、昨年10月から始めた通年採用の採用広報や、デジタル庁で働く職員のリアルな声を届ける情報発信にも力を入れています。
長谷川:私はシニアデータスペシャリストとして、「ベース・レジストリ(社会活動で必要な基礎的なデータ群)」の整備を行っています。民間や行政内で活用できる、社会の基幹となる巨大なデータベースを作るイメージです。
AIや機械学習、データサイエンスなど、データを活用する技術は日々進化しています。それらをサービスに最大限生かすには、データを一元的に管理するシステムが必要不可欠です。まずはその整備から始めているところです。
中央省庁や自治体が持っているデータは、Excelで管理されているものもあれば、PDFになっているものもある。
こういった機械が使いにくい状態のデータを共通化・規格化して、機械が使えるようにするための戦略設計を進めています。
データを使ったサービスの関係者には、省庁だけでなく地方自治体の方々も含まれます。なので、実際に自治体に赴いてデータの活用状況をヒアリングしながら、今後の行政サービスのあり方を議論しています。
新徳:私は、主に2つの業務を担当しています。
1つはデジタル庁内のデジタル化。具体的にはいくつかありますが、例えば庁内の業務を把握してリソースを割り当てる仕組みづくりだったり、文書をプログラマティックなものにして執筆・公開をデジタルに行う仮説検証だったり。
もう1つは、デジタル庁自体の組織づくりです。組織が大きいので、横串を通す存在として横断的にスタッフと話をして、情報収集しながら組織運営を改善する動きに貢献しています。