親の言うことは聞かなくていい
── Z世代の就活生の半分は、「転職を意識して就活」しており、「成長できる企業」が会社・仕事選びのもっとも重要な軸になっています。しかし、終身雇用を信じる親世代からしたら「安定した会社」に入ってほしがる傾向が強くあります。
安田:結論から言うと、親の言うことは100%聞かなくていいと思います。
寺口:同感ですね。
安田:親なんて、基本、無責任じゃないですか。子より先に死ぬんですから(笑)。僕は今25歳の娘が就活の時、娘の会社選びに対して何も言わなかったですよ。ただ、「君を落とした人事は、みんな馬鹿だ」とは、言っておいたけど。
寺口:僕は、親と子が求めている目的は多分、一緒だと思うんですよね。親も子も、「安心」が欲しいだけだと思うんです。
親は子どもが心配だから、食いっぱぐれたり、苦労してほしくないし、就活生も食いっぱぐれたくないし、苦労もしたくない。
ただ、その「手段」が違うから、揉めるのだと思います。
親が考える安心のためのソリューションは、安定した企業に入ってもらうこと。他方、子どもが思う安心は、個人としての市場価値を上げてキャリアの資産を作ること。
終身雇用の崩壊に対するリアリティが親子間でラグがあるので、それに対するアプローチがズレているのだと思います。
親世代の人気企業は今もある?
── では、親世代はどのような価値観で自分の就職先を選んだのか? そのサンプルとして、1992年に東京大学を卒業した(学部卒)人の、民間企業、中央省庁、外資系の就職人数を示したのが下図です。
安田:すごいですね。民間の就職先1位が東京電力ですよ。2位が日本放送協会(NHK)で、3位が富士銀行(現:みずほ銀行)と新日鐵(現:日本製鉄)。
ベスト20に、三菱銀行(現:三菱UFJ銀行)、日本興業銀行(現:みずほ銀行)、三和銀行(現:三菱UFJ銀行)、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、住友銀行(現:三井住友銀行)、日本長期信用銀行(現:新生銀行)など当時、都銀と呼ばれた銀行がズラリと並んでいます。
寺口:みんな合併を繰り返し、メガバンクになってしまいましたね。
でも、そもそも、ランキングってその時を写したトレンドでしかありません。
その時代にいいと言われた会社は、時代によって変わるし、今の人気企業もこうして30年後に振り返ると、また「あれ?」と言われていると思うんです(笑)。
「住みたい街ランキング」と一緒で、皆、興味半分で見るけれど、自分がそこに載っていない街に住んでいるからってコンプレックスに思う必要はないし、自分が住みやすい場所は人それぞれ違います。
たくさんの人はこういう街に住みたいんだくらいの距離感で見ればいいと思うんです。
今の学生に人気の就職先は?
── では次にZ世代である2021年卒の東京大学の卒業生(学部卒)の就職先を見てゆきましょう。民間1位はなんと楽天。三菱商事と三菱UFJ銀行が続き、ベスト10には、1992年にはランク圏外のコンサル会社が4社も入っています。
安田:コンサル人気は、寺口さんが先ほど言ったように、自分の市場価値を上げて「食いっぱぐれない」ようにしたいという、新たな安定志向の結果なのかもしれませんね。
会社に頼らないで、自分の力で生きていけるサバイバル能力を身に付けたい、と。就職はその入り口として、もっとも成長できる環境を選ぶということなのでしょう。
共感できますね。僕も最初に転職した理由はそうでしたから。会社に自分の運命やキャリアを握られたくない、自分の腕一本で生きていこう、と。
あと、 コンサルがこれだけ人気なのは、「何者」かになりたい人が多いんだと思います。
寺口:安田さんが仰るように会社に自分のキャリアを握られたくない人が、増えてきた感じがしますよね。
それは、やっぱりロールモデルの存在も大きいと思います。転職して活躍している人はもちろん、「FIRE(Financial Independence, Retire Early:早期に経済的に自由になりリタイアする)」もそうだし、フリーランスもそうだし、多様なキャリアの実例や情報が、インターネットやSNSに出回るようになったことの影響は大きいと思います。
反対に、サンプルが少な過ぎると、リスクを取って成功した人は、「あの人だからできたんでしょう」と、野球で言うとかつてのイチローのように言われてしまう。
最近やたら日本の野球選手がメジャーリーグに行かない?というサンプルが増えると、自分も行けるんじゃないかと思いますよね。
安田:実際、気付いたら、日本人選手が1球団分ぐらい、メジャーに行ってますしね。
寺口:やはり、就活や会社選びの決断にも、情報の影響は大きいですね。
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取材・文:佐藤留美、取材:平瀬今仁、鈴木朋宏、デザイン:國弘朋佳、データ集計:高橋祐貴(東京大学新聞社)