【10分動画】面接プレゼンで「心をつかむ伝え方」日テレ森アナが伝授
2021年12月16日(木)
伝え方のコツを学ぶには、まず実践から。森アナは、「伝える力を鍛えるには何よりも反復練習が大切。魔法なんてない」と語る。
そこで取材の冒頭では、しゅんダイアリーの福田駿さんとNewsPicks学生記者の平瀬今仁が、就職面接を想定した自己紹介を実演。その内容を森アナが添削する形で、伝え方のコツをひも解いていった。
すると、学生にとっては意外な盲点が明らかに。伝えるプロの指摘はいかに!?
福田:じゃあ平瀬さんから30秒で自己紹介をお願いします。
平瀬:はい、株式会社ニューズピックスから来ました平瀬今仁です。父が(英のロックバンド)ビートルズの大ファンで、メンバーだったジョン・レノンの名曲「イマジン」から名前をもらいました。
珍しい名前ですごく気に入っているので、イマジンと呼んでもらえるとうれしいです。
NewsPicksでは、JobPicks編集部という部署でキャリアや就活生向けの記事を書いています。本日はよろしくお願いします。
森:ありがとうございます。面接ではまず相手に覚えてもらうことが大切で、その点では過不足のない自己紹介だったと思います。名前の由来で印象付けたのは、とても良いやり方でしたね。
さらに良くするには、冒頭の「つかみ」を工夫するのがいいと思います。イマジンさん、最初に何とお話しされました?
平瀬:株式会社ニューズピックスの平瀬今仁です、と。
森:ですよね? 大方の大学生が、イマジンさんと同じように「自分の所属先(大学名)と名前」から自己紹介を始めます。だからこそ、冒頭で他の要素を話す構成にしたほうが、差別化になるのでメッセージも伝わりやすくなる。
平瀬:大学名と名前は最初に言わなければならないと思い込んでいました(苦笑)。面接では、そんなことないのですか?
森:全くないです。面接官は、大学の名前を何度も何度も聞かされます。だから、よほどユニークな大学名でない限り、他の学生との差別化にはなりません。であれば、最初の5秒は別のことを伝えたほうがいい。
この「最初の5秒」に何を伝えればいいのか、動画では森アナ自身が自己紹介をしながら説明している。
森アナの自己紹介は末尾の動画を見てもらうとして、福田さんと平瀬記者は次に「何を意識して自己PRをしたのか?」を質問していく。
そこで森アナが挙げたポイントは、極めてシンプルなものだった。
森:まずは冒頭で「自分がどんな人なのか?」を伝えようと考えました。自分のビジョンというか、なぜ伝える仕事をやりたいのかという志望動機を、自分のルーツと絡めて説明した格好です。
まず自分のビジョンを伝える
次にその正当性を説明する
最後に名前を言う
気をつけたのはこれだけです。
福田:話す順番を変えるだけで、印象がガラリと変わるものですね。何を話すかより、どう伝えるかのほうが大事なんだとリアルに分かりました。
森:なるべく難しい言葉を使わないのも大切です。無理に四字熟語を使わず、伝える内容の構成を気を付けるだけで、大事なメッセージが伝わりやすくなります。
動画では福田さんも30秒の自己紹介を行っているが、そこでは「話すスピード」についての貴重なアドバイスも。
森アナいわく、最近の学生はショート動画を見慣れているせいなのか、早口で話す人が増えているそうだ。
TV番組しかり、今はどんな動画にも字幕が付いている。加えて、インスタグラムやTikTokの短尺動画では、まくしたてるようにしゃべる演者が多い。
結果、目と耳を使って短時間で情報を得るのが普通になり、「声だけ」で情報を伝えなければならないシーンでも無意識に話すスピードが速くなってしまうという。
だが、それでは40代50代の面接官にも分かりやすくメッセージを伝えることができない。こんな悪癖も自覚した上で、話し方、伝え方を見直すべきだと森アナは言う。
では、伝える力を身に付けるため、日常生活の中でやれる行動には何があるのか。
森アナは、就活で必ず行う「自己分析」にもつながるやり方をアドバイスする。
平瀬:学生が明日から伝える力を磨くには、どんなことをやればいいでしょう?
森:自分が伝えたいことを、箇条書きにする習慣を持つのがいいと思います。つまり(自己PRにつながるような)手持ちのコマとして、どんな事柄があるかを書き出しながら整理するのです。
箇条書きにした手持ちのコマが10個あったとして、30秒で伝える時には「10個のうちABCの3つを話そう」と考えられるようになります。
30秒ではなく1分の自己PRなら、「ABCに加えて、あと2つは話せるな」とすぐに対応できます。
グループ面接で他の学生との差異を出すため、A→B→Cの順番をB→C→Aにしたほうがいいとなれば、書き出したコマを並び替えて伝えればいいのです。
福田:自己分析がしっかりできていれば、どんなシチュエーションでも効果的にプレゼンできるということですね。
森:おっしゃる通りです。「就活の前に自己分析しなければ」と自己分析そのものを目的化せず、自分の意思や強みをどう伝えればいいのかを考えながら、手持ちのコマを整理していく。
そうやって強みを可視化するために自己分析を行えば、あとは状況に応じて伝え方の構成を変えるだけです。
森アナは仕事柄、「表現の仕方次第でどんな人のハートもつかむことができる」という考えを大事にしているそうだ。
ミュージックビデオにたとえると、Aメロから入るスタンダードな楽曲もあれば、サビから歌い出す曲、ダンスから入る曲など、視聴者を飽きさせないアプローチがたくさんある。
これと似た発想で、手持ちのコマをいつでも並び変えて伝えられるように「バラバラに因数分解して頭に入れておく」(森アナ)のがコツになるのだ。
動画本編では、森アナがアナウンス技術向上のためにやっている日々のルーティンや、日テレに就職したいと考える学生に向けた「一緒に働きたい」と思う人の特徴についても語っている。
伝える仕事に従事している社会人や、テレビの世界に興味がある学生は必見だ。
▼続きは動画本編でcheck!
〜編集後記〜
日本テレビで長年アナウンサーとして、第一線で活躍される森圭介さん。物腰は柔らかいものの、伝え方や出てくる言葉の一つ一つに矜持を感じました。
中でも印象的だったのは、とにかく面接の受け答えを繰り返し、声に出して練習するということ。地道な積み重ねが、相手に伝わる伝え方につながります。
あくまでも面接は相手(面接官)がいるということを忘れてはいけません。
面接前は、どうしても完璧な回答の準備をしてしまいがちです。しかし、相手に伝わる言葉は難しい言葉やカッコいい言葉ではなく、等身大の言葉です。
多くの人が初歩的と見落としてしまいがちな、会話のキャッチボールを丁寧に行うことで、森さんのような相手に伝わる伝え方が身に付くのだと感じました。
(平瀬今仁)
取材:佐藤留美、平瀬今仁、文:伊藤健吾、デザイン:浅野春美、撮影・動画制作:しゅんダイアリー(福田駿、池田智哉、平田実慧)