セールスフォースCMOに公開質問「活躍するマーケター」の条件は?
2021年12月8日(水)
一口にマーケターと言っても、その業務内容は市場調査から広告運用まで多岐にわたる。
また、近年はインターネットの普及に伴い、WebマーケターやSNS運用などと役割の細分化も進んでいる。
そこで取材の冒頭では、しゅんダイアリーの福田駿さんとNewsPicks学生記者の鈴木朋宏が、消費財からITまでさまざまな業界を経験してきた鈴木祥子さんに「マーケターとはそもそも何をする人なのか」を聞いた。
福田:鈴木さんが考えるマーケターとは、ズバリどんな人ですか?
鈴木(祥)::シンプルに言うと、モノやサービスを買いたい人の心を動かし、売上と利益をつくる人です。
一般消費者向け(BtoC)と法人向け(BtoB)でも役割は変わりそうだが、売上・利益をつくるという点で共通しているようだ。
ただし、そのためには「売る」ことだけにフォーカスしてはいけないそうだ。
福田:つまりマーケターとは、商品を理解し、売るためにいろんなことをする職種なんですね。
鈴木(祥):そのためにも、お客さまに商品のファンになっていただくことが大切です。ご購入いただいた後に「買ってみたけれど、この商品はちょっと......」と思われては意味がないですから。
継続してサービスやプロダクトをご利用(購入)いただく仕組みをつくるのも、マーケターの大事な役割です。
動画内ではほかにも、マーケターとして経営にも携わるCMOとは何をする人なのか、鈴木祥子さん自身がマーケティング職に転身した経緯などを聞いている。
次に、外資系企業のセールスフォースに勤める鈴木祥子さんの、1日のスケジュールを聞いた。
福田さんと鈴木記者は、ある日のスケジュールを見て、会議の多さに驚きを見せた。
鈴木(祥):月曜日以外の朝8時〜9時は、米国本社の経営陣とのミーティングがあります。その後も、毎日30分おきくらいにミーティングが入っています。
鈴木(朋):(アメリカとの時差の関係で)早朝にミーティングが入るのも、まさにグローバル企業だなと思います。
もっとも、鈴木祥子さんはCMOとして、経営の意思決定と並行して約60人のマーケティングチームをマネジメントしているため、会議が多くなるのも必然かもしれない。
就職でマーケターを志望する学生は、OB・OG訪問などを通じて他社のマーケターにも1日のスケジュールを聞いてみながら、比較するのがいいだろう。
では、マーケターとしての実際の業務はどんなものになるのか。
セールスフォースに転職する前は、日本コカ・コーラやジョンソン・エンド・ジョンソンで飲料や消費材のマーケターも経験してきた鈴木祥子さんに、前述したBtoCとBtoBの違いを聞いてみた。
鈴木(朋):BtoBとBtoCで、マーケターの仕事内容はどう変わるのでしょうか?
鈴木(祥):実はどちらもそれほど変わりありません。「これくらいのコストを使い、この値付けで何個売れば、売上は何円になる」という計画づくりなど、基本は同じです。
福田:そうなんですね。
鈴木(祥):それに、BtoCでもBtoBでも、お客さまがどんなプロダクトを欲しがっているのか?というインサイト(洞察)が最も大切です。それがあって初めて、どんなプロダクトを、どう提供すればいいのかが見えてきます。
鈴木祥子さんはこれを「データに基づいて心をつかむ活動」と言い、あらゆるマーケターの基本になると話す。
ただ、個人的にはBtoBマーケティングのほうが「やりやすい面がある」と付け加えた。
鈴木(祥):一般消費者という「目の前にいない方も含めた不特定多数のお客さま」を対象にするBtoCより、BtoBのほうがやりやすいという感覚はあります。企業のお客さまの場合、サービスをご利用いただく際の反応が分かりやすいので。
最後に、こんな業務内容のマーケターを目指す学生に向けて、この仕事に向いている人の特徴を聞いた。
第一に、マーケターに普遍的に求められるのは向上心や知的好奇心だという。
鈴木(朋):どんなマーケターと一緒に働きたいですか?
鈴木(祥):データ分析の手法など、勉強することがたくさんあるので、何でも吸収してやろうという向上心のある方にお越しいただきたいです。
前述の通り、マーケターとは自社のサービスを継続的に購入してもらう仕組みづくりをする人だ。その業務範囲は多岐にわたる。
一流のマーケターになるには、こうした多様な業務への知見と経験が必要とされるため、高いレベルを目指して努力できる学生には向いていそうだ。
また、マーケターを目指す学生へのアドバイスを聞くと意外な一言が返ってきた。
鈴木(祥):普通の生活者として生活してください。それでアンテナを張り巡らせて、プロダクトやサービスの裏に、どんな企画や思いがあるのかを考えながら生活をしていただくと、力になっていくと思います。
私たちは多くのプロダクトやサービスに囲まれて生活している。今日から少し世界の見方を変えるだけで、マーケターの素養が醸成されていくかもしれない。
本編の動画では、マーケターのやりがいや苦労、鈴木祥子さんが過去に経験した失敗談などについても話している。
マーケティング職は職種別採用を行っている企業も多く、その分職種への理解が求められる。興味のある学生は必見だ。
▼続きは動画本編でcheck!
〜編集後記〜
ジョンソン・エンド・ジョンソン、日本コカ・コーラ、DELLなどを渡り歩き、昨年の4月にセールスフォース・ドットコムのCMOに就任された鈴木祥子さん。物腰は柔らかいものの、出てくる言葉の一つ一つに重みを感じました。
中でも印象的だったのは、結果へのこだわり。「マーケターとしての経験年数より、結果を出す経験のほうが大事」と語るなど、インタビューの随所に「結果」という言葉が出てきました。
マーケティングとは、限られた予算の中で、売上・収益の最大化に取り組む職業です。華やかである一方、常にROI(投資利益率)的思考を求められるため、結果へのプレッシャーが付きまといます。
鈴木祥子さんの言葉一つ一つから、数々の修羅場経験を乗り越えてこられたことを感じました。
(鈴木朋宏)
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取材:佐藤留美、取材・文:鈴木朋宏、編集:伊藤健吾、デザイン:岩城ユリエ、撮影・動画制作:しゅんダイアリー(福田駿、池田智哉、平田実慧)