日本を代表する社内起業家として知られ、NewsPicksのプロピッカーも務める、デジタル・クリエイティブスタジオSun Asterisk(サンアスタリスク)の井上一鷹(いのうえ かずたか)さん。
新卒では戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルに入社し、多数の新規事業プロジェクトに従事。
前職のJINSでは、集中力を測定・可視化できるメガネ型ウェアラブルデバイスの「JINS MEME(ジンズ ミーム)」を開発。さらに、その研究成果を用い、人が集中できるワークスペースづくりを手がける「Think Lab(シンクラボ)」事業の立ち上げも行った。
コンサルと事業会社、その両方から新規事業に携わってきた彼は、「いま22歳だったら、もう一度コンサルに行く」と語る。新規事業開発では戦略よりも実行フェーズが大事と語る彼が、ファーストキャリアにコンサルを選ぶのはなぜか。
「脳みそが柔らかい若いうちに、自分と異なる“すごい脳みそ”に触れ続けることが大切」という井上さんに、若い世代に伝えたい「22歳の生き方」を聞いた。
いまでこそ、新規事業開発に熱を注いでいる僕ですが、22歳の時点では皆さんの多くと同様に、“何をやりたいか”は、はっきりしていませんでした。自分が考えたものを世に問うことさえできれば、業界や職種にはこだわりはなくて。
そんな中で、僕がいま22歳だったら、もう一度戦略コンサルに行くと思います。仕事の型が定まる20代の間に、モチベーションの高い同僚に囲まれて働くことが、大きな財産になるからです。
人間の脳みそは、短期的な合理性で判断するので、元来サボる方向に頭を使います。そのため、脳みそが柔らかい若いうちに、頑張ることが当たり前だと脳みそを勘違いさせたほうが、後々楽なんです。
新卒で入ったアーサー・D・リトルは、そうした意味では最高の環境でした。1年目から叩き込まれたのは、人の3倍働いて2倍の給料をもらうのが我々だという、とんでもないカルチャー。
クライアントは20歳も年上の、大企業の優秀な人ばかりです。そんな先達でも考えつかないような新しい発見を与え続ける仕事なので、限界まで思考を詰めなければいけません。
そんなことをしていると、毎日2~3時間ほどしか寝る時間がなく、寝過ごさないように浴槽に5センチだけお湯を張ってそこで寝ていました。
それくらいタフな環境でしたが、周りのモチベーションはとても高かった。
僕自身は、もともと意思があまり強くなく、周りの空気感に合わせるタイプです。ですから、新卒でコンサルに入り、モチベーションの高い人たちの中で働けたことは、大きな財産になっています。
働く姿勢だけでなく、汎用的なスキルを身につけるという意味でも、コンサルはファーストキャリアとして良い環境だったと思います。
実際にコンサル卒業生は、業態・職種を問わず、大企業からベンチャーまでさまざまなフィールドで活躍しています。そのしたたかさの源泉はいくつかありますが、一番は彼・彼女らのキャッチアップ能力の高さにあると思います。
コンサルは、3カ月に1回程度、プロジェクトが変わるため、短期間で知識や情報をインストールして、いまの状況にアラインする能力が鍛えられます。
こうした習慣が、ユーティリティー・プレーヤー(1人でいくつものポジションを担当する選手)としての能力を高めてくれます。もっとも、40歳ぐらいになると器用貧乏になるので注意が必要ですが。