転機を迎えたエンタメ業界の仕事とは?就活に役立つ最新動向を解説
2021年10月25日(月)
学生に人気のエンターテインメント業界。
しかし、新型コロナウイルスの影響でエンタメが窮地に立たされている。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」の中止をはじめとしたライブエンタメの中止、映画館の規模も縮小と、身体性を伴うエンターテインメントは軒並み向かい風に打たれている。
一方で、身体性を伴わないエンタメサービスでは追い風が吹くケースもあった。
例として、NetflixやYouTubeような動画配信サービスや、マンガアプリの売上が増えていることに加えて、ライブ配信サービスでは投げ銭のような新たなマネタイズ手法も浸透しつつある。
下の動画では、ブシロード代表取締役の木谷高明さん、ONE MEDIA代表の明石ガクトさん、サンリオでハローキティのグローバル展開に貢献した経験を持つ鳩山玲人さん、東宝でプロデューサーを務める山田兼司さん、クリエイターのエージェント会社であるコルク創業者である佐渡島庸平さんの5名を迎えて、未曾有のエンタメ業界で消費者に求められるエンタメコンテンツについて議論がなされている。

未曾有のエンタメ危機をどう救うか?
動画内では、コロナ渦で「共感」を生み出すストーリーを持つエンタメコンテンツの重要度が上がっているという議論が盛り上がっている。一例として、明石さんは漫画コンテンツのあり方に注目しているという。
また、鳩山さんは、アメリカの事例を挙げ、Disney+(ディズニープラス)といったオンラインコンテンツに移行し始めていることや、Twitchのようなライブ配信のプラットフォームでインタラクティブなコンテンツを生み出す人がコロナウイルスの影響で増えていると説明している。
このようにエンタメの形は変わりつつ、新たなビジネスモデルや、コンテンツが生まれており、これからもエンタメ産業は発展し、継続して就職先として学生からの人気を集めるだろう。
そこで今回は、エンタメ業界を目指す学生、転職者が参考にすべき、エンタメ業界のリアルなやりがい、苦労とその解消法、またセカンドキャリア以降の転職事情を取り上げていく(注:文中で紹介するロールモデルの所属・肩書は、全て本人が投稿した時点の情報)。
はじめにエンターテインメント業界の仕事のやりがいをみていこう。
エンタメ業界は多くの業種に分かれており、テレビやラジオをはじめ、マンガのような出版、映画、音楽、ゲーム、また遊園地のようなレジャーやイベントなどといった業種がある。
その中で、ゲーム、そしてイベントコンテンツ業種から見たエンタメ業界のやりがいを取り上げていく。
バンダイナムコスタジオは、ゲームソフトの企画開発を行い、ガンダムや、パックマンのようなIPを世界に広げてきたバンダイナムコエンターテインメントの子会社である。
NewsPicksでは過去に「バンダイナムコの挑戦」として、ゲーム業界、そしてエンタメの未来のあり方を全3回の記事で特集して紹介している。
【バンダイナムコ社長】海外で愛される、日本コンテンツの作り方バンダイナムコスタジオで映像クリエイターを務める谷口博昭さんによると、ユーザーの反応をダイレクトに知れるのがゲーム業界の特徴であるといい、エゴサーチを通じたユーザーのポジティブな反応を見たときにやりがいを感じるそうだ。
自分達でつくったものが世に出て、 それをユーザーがどのように反応した
谷口さんによると、ユーザーの反応には、ポジティブなものだけでなく、ネガティブな意見もあるようで、その声をどのように反映していくのか思考する能力が求められるだろう。
カヤックは、神奈川県鎌倉市に本社を置き、『ぼくらの甲子園』などのソーシャルスマホゲームや、『からかい上手な高木さんVR 1学期』の開発といったクライアントワークにも力を入れている企業だ。
カヤックで、クリエイティブ・アートディレクターを務め、SNSでも話題になった『うんこミュージアム』の制作にも携わった阿部晶人さんは、ひらめいた発想・アイデアが現実となり、仲間や世の中の笑顔を見たときにやりがいを感じるという。
基本的に広告は、欲しくもない商品を見たくもない広告を見せて欲しい気にさせる という仕事なのですが、これが面白い。最初は欲しくなかった商品が、コミュニケーションアイデアによっていつの間にか買わずにはいられなくなっていく。人の気持ちをうまくすくって行動まで変えるのがぼくらの仕事です。 しかしアイデアはそんな簡単には出てこない。仲間と一緒に延々と打ち合わせしたり、時には静まり返ったオフィスに一人残って悩み続ける日々。行き詰まったらぶらっと外にでも出て、街を行き交う人の仕草や言葉に聞き耳を立てたり、電車に乗って中吊り広告の見出しを読んでみたり。コーヒー飲んだり。ここで粘れない人は向いていないです。 「おお、もしかしてこれはいけるのでは?」というアイデアは輝きが最初から違うのでだいたいわかります。超劣勢のオセロに1つ置いて全部がめくれていくようなそんな感覚。さて、今度は出たアイデアの原石を磨いて磨いて綺麗なダイヤモンドにしていく訳です。コピー、デザイン、テクニカルなど、いろんな特殊能力を持った仲間たちとね。お互いに良い物を作りたい意思があれば意見のぶつかり合いなども起きたりします。良い喧嘩です。会社内だけでなく、依頼主の会社の方とも一緒になって、その原石を囲んでかごめかごめで磨いていく感じ。 でもって、出来上がったものをお披露目する日がやって来る訳です。どれだけシミューレションしても、結果は実際蓋を開けてみなければわからない。みんなの胃がキリキリ痛むのはこのタイミングです。広告事例とはちょっと違いますが「うんこミュージアム」の時もやっぱりそうだった。不安過ぎて誰彼構わず怒鳴り散らしていた人もいた。げっそり痩せた人もいた。でも悩んでも仕方ない。やることは全部やった。娘を嫁に出すような気持ちで磨きあげたダイヤを送り出すのです。 いよいよ期待と不安が入り混じる公開初日。顔を手で隠して指の隙間から覗くような感覚で反応を見る。思ったほど反応がなかったらちょっとガッカリ。その原因を探って次に活かす。逆に想像以上の反応があれば物陰でこっそりほくそ笑む。「うんこミュージアム」では会場前に大行列ができていてほっと胸をなでおろした思い出があります。また館内で子供からおばあさんまでが大声で「うんこー!」って大声で叫んだり爆笑しているのを見てそれまでの苦労が報われました。舞台裏でスタッフやクライアントの仲間たちと小さくガッツポーズ。 広告の企画ではこうした体験を比較的短いサイクルで1年に何度も体験することになります。成功もあれば失敗もある。ひとときの休息を経て、また新しい商品のために頭をひねる毎日。大変だけど面白い。その原動力はアイデアが見つかった時の圧倒的快感と、成功したときの皆(スタッフ、クライアント、世の中)の笑顔なのです。
阿部さんによると、クリエイティブなアイデアは簡単には出てこず、仲間と延々と考え続けることや、外に出て、アイデアの着想を得に行くなど途方もない作業が多い中、これに耐えられない人は、クリエイティブワークに向いていないとコメントする。
好奇心と忍耐力を持って、これらの時間を乗り越え、アイデアを生み出し磨き上げたとき、達成感に辿り着けたと、阿部さんは『うんこミュージアム』の例を挙げて説明している。
エンタメ業界は、好きなものを仕事にできる点でやりがいを感じる職業である反面、仕事とプライベートの境目が薄れる例もあることや、ニーズの激しい変化をキャッチアップする必要がある点で、苦労や努力が付きまとう職業でもあるだろう。
ここからは、エンターテインメント業界で感じる苦労とその解消法を、実際の経験談から引用して紹介していく。
エイベックスは、音楽やアニメをはじめとして、多くの事業を運営し、音楽配信プラットフォーム『BIG UP!』といった新規事業開発にも積極的なエンターテインメント企業だ。
エイベックスで、アーティストのSNSプロモーション戦略を担当する西木沙織さんによると、アイデアには正解がなく、アイデアに対して自分が納得できない時に苦労を感じるという。
アーティスト/楽曲のプロモーションアイディアを考える仕事では 正解が
西木さんは、普段からボツになった企画や、新しい発見を常にメモ帳に残すようにしているといい、別のアイディア同士を組み合わせて別企画に活かすことや、何も思い浮かばない時の着想として利用することで苦労を乗り越えているとコメントしている。
華のあるテレビ業界への就職は学生から人気であるが、近年、ネット配信の台頭もあり求められるテレビコンテンツは変化し、求められる人材像も変化しつつある。
NewsPicksでは、過去にお笑い芸人のバービーさんや、『笑っていいとも!』などを手掛けたフジテレビプロデューサーの名城ラリータさん、テレビ東京ディレクターの上出遼平さん、ONE MEDIA代表の明石ガクトさんを迎え、新型コロナウイルスで影響を受けたテレビ業界におけるバラエティ番組の未来について、議論している。

バラエティ番組は生き残れるのか?
では、実際にテレビ業界で働く人はどのような苦労を感じ、どう解消しているのだろうか。
中京テレビで映像クリエイターを務め、現在はNewsPicksの映像制作に携わる庫本太樹さんによると、企画のアイデアが全く浮かばず、どんどん追い込まれていくことに苦労を感じるという。
企画を考える時に、とにかく何も頭に浮かばないことがあります。後一押し
庫本さんによると、この苦労を解消する上で、「このジャンルをこれだけ愛しているディレクターは自分くらいだ」「情報収集力なら誰にも負けない」という自分にしかない適性を見極めることが重要だという。
強みを認識して自信につなげることが重要なようだ。
最後にエンターテインメント業界の転職事情を紹介していく。
JobPicksのロールモデルがどのような転職を果たし、転職に成功するにはどのようなスキルが必要になるのかを見てみると、エンタメ業界の変化の一端が垣間見えた。
まずは、エンタメ業界のテクノロジーシフトを感じさせる転職事例を見てみよう。
DMM.comのCTO室、VPoE室でグループリーダーを務める釘宮愼之介さんは、前職ではリクルート(旧・リクルートマーケティングパートナーズ)で英会話学習アプリ「スタディサプリEnglish」の開発を担当していた。
そこからDMM.comへ移り、同社の開発組織全体の生産性向上に寄与する仕事をしている。
50以上の事業を展開するDMMグループには、動画配信やオンラインゲーム、ミュージアム運営など多様なエンタメ関連事業がある。これらの土台として、エンジニアリングは必要不可欠なものになっている。
自分は下記にあげるようなタイミングで楽しいと思うことが多いです。
DMM.comに限らず、異業種からエンタメ関連への転職では、この土台づくりに関するスキルを持つ人は引く手数多だ。釘宮さんのような転職事例は、今後も増え続けると考えられる。
次に紹介するのは、テレビの「ユーザー体験」を変える仕事に従事する転職例だ。
TBSテレビで、UXデザイナーを務める野田克樹さんは、前職は企業のUX/UIデザイン支援を行うGoodpatchでUXデザイナーをしていた。
野田さんのような転職事例は、これまでなら「稀有なケース」だったはず。それが、ネット配信も含めた総合的な視聴者体験を生み出そうとしているテレビ業界の変革によって、「あり得る事例」になりつつある。
異業種から狭き門のエンタメ業界に入るには、転職先のビジネストレンドを見極めた上で、求められるスキルを想像するアクションも大切になるのだろう。
そうすることで、可能性は広がっていくはずだ。

合わせて読む:【図解】我々はなぜ、SNSを「やめられない」のか?
文:平野佑樹、編集・デザイン:伊藤健吾、バナーフォーマット作成:國弘朋佳