「本当に好きな仕事に打ち込んでいる人を見ると、うらやましくなってしまうことがあるかもしれない。だが、そもそもそういう人は、出発点からして自分とは違うのだろう、などと思うべきではない」
成功者の要因を科学的な観点で論じたベストセラー『やり抜く力 GRIT』(ダイヤモンド社)の著者アンジェラ・ダックワースは、このように語っている。
自分の名前を主語にした仕事を持ち、才能を発揮するビジネスパーソンは、いったいどのようなキャリアを歩んできたのだろうか。
Instagramのフォロワーがおよそ10万人、YouTubeチャンネルの登録者数が7万人とSNSで人気を博すフォトグラファー、“もろんのん”こと川北啓加(かわきた のりか)さんは、学生時代までカメラの知識がほとんどない、いわば素人だった。
また、大学を卒業後は営業職、Webマーケティング職として社会人生活を送るなど、フォトグラファーを本業としない数年間を歩んできた。
彼女はいかにして、これほどのフォロワーを集める人気フォトグラファーになったのか。「いま22歳でも、会社員になると思います」と語る川北さんのキャリアをひも解き、一生をかけてやりたい仕事を見つけるヒントを探る。
—— Instagramのフォロワーがおよそ10万人、YouTubeチャンネルの登録者数が7万人。フリーランスのフォトグラファーとして活躍するもろんのんさんですが、もともとは会社員をしていたと聞いています。
新卒では写真売買プラットフォーム「Snapmart」に就職し、今年の3月までは、チーズケーキを製造する「Mr.CHEESECAKE」で働いていました。
会社員として写真の撮影を任されることもありましたが、フォトグラファーとしての業務はあくまで仕事の一部です。基本的に、Snapmartでは営業職を、Mr.CHEESECAKEではマーケティング職に就いていました。
—— 独立するまで別職種を本業にしていたのですね。どのような背景で、会社員になる道を選択したのですか?
写真を撮ることは好きでしたが、「写真しかできない」ことに焦りがあったんです。
就職活動をしていても、私以外の学生は、マーケティングやブランディングといった知識を持っていました。ビジネスをするうえで絶対に必要になるであろう、より全体を捉える思考で物事を考えていたんです。
いまでこそ、写真が大きな武器になると理解できます。ただ、それだけでは仕事をしていけるか不安だったので、まずはマーケティングで手に職をつけたいと思い、会社員になる道を選びました。
—— 新卒でSnapmartに就職した理由を教えてください。
代表の江藤(江藤美帆:現・栃木サッカークラブ取締役)さんが、私が抱いていた「写真しかできない」というコンプレックスに、「それは武器だ」と価値を見いだしてくれたからです。
当時、私のInstagramには5万人のフォロワーがいました。江藤さんいわく、私には「写真が撮れるだけでなく、フォロワー数を伸ばす能力があり、Snapmartでは即戦力になれる」と。
また、当時は会社が設立したばかりで、「誰と何をするか」が明確でした。少しでも自分が役に立てることがあるなら、一緒にこの事業を世の中に広めたいと決意して、スタートアップに飛び込みました。
Snapmartでは、BtoBの営業から、受注した案件のディレクションまでを担当していたので、営業活動の一連のプロセスを任せていただいていたことになります。顧客のニーズをヒアリングし、それに応じてクリエイターを育成する業務も担当していました。
営業が私の武器になっているかは分かりませんが、少なくとも、現在の仕事にはSnapmartでの経験が生きています。