【北野唯我】大学では教えてくれない「ビジネスの教え」
2021年3月16日(火)
北野:本のタイトルに「内定者」というキーワードが入っていますが、内定者だけに向けたお話ではありません。
新入社員をはじめとする若手社員にむけ、社会人として持つべきノウハウや考え方を伝えようと筆を執りました。
ではなぜ、『内定者への手紙』というタイトルをつけたのか。
自社に21卒として入ってくる新入社員の目をみたときに、「彼らに自分が学んできたものを全て教えてあげなくてはいけない」という使命感を抱いたからです。
若いときは誰しも、上司や先輩に対するちょっとした反抗心を持っているもの。
私自身、昔は先輩や上司から言われたことを右か左へ聞き流す生意気な若手社員でした。
だからこそ、「あのときこうしておくべきだった」という反省も含め、みなさんにお伝えしたいことを一冊の本としてまとめました。
北野:本書は、連載企画として計5回にわたり配信する予定です。
第1巻のテーマは『「仕事が遅い人」と呼ばれないための、10のチェックリスト』でした。

続く第2巻は『TOP1%に近付く最強の文章化術』で、2月にリリースしました。ありがたいことに、現在は累計1万ダウンロードを突破しています。
北野:もちろんそうしたこともあるでしょう。
その場合、いきなり「私が会社を変えてやる」と息巻くのではなく、自分や自分の身の周りの環境を改善することから始めるべきです。
いきなり会社全体を変えることは現実的ではないので、まずは周囲に受け入れてもらう必要があります。
「自分の仕事の精度を上げることでチームメンバーとの関係を整え、その上で部署の環境を整える」など、少しずつ輪を広げていくイメージです。
北野:助けてあげたくなる若手社員には、2つの特徴があります。
1つ目はやはり素直な人です。
先輩や上司も人間ですから、自分のアドバイスを聞き入れてもらえなければ「この子には教えてあげなくていいや」と思ってしまいます。
ときには複数人の先輩や上司から、それぞれ異なるアドバイスをもらうかもしれません。もらったアドバイスが、どうしても自分に合わないこともあるでしょう。
それでも、信頼関係構築のため、一度は実践してみるべきだと思います。自分の仕事のやり方は、その後に少しずつ決めていけばいいのです。
2つ目は、本書にも記した「タイミングの法則」を守っている人。
すなわち、「3つのすぐ」=「すぐやる」「すぐ出す」「すぐ答える」を心がけている人です。
「タイミングの法則」は意識さえすれば誰にでも実行できることですし、若手社員がベテラン社員と張り合える数少ない要素です。
北野:そういうときは、上司が皆さんの仕事を把握しきれていない可能性が高いです。
上司が納得できる説明とともに、「能力的に難しい」、もしくは「リソース的に厳しい」ことを正直に伝えましょう。
その際、どのように伝えるべきかは、5秒だけ上司の立場に立てば自ずと見えてきます。
皆さんも、自分が何かを頼んだ相手に速攻で「無理です!」と突っぱねられたら良い気持ちはしませんよね。
つまりそれは「コミュニケーションの問題」なのです。
また、仕事を引き受ける際には「一貫性」も重要です。
スピード感やキャパシティのムラは不信感につながり、「仕事を頼みづらい」と思われてしまいます。
北野:新入社員が例年受けていた「ふとした瞬間のフィードバック」がもらえなくなることは、認識しておいた方がいいですね。
従来であれば、例えば新入社員が電話対応している様子を見た際に、「今の言い方は直した方がいいよ」など、細かいアドバイスができました。
新入社員側も、先輩や上司の仕事の仕方を、自分の目で見て真似ることができました。
しかしリモートワークの場合はお互いの働いている様子が見えないので、間違いを指摘してもらえる機会が圧倒的に少ないのです。
ですから、自分から意図的にフィードバックをもらいにいく時間をつくる必要があると思います。

北野:その通りです。上司は皆さんが何に困っているのか、そもそも困っているのかどうかも分かりません。
ですから、大前提として「Help」を出すことは、皆さんだけでなく上司にとっても必要なことです。
ただし、時間を割いてもらう立場として、最低限の配慮は必要です。上司の都合のいいタイミングを見計らい、事前に質問をまとめてから話しかけましょう。
「この仕事のやり方は誰にも指摘はされないけど、本当にこれで合っているのかな」程度の些細な疑問でも構いません。
私の部下をみていても「今の北野さんの『いいよ』は、『まあまあいいよ』くらいの意味でしたよね? 何か思っていることがあるなら、教えてくださいよ」と突っ込んで聞いてくる社員は、成長も早いです。
また、先輩や上司の“will(=今後どうしていきたいか)”を聞くのもおすすめです。
「チームやプロジェクトの今後の展望」と「その上で自分に期待していること」を教えてもらうのです。
普段の業務では発生しない、一段上のフィードバックをもらうことができます。
北野:通常、就職活動を終えてから入社するまでは半年〜1年ほどの猶予があります。
私は、この期間「何かに熱中する時間」に充てるべきだと思っています。
特定のスキルを深めたり、特定の分野の理解を高めたりすることは、今後の人生の選択肢を広げます。
社会人になると、学生時代ほどまとまった時間をとれる機会はないので、今ある時間を存分に活かしてほしいです。
また入社後は、「身近な5人の平均が自分の姿」という言葉を胸に留めて社会人生活を送ってほしいです。
20代を誰と過ごすかが将来の自分を決めると思って、ぜひ「将来こんな人になりたい」と思える人と行動を共にしてください。
【業界分析】あなたの市場価値を最大にする、会社の選び方取材:佐藤留美・倉益璃子、構成:倉益璃子、編集:オバラミツフミ、撮影:竹井俊晴