いい会社に入れば、一生安泰──。そんなキャリア観はもう古いと言われて久しいが、とはいえ、仕事人生は長い。
どうキャリアを考えればいいのか?と悩むビジネスパーソンは少なくないだろう。
キャリア支援事業を展開する人材スタートアップ・ポジウィルで働く斎藤あい(さいとう・あい)さんも、悩みながら自分なりのキャリアを築いてきた1人だ。
理系の大学院を卒業後、大手メーカー・ブリヂストンに入社。その後、アクセンチュアを経て、現在はポジウィルでキャリア支援のカウンセラーと広報を兼務している。
「超安定思考の就活生でした」と学生時代を振り返る斎藤さんは、なぜ新卒入社から3年半で2度にわたって大幅な業界・業種のチェンジをしたのか。
斎藤さんの思考をひもとくと、「自分が本当に納得できるキャリア」をつくるヒントが見えてきた。
—— 斎藤さんが担当している「カウンセラー」の仕事内容について教えてください。
カウンセラーは、目の前の相手がキャリアの何に悩んでいるのか、どうすれば解決できるのかを、対話や問いかけを通して一緒に考える仕事です。
私たちのカウンセリングでは、「ここに転職したほうがいいですよ」「この資格を取りましょう」と、直接的なアドバイスはしません。
丁寧に相手の話に耳を傾け、適切な質問を投げかける。その繰り返しによって、ユーザーさんの人生設計や、仕事で大切にしたい価値観を言語化するお手伝いをするのです。
カウンセリングで自信を持ち、トレーニングを通して行動や思考が変わっていくユーザーさんを見るのは、いつでもうれしいですね。
—— もともとカウンセラーの仕事を志していたのですか?
いえ、ファーストキャリアでは営業職を、転職先ではコンサルタントを経験し、2度目の転職でカウンセラーの職に就いています。
きっかけは、社会人になって初めて、「自分はどんな人生を送りたいのか」とキャリアに悩みを抱えるようになったことです。
自分で言うのも恥ずかしいですが、私は会社に入るまで、順風満帆な人生を送っていたつもりでした。
教員の両親のもとで育ち、地元の進学校に合格。高校でも、勉強も部活も全力で頑張って結果を出し、国立大学の理系学部に入学しました。
卒業後はそのまま大学院に進学し、ブリヂストンから技術職で内定をもらっています。
いわゆる「安定した人生」を歩んでいる自覚がありましたし、そんな自分に満足もしていました。
ただ、会社に入ったとたんに、突然キャリアに悩みを抱えるようになりました。
今まであった「合格」や「内定」のような、明確なゴールがなくなったからです。
そのとき、初めて「あれ、私って結局どう生きたいんだっけ?」と考えるようになったんです。
この会社で、定年まで働いて安定した生活を送るのが、本当に自分が望む人生なのだろうか、と。
── 仕事自体も、あまり楽しくなかったのですか?
いえ、仕事は楽しかったです。技術営業として、車の販売店や運転手さんの元へ通い、技術的な知識を生かしてタイヤを売る。
もともと人と話すのは好きでしたし、仕事での人間関係にも恵まれていたので、充実していました。成果が認められ、本部からアワードをもらったこともあります。
ただ、やっぱりその先にある「どんな人生を送りたいか」という、ゴールが抜け落ちていたんですね。
だから、目の前の仕事で結果が出せていても、ふとした瞬間に「この会社で働く以外の人生もあるかもな」という考えが頭をよぎる。
スタートアップで働く同級生が、やりたいことを仕事にしていたのも大きな要因です。
土日も夢中になれるくらい、生き生き働いてる人もいるのに、本当に私はこのままでいいんだろうか、と次第に焦りを感じるようになりました。
そこからは、本気で転職を検討しはじめて。スタートアップの友人の集まりに顔を出したり、求人サイトや転職エージェントに登録したりしました。
25歳、新卒2年目のことです。