【経験談】プロダクトマネジメントで直面する悩み、どう解決した?
2021年9月15日(水)
給与水準、仕事満足度、求人数の多さという3つの基準で「最高の仕事」を選ぶなら、プロダクトマネージャーは2021年のTOP3に入る——。
これは、口コミ&求人サービスのGlassdoorが発表した「アメリカで最高の仕事トップ50 2021年版」の結果だ(参照記事)。
GAFAの名前を出すまでもなく、各産業界でテクノロジー関連事業の成長が著しい今、プロダクト開発のリーダーとなるプロダクトマネージャーは新たな注目職種として人気を博している。
日本でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)の広がりなどを背景に、2010年代後半ぐらいからプロダクトマネージャーの採用ニーズが急騰。昨年10月に開催された「プロダクトマネージャーカンファレンス2020」では、求人企業と求職者の需給ギャップがすでに大きなものになっていると指摘されている(参照記事)。
その理由の一つに、プロダクトマネージャーの仕事は非常に守備範囲が広いという点がある。
下の記事で、マイクロソフトやグーグルでプロダクトマネージャーを経験したTablyの及川卓也さんは、上記の理由でこの仕事が「ミニCEO」と呼ばれることもあると話す。それゆえ、即戦力となるような人材の数が少ないのだ。
Googleの花形職種「プロダクトマネージャー」とは何か部門を横断し、企画、開発、販売戦略、運用、法務といったすべての面でプロダクトの成功に責任を持つ「プロダクトマネージャー」の存在感が、ますます高まっています。(中略)プロダクトマネージャーには、プロダクトの成功にコミットする力こそが不可欠です。私が所属したマイクロソフトやGoogleでは、プロダクトマネージャーは、プロダクトのすべてに責任を持つ「ミニCEO」として位置付けられていました。 —— Googleの花形職種「プロダクトマネージャー」とは何か
具体的には、下の「プロダクトマネジメント・トライアングル」にある領域全てをリードする仕事になるという。

開発者のマネジメントのみならず、ビジネス面での成功とそのためのマーケティング、顧客・ユーザーに対するUXデザインなど、幅広い責任範囲をカバーしなければならない。
だからこそ、この難しい仕事をこなせる人材の育成が不可欠だ。プロダクト開発経験の豊富なソフトウェアエンジニアやデザイナー、事業企画・事業開発担当者などを、プロダクトマネージャー候補として採用〜育成する企業は増えている。
そんなプロダクトマネージャーを目指す上で知っておきたいのが、この仕事でぶつかる「壁」はどんなものなのか?だ。
JobPicksにプロダクトマネージャーとして経験談を投稿してくれたロールモデルの経験談から、仕事の苦労と、その解消法を紹介していこう(注:ロールモデルの所属・肩書は、全て本人が投稿した時点の情報)。
まず、プロダクトマネージャーとして仕事をする上での苦労を見てみると、大きく2つの「壁」を感じる人が多いようだ。
1つ目は、意思決定の難しさ。
開発経験が豊富で、アジャイル開発をはじめとする開発プロセスやプロジェクトマネジメント(PM)に精通していても、プロダクトのリリース以降も自ら断続的に意思決定を繰り返す立場となると勝手が違う。
UXデザイナーからプロダクトマネージャーになったユニファの山口隆広さんは、仕事の苦労を生々しく語る。
さあ長い間みんなで解決してきたサービスをリリースしたぞ、利用者の動き
ソフトウェアエンジニアからキャリアをスタートし、現在はAI企業のエクサウィザーズでプロダクトマネージャーをするKitabayashi Yotaさんも、この仕事の「プロジェクトマネジメントとは異なる点」を次のように書いている。
特に新しいプロダクトの場合はその90%が失敗すると言われている。
作ったプロダクトが市場に受け入れられない、またはユーザーの傾向が変わったなどの理由で、継続して意思決定し続ける大変さがうかがえる。
2つ目の「壁」は、こういった暗中模索の時期でもプロダクト開発にかかわるチームをまとめ、成功に向けて一つにしていく難しさだ。
DMMでソフトウェアエンジニアや事業統括、プロダクトマネージャーなど複数の職業を経験してきた石垣雅人さんは、かかわる人全員のモチベーション管理に悩むことがあると述べている。
プロダクトを作る上で、エンジニアやデザイナーといったモノを作る存在は必要不可欠です。 私自身もエンジニアであるため、エンジニアがモチベーション高く開発できているときは、スピード感をもってイテレーティブな改善をどんどん回せますし、それによって事業が成功することもあります。 一方、開発プロセスがうまく整備されていなかったり、エンジニアが開発しづらい環境だとモチベーションがどんどん低下していきます。そうなると、チームの雰囲気も悪くなり悪い方向にメンタルモデルが形成されていきます。 逆に少しの壁があったとしても、エンジニアやデザイナーがモチベーション高くいれば意外にすっと超えられます。 なので、できるだけエンジニアリングマネジメントにも力を入れるようにし、1on1を中心とした会話の量を増やしたりアジャイルを中心とした開発プロセスの整備に力を入れています。
決済サービスのPayPayでプロダクトマネージャーを経験したのち、FinTechベンチャーARIGATOBANKのCTO(最高技術責任者)に就任した白石陽介さんは、開発チームのみならず社内外のステークホルダーも巻き込むことの大切さを説く。
プロダクトマネージャという仕事は、誰よりも自分のサービスを理解してい
「プロダクトを考えて考え尽くして、それでも理解してもらえなかったり、リリースできてもユーザの反応がイマイチだったり。そういう日々を楽しめる素養が、プロダクトマネージャーには求められると思います」
白石さんのこのコメントは、いちプレーヤーとしてプロダクト開発に取り組む時とは異なる動きが求められることを表している。
これらのコメントから、プロダクトマネージャーへの転身後はスキル以上に「視点・考え方」のアップデートが必要だと推察される。
では、それをどう行うのがベターなのか。
マインドが変わるきっかけは人それぞれだが、JobPicksのロールモデルの投稿では「プロダクト開発を自分ごと化」することの大切さを挙げる人が多かった。
前出のエクサウィザーズKitabayashi Yotaさんは、エンジニアリングマネジャーからプロダクトマネージャーに転身した際、上司に言われたアドバイスを次のように述べている。
プロダクトマネージャーとしての活動する前、自分には人生をかけて実現し
担当プロダクトに、自分が人生をかけて実現したいビジョンを反映できるか。
精神論に聞こえるかもしれないが、この「腹を決める瞬間」をいつ持てるか?で、プロダクトマネージャーとして成長するスピードが変わってきそうだ。
スキルマーケット「ココナラ」などを運営するココナラのPenpen Kanakoさんも、駆け出しの頃、先輩に言われた次の言葉が転機になったと語る。
プロダクトマネジメント業駆け出しの頃に先輩に言われ、今でも大事にしている言葉です 「デジタルで完結するサービスを運用して、データを日々見ていると、だんだんお客様の心の機微に疎くなる。データの向こうに生身の人間がいることを忘れてはいけない。そして、自分たちの起こす「些細に見えること」がどのくらいお客様に不便、不安、不満を与えてしまうのか?を敏感に感じ取れるようになって欲しい。 ・サービスの寸断 ・ちょっとした説明の入れ忘れ ・マスターシートの設定ミス どれも運用側には一見、些細な時間だったり、修正の工数がさほどかからない(場合によっては管理画面でちょっといじるだけの?)事象かもしれない。ただ、その裏でその事象によって、ユーザーの大事な商談が潰れたり、(ゲームなら)白熱したバトルに水を刺されてデモチすることだってある。ユーザー体験への影響は決して障害の大きさに比例するわけではない。我々のちょっとした判断がユーザーを「ちょっと不快」なんかではなく「絶望させる」ことがある。 また、ユーザーに「良かれ」と思ってとった対応が、その対応の裏で対応を受けられなかったユーザーを白けさせていることもある。 プロダクトマネジメント歴の浅い人はユーザーの「喜びそうなこと」には意識を向けられるが「痛み」と細部までシンクロできる人は少ない。運営側でありながら、圧倒的なユーザーとしての当事者意識を持って、それでも運営としての判断ができる。そんな人がコンテンツをグロースさせることができる。」 という意味が込められている1行です。
仕事で必要なスキルや知識は、勉強しながら(または業務をこなしていく中で)身に付けることもできる。ただ、こういったマインドセットを持つには、自分なりの意識変革が求められる。
未経験からプロダクトマネージャーを目指す人は、技術や知識の習得だけがこの仕事に就くための道筋ではないと心得ておきたい。
最後に、プロダクトマネージャーのロールモデルたちが、この仕事を目指す未経験者や初心者におすすめする「入門書」をいくつか紹介しよう。
NTTコミュニケーションズの事業企画・事業開発を経て、楽天やメルカリ、エクサウィザーズでプロダクトマネージャーをしてきた宮田大督さんは、『Running Lean』を「(プロダクトマネジメントを学ぶ上で)バランスの取れた内容」と評する。
一冊ということであれば、バランスがとれているこちらの本は良いかなと思
著者のアッシュ・マウリは、起業家としていくつものプロダクトを開発してきた経験を持ち、そこで学んだ開発手法を本書に詰め込んだ。
そのノウハウは、宮田さんが「色あせない」と話す普遍的なものとなっている。
『ソフトウェア・ファースト』は、冒頭でコメントを引用したプロダクトマネージャー及川卓也さんが、非IT企業も「IT活用を手の内化する」ための方法論をまとめた一冊だ。
Kitabayashi Yotaさんは、本書を「真にデジタルトランスフォーメーションを実現するために必要な人材や組織制度、開発手法など、筆者の体験を交えながらわかりやすく解説されている」と推薦している。
本でプロダクトマネージャーといえばこの方、及川さんの著書。 ただソフトウェア開発やプロダクトマネジメントが大切、ということではなく、真にデジタルトランスフォーメーションを実現するために必要な人材や組織制度、開発手法など、筆者の体験を交えながらわかりやすく解説されている。 本当に大切なのは、自分が作っているプロダクトに対して「愛」を持っているか?自分が使いたいと思ってもないプロダクトを、上の人や発注元に言われるがままに作ってないか。 プロダクト開発に関わる全ての人が「プロダクト愛」を持っているなら、きっと今より顧客に愛されるプロダクトが生まれ、結果としてデジタルトランスフォーメーションや新規事業が加速し、日本の生産性が上がっていくと考える。
本書の5章には、「ソフトウェア・ファーストなキャリアを築くには」というタイトルで、プロダクト開発職種のキャリアパスなども載っている。プロダクトマネージャーを目指す人は特に参考になるだろう。

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