【エイベックス・25歳】インスタグラムとアルバイトで、第一志望に内定

2021年3月9日(火)

選択肢は逆算で決める

—— 西木さんがエンタメ業界に興味を持つようになったきっかけについて、教えてください。

小学校6年生の頃に、人気テレビ番組『めちゃ×2イケてるッ!』で、MCの岡村隆史さんとアーティストのEXILEがコラボレーションした「オカザイル」企画を観たことが全てのはじまりでした。

岡村さんが突如ライブに姿を現すと、会場は大熱狂。笑いあり、感動ありのステージでした。もちろん私も、テレビの前で大いに熱狂しました。

でもそれ以上に心を奪われたのが、EXILEが「自分たちで事務所を経営しながらアーティスト活動をしている」ということです。

番組では、EXILEの歴史と信念、アーティストと事務所が一緒になって目指す未来についても触れられており、とても衝撃的でした。

その日から、私の夢は「エンターテイメントを通じて感動を届けること」になりました。12歳からずっと、エンタメ業界で働くことを志してきたのです。

—— 早くから現在のキャリアを描いていたんですね。夢を叶えるために、どのような準備をしていたのでしょうか?

高校も「エンタメ業界につながる経験が得られるか」で進学先を選びました。

文化祭が楽しかったり、生徒主体の校風だったり、自分たちで学校生活を充実させられる「自由度の高さ」を最優先に考えたのです。

大学は、LDH JAPAN(EXILEの所属事務所)やそのルーツとなったエイベックスが海外進出に注力していると知り、自分に足りない「経営と英語を学びたい」という軸で選びました。

進学した産業能率大学は、その軸に当てはまっていました。小さな大学なのですが、座学で学んだ経営知識を実践するために、地域の商店街とコラボレーションしたり、アーティストプロモーションが学べたりと、オリジナルな授業があるのです。

インスタグラムで逆留学

—— 大学進学後は、エンタメ業界への就職に向け、どのような活動をしていたのでしょうか?

学内で「もっとも大変だ」と言われるゼミに所属しました。大変な分、「もっともリアルな経営を学べる」と言われていたからです。

同ゼミでは復興支援を目的とする被災地の産物販路拡大プロジェクトを実施しており、ゼミ内で組んだチームを会社機能に見立て、法人営業のリストアップからテレマーケティング、打ち合わせ、販売、宣伝、経理……とあらゆる業務を全て学生が行い、まさに“リアルな経営学”を経験できました。

また、経営学の授業で「ファーストリテイリングが“全員経営”を掲げている」と知り、それを体感したく、同社が運営するアパレルショップ・GUでもアルバイトをしました。

アルバイトも含め店舗スタッフ全員が、売上目標とその達成度を意識しながら働く文化があったため、おのずと経営者視点を体感できたと思います。

—— 英語はどう学習したのですか?

英語を学ぶために留学をして、現地の友人をつくり、日常会話レベル以上の語学力を身につけようと考えていました。

しかし当時の私には、留学をするのに十分なお金と時間がありませんでした。

ただ、諦めかけていたところ、逆転の発想でアイデアを思いつきました。

—— 具体的に、どのような方法でしょうか?

自分が海外に行けないのなら、海外の方に来日してもらい、彼らから語学を学べばいいと思ったのです。

一念発起し、海外の友人をつくるためのインスタグラムのアカウントを開設。拙いながら、日本のエンタメを英語に翻訳して発信していました。

すると、「私たちもEXILEのファンです」と、とあるイギリス人の姉妹からメッセージが届きます。連絡のやり取りをするうちに意気投合し、やがてビデオ通話を利用してコミュニケーションを取るなど、どんどん親密な関係になりました。

—— 留学に行けなくとも、日常的に英語に触れる環境を自分で作ったのですね。

彼女たちは最終的に、はるばる海を越え、私に会いに来てくれました。それも1回きりではなく、3回もです。

彼女たちには、EXILEの事務所がある中目黒を案内したり、チームラボが運営する施設を観光したり、日本のエンタメをたくさん紹介しました。

逆に彼女たちには、日本のエンタメの印象や文化の違いについて教えてもらい、大変勉強になりました。

運はポジティブな行動に味方する

—— 現在は幼い頃からの夢を叶え、エイベックスで働いています。学生生活を振り返り、どのような行動が結果につながったと思いますか?

まず、「夢を絶対に叶える」という信念を持ち続けたこと。そして、そのために何をすべきで、なにが足りないのかを考えたこと。そのうえで、羞恥心を捨て、夢を周囲の人に宣言して多くの方に応援してもらえたこと。この3つが、結果につながった要因だと思います。

エイベックスは、第一志望の会社です。

就活時には関連会社や競合他社の説明会やインターンにも積極的に参加するなど、「私が一番企業研究した」と思えるくらい行動しました。

私にとって、入社することはゴールではなくスタートです。

ですから、「他社の社員の目にエイベックスはどう映っているのか」といったことまで調査し、入社後に自分が活躍できることを徹底的にアピールしました。

—— あくまでも、「12歳の頃にテレビを通じて味わった感動を、伝える側になる」ことがゴールだと。

その通りです。だから、内定をいただいた後も、不足していた業界知識を補うために、キャスティング・PR会社でアルバイトをしていました。

—— そうした徹底的な準備は、入社後の業務に生きていると感じますか?

私は現在デジタルマーケティンググループに所属していて、所属アーティストのSNSプロモーションや、デジタル視点での新人発掘を任されているのですが、その全てに学生時代の経験が生かされています。

「具体的な目標があった」という運の良さもありますが、たとえそれが大きすぎる目標でも、ポジティブに行動していれば、運は味方するのだと、自身の経験を通じて学びました。

失敗を避けると、大失敗する

—— 入社して3年が経った今だからこそ分かる、夢や目標を叶えるための方法を教えてください。

「失敗を恐れない」ことです。

実は私、夢だった仕事を手にするまでの間に、たくさんの失敗を経験してきました。

例えばリーダーを務めていたゼミ生時代のプロジェクトは、望ましい結果を出すことができず、体力的にも精神的にも追い詰められました。

また入社1年目は、目の前の仕事をこなすことに必死で、自分らしさを表に出せず、毎日萎縮して働いていたと思います。

でも、失敗を繰り返すうちに、「前向きな失敗は、むしろポジティブにとらえるべきだ」と理解できました。失敗するまでは、それに気づけなかったのです。

失敗を恐れると、「自分の目標を発信すること」が怖くなってしまいます。しかし、発信しなければチャンスは巡ってきません。

私がやりたかった仕事にたどり着けた理由の一つは、私の学生時代の活動を知った先輩社員が、周囲に私のことを話してくれたからです。

笑顔を失って働いている私に「仕事は楽しんでやるものだよ」と声をかけてくれたので、「本当はこんなことがやりたいんです」と素直に話したところ、私の個性を生かすポジションを導いてくれました。

その日から、自分らしさを表現できるようになり、毎日の仕事が本当に楽しくなりました。夢を語り、もがいている人には、必ず応援してくれる人が現れるものなのです。

—— 自分の殻に閉じこもり、将来への漠然とした不安や焦りを抱えている学生に向けて、メッセージがあればお願いします。

あえて背伸びをして、“大変”な日々を過ごしてほしいです。

思っているより学生の4年間は短いので、自分のやりたいことが明確にある人はもちろん、そうでない人も、まずはアクションを起こしてください。

そうでなければ、何もできないまま、あっという間に時間が過ぎ去ってしまいます。

大変な日々の先には、必ず良い変化がついてきます。「大きく変わる」からこそ、“大変”なのです。

私のように大きな失敗を経験する人もいるかもしれません。そんなときは、この言葉を思い出してください。

「失敗の反対は成功ではなく、何もしないこと」——。

就活時に出会った経営者の方から教えていただいた言葉です。今でも、私の支えになっています。

就活に対して不安を感じる人がいるかもしれませんが、たくさんの人との出会いがあり、学びも多く、楽しいものです。

ぜひ、“大変”な就活期間を送っていただければと思います。

取材:井上茉優・オバラミツフミ、構成:井上茉優、編集:オバラミツフミ、撮影:遠藤素子