売り上げ創出の源泉であり、ビジネスの根幹である営業活動。
しかし、若手ビジネスパーソンには、苦手意識を持つ人が少なくない。
営業職に就く人であれば、「誰にでも実践できるテクニックがあれば……」と夢想した経験が一度ならずあるだろう。
そんな思いに応えるように、営業支援企業セレブリックスの今井晶也(いまい まさや)さんは、「営業にはレシピがあります」と語る。
営業の極意を詰め込んだ話題の書籍『セールス・イズ 科学的に「成果をコントロールする」営業術』(扶桑社)を上梓した今井さんに、彼がこれまでに実践してきた秘伝の営業術を紹介してもらう。
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—— 若いビジネスパーソンには、営業で成果を上げるのに苦労している人が少なくないと聞きます。営業職として成果を上げる人には、やはり話し上手な人が多いのですか?
「活躍している人もいる」だけであり、その限りではありません。
というのも、営業活動には、商談準備に代表される前工程と、商品購入の意思決定を促す後工程が存在するからです。
たまに誤解されますが、「お客様を言葉巧みに説得するのが営業の役割」というのは間違いです。話し下手な人でも成果を上げるチャンスがありますし、むしろ、相手の話を引き出すのが得意な人のほうが、お客様が「納得して」購買に至るケースが多いのです。
「なかなか話を聞いてもらえない」「必死に商品の魅力を説明しても成約に至らない」と壁に直面している人は、そもそも努力の仕方を間違えている可能性があります。
営業職として活躍したいのなら、まずは、営業活動の“売れるメカニズム”について正しく理解しましょう。
—— 営業活動の前工程と後工程について、詳しく教えてください。
営業プロセスは、7つのプロセスに細分化できます。
しかし、今回はよりわかりやすくするために、
商談準備
関係構築
ファクトファインディング(課題設定)
プレゼンテーション
クロージング
の5つのステップに集約して説明したいと思います。
商談準備と関係構築、ファクトファインディングが商談の前工程で、プレゼンテーション、クロージングが後工程と定めています。
前工程は、「課題を解決することが緊急かつ重要だ」とお客様に気づいてもらうためのプロセスであり、適切な課題を設定する力が問われます。
後工程は、「課題の解決に自社の商品が最適である」ことを証明するプロセスであり、商品のマッチング度合いや競合他社と比較した際の競争優位性が問われます。
いわゆる「話し上手」として想像される営業職は、後工程のプレゼンテーションやクロージングにあたります。
しかし、実態としては、前工程でお客様が取り組むべき課題を設定できない限り、いくら話しが上手くても商品の必要性を感じてもらうことはできません。
—— 話し下手でも、最適な課題設定ができれば、営業職として成果を上げられる可能性があるのですね。
その通りで、まさに課題設定の成否が契約獲得の明暗を分けます。
特に、新規の顧客にアウトバウンド(売り手側から買い手側に営業するスタイル)で営業をする場合は、適切な課題設定ができるかどうかが、成約の70%以上を決めるといわれています。
ところが、商品の購入を検討していないお客様に、営業が必死になって商品の紹介をしたり、機能の説明をしたりする姿が目立ちます。
口先では「質問型営業・提案型営業が重要だ」といいながら、自分の自慢話をするように、会社や商品の話を延々と話し続け、お客様がうんざりしている……なんてことが多いのです。
購買検討の「どの段階にいるか」によって、お客様の関心事は異なります。
買うつもりがなければ、知りたいのは「必要性」ですし、買う意欲が高まっていれば、「その商品が適している」理由を知って、納得したものを買いたいはずです。
従って、売り手側はセールスプロセスを細かく分解して、プロセスごとにお客様の関心に合わせて、やるべきこととやってはいけないことの判断軸を持つことが必要なのです。