【直伝】新卒でベンチャーキャピタリストになる方法

【直伝】新卒でベンチャーキャピタリストになる方法

  • ベンチャーキャピタリスト

この記事に登場するロールモデル

目次

  • 必要ならば、何でもやる
  • 若手キャピタリストの1日
  • 学生がVC業界に潜り込めた理由
  • “若手の利”を生かす仕事術

起業後進国と言われた日本にも、ようやく「スタートアップ・エコシステム」が確立してきた。ファーストキャリアで起業を選択したり、設立まもないスタートアップ企業に就職したりする若者が増えつつある。



そうした流れを受け、ベンチャーキャピタリストを志す若者も増えている。しかし、門戸は狭い。起業が盛んなアメリカにおいては、投資家を「起業家の背後にいる起業家(entrepreneur behind entrepreneurs)」と表現することがあるほどで、それほど高度な専門性が求められるからだ。



サイバーエージェント・キャピタルで働く片岡芳明さんは、日本で数少ない“新卒ベンチャーキャピタリスト”の1人。すでに、9社への投資実績を持つ。



新卒でVC業界に入社するためには、どのように就職活動を進めればよいのか。百戦錬磨のベンチャーキャピタリストが腕を競うVC業界で、どのようにして成果を上げているのか。知られざる実態について、赤裸々に語ってもらった。

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必要ならば、何でもやる



—— ベンチャーキャピタリストには、「パートナー」や「プリンシパル」など、職位が設けられています。片岡さんが務められている「アソシエイト」は、どのような役割を担う職位なのでしょうか?



片岡:企業によって異なりますが、私が所属するサイバーエージェント・キャピタル(以下、CAC)では、アソシエイトであってもソーシング(投資対象企業を探すこと)から、実際の投資実行やその後のハンズオン支援まで、一連の流れに携わることができます。



—— ソーシングから投資するまでの流れを教えてください。


片岡:まず普段考えている投資テーマ等と照らし合わせて、投資先となりうる起業家を探していきます。見つかったらコンタクトを取り、直接お会いして詳しいビジネスモデルをご説明いただくのですが、そこでは経営者の人となりやチームの雰囲気なども併せて確認します。



その結果投資したいと思えたら、自分の投資案件として社内の投資委員会で提案します。ある程度の承認を得られたら、具体的な出資条件をすり合わせ、投資契約を結び着金させるという流れです。スタートアップはスピードが大切なので、ファーストコンタクトから投資まで最短1〜2週間ほどで行うこともあります。



投資をした後は、定期的にミーティングを行います。CACはハンズオン型(採用、広報、開発支援などをはじめ、起業家のニーズに合わせてさまざまなサポートを行うスタイル)ベンチャーキャピタル(以下、VC)なので、出資後も投資先企業に伴走する形で経営をサポートします。



—— 具体的にどのようなサポートを提供しているのでしょうか?


片岡:CACは主に創業期のスタートアップに投資をしているため、ときにはトラブルも発生します。当初の計画通りにいかないことも多いので、熱意を持って、親身に寄り添う姿勢が大切です。



例えば、投資先のチーム内で問題が生じた際は、客観的な視点から意見させてもらうこともあります。資金面のニーズが当初の想定と変わってきた場合は、弊社からの追加出資の検討や、他のVCの紹介も行います。



申し出があれば、現場で実務を手伝うこともあります。営業としてクライアント候補をリストアップする作業から、SNSマーケ戦略の立案まで、とにかく必要なことはできる限り協力させてもらいます。



私のような新人が介在価値を提供するためには「とにかくリソースを提供する」ことが大切です。新しい未来を創り出す一助となる、夢のある仕事であると同時に、目の前のことにとことん向き合う泥臭い仕事でもあるのです。



若手キャピタリストの1日

片岡氏 スケジュール

—— 普段はどのように仕事を進めているか、代表的な1日のスケジュールを教えてください。



片岡:毎朝7時頃に起床して、1時間ほどニュースチェックをします。海外のニュースが日本時間の深夜から朝方にかけて更新されることも多いので、出社前にニュースメディアや経済番組を見ています。政治経済やマーケットの動向を押さえるマクロな視点と、「どこの企業が何をした」といったミクロな視点を持つことを心がけています。



その後9時半頃までに、その日のタスク整理とメール確認を済ませ、出社(現在は基本オンライン)をしたら朝会に参加します。出資先企業の動向も含め、気になったトピックをチームで共有し、ディスカッションをする時間です。仕事の話だけでなく「最近何にハマっているか」といった話もします。



VCは基本的に時間の使い方が自由なので、スケジュールは日によって異なりますが、この日は週に2回、先輩方との定例ミーティングがありました。



ここでいただけるのは、「現在〇〇というテーマで起業家を探しているが、どう思うか」といった個人の目標や成果に対するフィードバックや意見です。ほかには「この企業が求めている人材要件に対して、適切な候補者はいないか」といった投資先企業に関するアドバイスなど、幅広く相談できる場になっています。



12時からは、ランチの時間。コロナが流行する以前は、毎日のように誰かしらとランチのアポイントメントがありました。投資家として各業界の先端情報を知っておいた方がいいため、起業家以外にもさまざまな分野の方々と情報交換する時間でもあります。



13時から15時の間はミーティングが入ることが多いです。この日は、新規投資先として検討している起業家2名に会いました。

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—— 冒頭でご説明いただいた「ソーシング」の一環ですね。この日の15時からの書類作成は、どのような目的で行っているのでしょうか?



片岡:社内の投資委員会で、新規の投資先を提案するためです。



委員会では、投資先として検討している企業のビジネスモデルやチーム状況、投資することで弊社が得られるキャピタルゲインについて説明をします。資料を用意することで、投資先として適切であることを説明するだけでなく、当初の予想に対してどのような結果となったのかを振り返ることができます。



資料作成には、業界全体への知見が必要になります。最初の頃はリサーチやヒアリングだけでも膨大な時間がかかり、何日も費やしてしまうこともありました。



—— はじめのうちは、資料を作成するだけでも一苦労なんですね。書類作成を終えた後のスケジュールも教えてください。



片岡:この日は16時から既存投資先との定例ミーティングがありました。ここでは直近の事業の進捗状況を踏まえて現状の課題を洗い出し、今後の戦略立案や、各施策の確認をします。



その後は、退勤時間まで海外の注目スタートアップに関する調べ物をする時間にあてました。



なお、退勤時間は基本的には18時半ですが、その後も個人的に調べ物をしたり、投資先の起業家と事業について語りあったりすることが多いです。この日は18時半にいったん仕事を切り上げ、19時から「Clubhouse」(音声SNS)でCACのメンバーと「どういう企業に投資をしたいか」というテーマで配信をしました。



夕食は基本的に20時頃で、その間エンタメ系やスタートアップ関連のYouTubeチャンネルを倍速で流し見することが多いです。家事をしている間も、たいてい動画かPodcastを流しています。読書や調べ物をする時間も含め、寝るまでの間は情報のインプットとアウトプットをする時間を設けています。



学生がVC業界に潜り込めた理由



—— そもそもファーストキャリアにVCを選ぶ学生は珍しいかと思うのですが、片岡さんはなぜCACに新卒入社を?



片岡:私は学生時代、まだブロックチェーンが黎明期だった頃に、仮想通貨取引サービスを運営する株式会社bitFlyerでインターンをしていました。



母も祖父も経営者だったことから、昔から漠然と起業への興味があり、起業に関する知見を身につけたいという思いもあって、スタートアップでのインターンを始めたのです。そこで認知度の低いサービスが一気に急成長するフェーズを体感したことが、投資に興味を持ち始めたきっかけでした。



「投資家たちは、どうやって無名だった頃の企業を見つけるのだろう」、そして「どのような判断軸で、どのような未来を見据えて投資を決めたのだろう」と、投資する側の視点に興味を持つようになったのです。



とはいえ、迷いなくベンチャーキャピタリストの道を選択できたわけではありません。CACでは正社員として入社する前からインターン生として1年半ほど働いていたのですが、途中までは別の業界も視野に入れて就職活動をしていました。



しかし、「どうしても投資をしたい」と思える企業(起業家)に出会ったことで、VC業界へ進む踏ん切りがついたのです。初めて投資をした時のワクワクと不安が入り混じった感情は、今でも忘れられません。

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—— VC業界では、そもそもインターン生を募集している企業がそれほど多くないイメージがあります。片岡さんは、どのような経緯でインターン生として採用されたのですか?



片岡:おっしゃる通り、VCの求人はあまり表に出ておらず、CACも例外ではありません。



私の場合は、VCで働いてみたいという気持ちがあったので、当時CACでインターンをしていた学生の方にTwitterでコンタクトを取ってみました。実際に会って話を聞いてみると、ちょうどその方が起業するということで辞められるタイミングだったんです。



そこで「私を次のインターン生として推薦してください」と頼みこんだところ、その方の上司や代表との面接の機会をいただくことができました。



VC業界では、インターン生の求人自体が見つからない場合も多々あります。単純に人手が間に合っているということもあるかもしれませんが、「キャピタリストには人脈を広げる力や、普通は入りこめないコミュニティの内側へと飛び込んでいく力が求められる」ことも関係しているでしょう。



現在は数年前と比べると求人の母数も増えている印象がありますが、依然として募集枠は少なく、倍率は高くなりがちです。VCに興味があるなら、「内部の人とつながり、どうにかして自分を売り込む」というサード・ドア的な発想も持っておいた方がいいと思います。



—— 面接に漕ぎ着けるまでの過程でも、ベンチャーキャピタリストとしての素養がみられているのですね。肝心の面接で、どのように自己アピールしたのかも気になります。


片岡:まず、好奇心の強さをアピールしました。VCは各業界の最先端に関わることが多いので、能動的に幅広い情報を取得する姿勢が必須条件だと考えたからです。私の場合は、黎明期のビットコインに自分でも投資していたエピソードを通して、「リスクを取って新しいものを実際に試すことが好き」なタイプであると伝えました。また、個人的に注目しているスタートアップをピックアップし、「なぜ面白いと思うか」を言語化し、自分の言葉で語れるよう準備しました。



とはいえ、「新しいもの好き」だけをアピールすると、継続力に欠けるという印象を持たれる可能性もあります。投資家には根気強さも必要なので、bitFlyerでのインターン経験や、大学での研究に関する話を通して、コツコツ続ける力があることも強調しました。



また、VC業界は人脈を広げるスキルも大切なので「人の話を聞くことが好き」など、コミュニケーション面に関する自身の傾向もお伝えしました。

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—— 実際に働き始めて、想像していた仕事内容とギャップはありましたか?

片岡:想像以上に泥臭い仕事だと感じました。VCやスタートアップ業界に対して「キラキラした世界」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、ユーザーが誰もいない創業期から事業を育てていくのは、根気が必要だと改めて感じています。



—— そういった泥臭さと引き換えに得られる、やりがいや楽しさがあれば教えてください。


片岡:CACではシード期に投資をしているので特に、ゼロからイチを生み出す瞬間に立ち会えたときの嬉しさやワクワク感は格別です。



また、ビジネスを通じて社会に新しい価値を産み出そうとする行為は、世界の誰かが感じている不便や不都合を解消することにつながっていると考えています。より良い社会づくりへの貢献を通じ、社会にインパクトを残せる可能性があることもこの仕事の大きな醍醐味だと思っています。



“若手の利”を生かす仕事術



—— VC業界には、ある程度キャリアを積んだビジネスパーソンが多く在籍しています。若手キャピタリストとして働くことに、プレッシャーを感じることはありますか?



片岡:百戦錬磨のキャピタリストが少なくないので、起業家に「この人に投資してもらいたい」と思ってもらうのは簡単なことではありません。若手キャピタリストは信頼も経験も乏しいので、どの事業領域に注力すべきなのか、どのように経営者を支援すべきなのか、悩むこともあります。



ただ、悲観するだけではなく、今は先輩方のノウハウもお借りしながら、自分のブランドを確立していきたいと考えています。



それに、若手だからこそできることもあると考えています。



例えば私の場合、「TikTok」が中国で流行しはじめたときに、「これから日本でも流行りそうだ」と感じて実際に動画を投稿しながらバズを生み出すコツを研究した時期がありました。その経験は、支援先のSNSマーケティングに役立っています。エンドユーザーのターゲット層に近い私だったからこそできたことだと思います。



—— 若手であることが、有利に働くこともあるのですね。


片岡:起業家へのアプローチに関しても同様です。10代〜20代の起業家には、パートナー(ファンドの運用責任者)の方々よりも、年齢が近い若手キャピタリストの方がアプローチしやすい場合も少なくありません。



現在は、社会人1年目から3年目までの起業に興味がある若手社会人を集めた情報交換用のコミュニティを運営しています。起業家はもちろん、大手企業社員から士業の方々までさまざまな業界から集まっていただいています。



多様なバックグラウンドを持った方と交流することで知見が広がりますし、そのコミュニティを通じて起業家を紹介してもらえたり、あるいはコミュニティ内のメンバーが起業した際に真っ先にアプローチできたりするからです。



先輩方がリーチしづらい層の起業家との接点をつくることは、先輩方が若手キャピタリストに期待していることの一つだと思います。

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—— 今は“若手の利”を生かしつつ、先輩の背中を追いかけているフェーズにいるとのことですが、将来はどのようなキャピタリストになりたいと考えていますか?



片岡:これからの未来を担う10代〜20代の若手起業家にとって、一番のサポーターになりたいです。起業に関する知見を提供することはもちろん、良い意味で“公私混同”した付き合い方をしたいと思ってもらえるのが理想です。



20代が終わるまで、あと6年。数年後には、現在ご一緒させていただいている起業家チームの皆さんと結果を出し、若手起業家のサポーターとして第一想起をとれるキャピタリストになります。




取材・文:倉益璃子、編集:オバラミツフミ、撮影:遠藤素子

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