【5選】インターンの経験を、就活にうまく生かせる人の動き方

2021年8月16日(月)

インターン参加は何のため?

「就職する前に、仕事や企業の様子をきちんと把握しておきたい」「就職活動でアピールできる材料をつくっておきたい」

こんな思いで、長期インターンシップや短期の仕事体験(1day〜3日程度のインターンイベント)に参加する学生が増えている。

マイナビが今年7月に出した調査レポートによると、2023年卒業予定の大学生・大学院生のうち、インターンシップに参加したいと考えている人は94%にのぼる。

また、今年6月までに何かしらのインターンシップに参加した学生は27.7%とのこと。コロナ禍でサークル活動などに使う時間が減っていることもあり、過去4年間で最高の割合となった。

対する企業側も、インターンシップを通じて学生とのマッチング率を高めるようと積極的に動いている。

下の日立製作所のように、ジョブ型雇用に合わせて実務型インターンシップを実施し、採用に直結させようと動き出す大企業も増え始めている。

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ただ、本来なら「就職で有利になりそう」という理由ではなく、自分に合う仕事や会社を探すため複数のインターンシップに参加してみるのがベターだろう。

実際、リクナビが2019年卒の内定者1239人に実施したアンケートによると、インターンシップの参加社数は平均4.37社、参加したインターンの種類は「3日以下」が78.3%と最も多かった(対して、「3カ月以上」の長期インターンの参加率は2.7%)。

とはいえ、1day〜3日程度の短期インターンシップでグループワークをこなす程度では、業務内容や仕事のやりがいを理解するのは難しい。ここが、学生にとっての悩みどころだ。

そこで本稿では、JobPicksのロールモデルの中で、学生時代のインターン経験を経て「納得のいく就職」をしたと語る先輩たちの声から、インターンシップの上手な使い方をパターン分けしてみた(注:ロールモデルの所属・肩書は、全て本人が投稿した時点の情報)。

これからインターンシップへの参加を検討する学生も、現在進行形で参加している学生も、インターン経験を「どう生かすか」を考える上で参考にしてほしい。

1. 就職前に自分の志向を知る

自分の志向に合った仕事を、インターンシップを通じて探す——。ロールモデルの中で、最も多いパターンがこれだった。

新卒でDeNAに入社し、入社2年目からカーシェアサービス「Anyca(エニカ) Official シェアカー」の責任者を務める宋拓樹さんは、あるスタートアップのサマーインターンに参加して「ゼロイチで事業を創る楽しさ」を知ったという。

この経験が、DeNAに事業企画・事業開発職として就職するきっかけになった。

事業企画をしたいと思った理由

就活時に大手からスタートアップまで幅広く見ていましたが、あるスタートアップの新規事業立案型サマーインターンに参加した際に「ゼロイチで事業を創る楽しさ」を知りました。そこからは、事業の上流から関わることができる事業企画に若いうちから携われることが、就職先を決める上での前提条件になりました。 入社2年目の現在、カーシェアサービス「Anyca」のBtoCカーシェア形態である「Anyca Official シェアカー」の責任者を務めていますが、売上目標達成に向けた様々な施策の立案/推進や、料金/車種といった制度設計を行っていく中で、「自らの判断で事業の未来を創っていける楽しさ」は格別であると感じています。

インターンシップを通じて、具体的な「職種」ではなく、自分に合う仕事の「傾向」を知ったと語るのは、中川亮さん。

新卒入社した広告配信ベンチャーのフリークアウトや、コスメの口コミアプリを展開するAppBrewで、一貫してマーケターの仕事をやってきた理由として、外資系銀行のインターンシップに参加した際に聞いた話が影響しているという。

仮説検証の楽しさに気づいたため

自分の仮説がプロダクトの数字を伸ばし、事業も伸びに貢献できるという、非常に貴重な経験を運良くさせてもらったのがきっかけです。 学生時代、外資系銀行のインターンに参加したときにアナリストの方が「ちゃんと自分の頭脳で勝負してる感覚が好き」と言っていたのが印象的で、自分も頭脳で戦える仕事がしたい!と思っていましたが、その夢がかなったんじゃないかという気がしています。笑 元々マーケティングを専門にキャリアを積む気は一切なかった自分ですが、コスメのクチコミアプリLIPSのマーケティングの責任者としてDL数を伸ばす責任を負った際に、仮説検証の楽しさを知りました。 LIPSを運営するAppBrew社は仮説検証をとても大事にしていました。マーケティングの仮説を出す際も、SQLでプロダクト内の数値を参照し、仮説構築に役立てていました。「推測せずに計測する」はマーケティングでも大事だし、計測を通じて生まれた精度の良い仮説はプロダクトを伸ばせるんだなと、肌で感じられました。

「ちゃんと自分の頭脳で勝負してる感覚が好き」という話に共感し、自ら仮説検証しながら成果を出す仕事を探す中で、マーケターの仕事にたどり着いたそうだ。

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2. 自分に合う会社環境を探す

インターンシップを通じて、仕事のみならず「自分に合う職場」「働きたいと思える会社環境」を見つけたというロールモデルも少なくない。

「ジョブ型雇用」が注目される以前から職種別採用を展開してきたソニーで、IR(インベスター・リレーションズ)を担当している水町夏子さんは、同社の職種別インターンシップで初めてIRの仕事内容を知った。

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学生時代にラジオ局でアルバイトしていたことから、メディア企業への就職を考えていたそうだが、IRのインターンシップを経験する中で「自分から情報発信する楽しさ」という共通点があると気付いたそうだ。

大学では経済学部でマクロ経済学を専攻していたこともあり、IRの仕事では学んできたことも生かせると確信。加えて、ソニーというグローバル企業で「事業づくりに携わる人たちをそばでサポートするような働き方をしたい」と思い始め、同社に就職することを決めた。

水町さんのように、インターンシップへの参加をきっかけに就活の方針転換をした経験を持つ人は他にもいる。

キャリアSNS「YOUTRUST」のカスタマーサクセスとして働く堀内菜央さんは、大手企業中心に就活をしていたが、SNSで偶然知り合ったYOUTRUST創業者の岩崎由夏さんにインターンとして誘われたことで考えが一変。

長期インターンをする過程で、YOUTRUSTが掲げる「信頼される人が報われる転職市場に」というミッションに共感し、そのまま同社への就職を決めている。

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3. 興味のある仕事を深掘りする

岩崎さんは、ミッションへの共感だけでなく、世の中的に「新職種」として語られることの多いカスタマーサクセスの仕事にも、挑戦意欲をかき立てられたという。

このパターンの類似形として、インターンシップを通じて興味の持てそうな仕事を見つけたのち、就職前にスキルや知識を深めたというロールモデルもいた。

LINEで入社1年目からプロダクトマネージャーを務め、「LINE証券」の機能改善などを担っている大嶋泰斗さんは、大学を休学して臨んだnoteのUXデザイナーインターンを通じてプロダクトマネジメントの魅力を知った。

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大学は英語科に在籍し、デザインともプロダクト開発とも縁遠い分野を学んでいた大嶋さんだが、「英語力を生かした仕事」という文脈ではのめり込めそうな仕事が見つからなかったという。

そこで休学して長期インターンに臨んだ結果、心から没頭できそうな仕事を見つけることができたと話す。

次に紹介する綱嶋航平さんも、大嶋さんと似たような経験をしている。

大学入学時は高校の教員を目指していた綱嶋さんは、大学3年次に一般的な就活をしていたそうだ。しかし、自分のやりたい「教育」とは何か? を深掘りするうち、教員になる未来に疑問を持ち始めた。

そんな時期に、働き方改革を推進する会社ワーク・ライフバランスを知り、「子どもたちが未来に希望を持てるように、生き生きと働く人を増やす」仕事がやりたいと気付く。

結果、大学を休学して同社で長期インターンを経験。その経験をもって改めて臨んだ就活では、社内外でさまざまな働き方改革に取り組むサイボウズに人事(新卒採用担当)として入社している。

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4. 合わないことを見極める

これまで紹介してきたロールモデルとは逆に、インターンシップを通じて「フィットしない仕事」「やりたくないこと」を見極めることができたという人もいる。

ITベンチャーのユナイテッドでソフトウェアエンジニアをしている吉村勇輝さんは、大学で機械系学部に所属していた。小さな頃から興味のあった、ロボット開発の仕事に就くためだ。

しかし、大学3年次に複数のメーカーでインターンシップを経験し、特に大手メーカーでは新卒社員が担当できる業務範囲が限られることを知る。

この経験から、「スピード感を持ってモノづくりができるWebエンジニアを志望するようになり」ユナイテッドへの就職を決めた。

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私は小さい頃からものづくりが大好きで、小学校時代はよく家で図画工作を

新卒でスープ専門店「Soup Stock Tokyo」などを運営するスマイルズに就職したのち、クリエイティブ・アートディレクターとして独立した木本梨絵さんも、インターンでの経験から就活を軌道修正している。

武蔵野美術大学に通っていた当時、デザイン事務所でのインターンを複数経験して、ある違和感を持ったそうだ。

「事業そのものに共感できていないにもかかわらず、見栄えだけを良くしても、ブランドは持続し得ない」

そんな疑問を持ったことから、自分の共感できるブランドそのものを育てる仕事がしたいと考えるようになり、スマイルズ社内のクリエイティブ・アートディレクターを目指したという。

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入社後は、「まず現場を知る」という会社の方針により店舗スタッフ職となり、悶々とした時期もあったそうだ。が、こうした経験も踏まえてブランドデザインの仕事に携わることで、自分らしい「デザイン知識の生かし方」がクリアになったと語る。

美大卒だからデザイナーに......というステレオタイプから脱することができたという意味でも、インターンの経験が生きている。

5. 師匠や生き方を見いだす

最後に紹介するのは、主にスタートアップでの長期インターンを通じて、仕事のみならず「就職後の生き方、働き方」を見いだしたというパターンだ。

2020年4月、インターネット通販アプリ『KAUCHE(カウシェ)』を運営するX Asiaを起業した門奈剣平さんは、学生時代に長期インターンをしていたスタートアップで人生を変える経験をしている。

大学の教授に勧められ、たまたま選んだインターン先は、宿泊予約サービス「Relux(リラックス)」を運営するLoco Partners(ロコ・パートナーズ)。そこで創業者の篠塚孝哉さんと出会ったことで、「事業運営のマインドセットを叩き込まれた」という。

この経験が強烈だったこともあり、当初は大手企業への就職を考えていたがLoco Partnersに就職。篠塚さんというメンターのもと、多くの学びを得て、自身も起業家となった。

【CEO】人生を変える「メンター」の見つけ方

門奈さんと同じく、たまたま参加したインターンで仕事観が変わったと語るのは、ITベンチャーのアトラエでデータサイエンティストとして働く土屋潤一郎さんだ。

土屋さんの場合、下の記事にもあるように、学生の頃は「できることなら働きたくない」とすら思っていたという。

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そこからアトラエで働くことにした理由は、「サークルの先輩に誘われて、いいアルバイトになると思ったから」。それから約2年間のインターンを通じて、同社に「自分の大切なモノを邪魔されない価値観」が浸透していると感じたそうだ。

そんなカルチャーフィットが、土屋さんの仕事観を一変させた。データサイエンティストに「向いている人・向いていない人」として投稿している内容にも、土屋さんらしい価値観が反映されている。

人間を信用しすぎない人

人間を信用しすぎる人は,この仕事(というより,この分野)に向いていないかもしれません. 私達がデータの力や技術で救いたいのは畢竟人間です. しかし,人間は(人間に楽をさせるというのも私達の目的の一つではありますが)ともすれば楽をしたがるし,何か道具があったらすぐ悪い使い方を思いつくし,あるいは善意が悪い結果を招くこともあります. これはモノづくりを担う人が普遍的に意識すべきことなのかもしれません. データサイエンティストも,時として人の剥き出しの本音を見つめたり,人間の悪い側面を想定して仕事をしなければならないことがあります. 人間という存在を信用している人にとっては,少しつらい仕事なのではないかな,と思います.

「就職で有利になるから」という理由でインターンシップに参加する人は多いが、こうして自身の価値観と働き方をすり合わせる機会として、インターンを利用するのが理想的だといえるだろう。

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