【本音】人気企業4社の事業開発「仕事の苦労と学び」は何?

2021年8月11日(水)

事業の多角化が進む理由と難しさ

コロナ対応やビジネス環境の変化に適応するため、「事業の多角化」に取り組む企業が増えている。

DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む大企業が増え、アマゾンやソフトバンクのような大手IT企業では国内外で事業領域を広げるべく事業開発専門の部署を置いて開発を進めるケースも生まれている。

とはいえ、自社内で新たに事業を生み出し、継続させるのは至難の技だ。新規事業の成功率は「わずか1割程度」という専門家の声もある。

そんな事業開発について、ソニー在籍時(2008〜2015年)に新規事業創出プログラム「Sony Seed Acceleration」を立ち上げたBIOTOPE社長・佐宗邦威さんは、5つのプロセスに分けて解説している(下の記事参照)。

組織を燃えさせてイノベーションを起こす「5つのプロセス」

佐宗さんによると、イノベーションを生み出すには下図のようなプロセスがあるが、各プロセスで多様なスキルが求められ、一筋縄ではいかないことも多いという。

出典:組織を燃えさせてイノベーションを起こす「5つのプロセス」(NewsPicks)

このように、世の中の動きに応じて事業の多角化を進める裏側に、多くの困難がある事業開発。

そこで今回は、事業企画・事業開発として経験談を投稿するJobPicksのロールモデルが、なぜ事業開発を志望し、どんな苦労を経験したのかを取り上げる。合わせて、未経験者におすすめの書籍も紹介しよう(注:ロールモデルの所属・肩書は、全て本人が投稿した時点の情報)。

LINEの事業開発

最初は、就職・転職で人気企業の一つになっているLINEの事業開発を紹介する。

同社はメッセージアプリの「LINE」を運営し、2020年3月にはZホールディングス(ZHD)と経営統合するなど、毎年、積極的に規模を拡大している人気IT企業だ。

実際に幅広い事業領域に挑戦しており、「LINE」のようなコミュニケーション領域だけでなく、エンターテインメントや広告事業、決済などのフィンテック事業、「LINE NEWS」などのポータル事業、先進テクノロジー分野などでも事業を展開している。

下の記事は、LINEの「検索市場」への挑戦を書いた全3記事の特集で、2020年にサービス終了した「NEVERまとめ」に変わる検索サービスの開発談を知ることができる。

【LINE検索の野望】いま、LINEがやろうとしていること

このように、次々と新しい事業開発に取り組むLINEのロールモデルから、リアルな事業企画・事業開発の苦労を見ていく。

■ LINEのプロダクトマネージャーが経験した苦労

LINEの大嶋泰斗さんは、入社1年目からプロダクトマネージャーを務め、「LINE証券」の機能改善などを担っている。

大嶋さんは、プロダクトマネージャーとして、各領域のプロフェッショナルの仲介を担い、共に仕事を進めることに苦労した経験を持つ。

プロフェッショナルな方々と働くことの難しさ

プロダクトマネージャーは自分の専門的なスキルを活かしてプロジェクトを

【LINE・24歳】若手プロダクトマネージャーの仕事の中身

困難を克服した方法として、分からないままで済ませず、議論の前提を整えるために質問する時間を惜しまないことで解決したと語る。

ディー・エヌ・エーの事業開発

ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、元マッキンゼー・アンド・カンパニーの南場智子さんが創業し、ソーシャルゲームをはじめとしたエンターテインメント事業を中心にサービスを展開する企業だ。

DeNAも多くの事業を展開しており、eコマースや「モバゲー」を中心としたゲーム事業に始まり、近年は「横浜DeNAベイスターズ」やバスケットボールチームへの参入を果たしたスポーツ事業、ヘルスケア、ベンチャー企業への投資といった新規事業開発にも力を入れている。

その影響もあって、文系学生を中心に、事業企画・事業開発を目指す若者にとって人気の就職先となっている。

下の記事では、DeNAが手掛けるライブストリーミング事業「pococha(ポコチャ)」の構想とビジネスモデルについて書かれており、ゲーム事業に継ぐ稼ぎ頭となっているポコチャの現状と未来を知ることができる。

【直撃】DeNAの新たな稼ぎ頭「ポコチャ」とは何か

このように、DeNAは事業拡大に力を入れており、就職したいと考える人も多い。そこで、DeNAのサービス責任者が語る「なぜ」事業企画・事業開発を選んだのか、その理由と現在のやりがいを見ていく。

■ カーシェアサービス「Anyca Official シェアカー」責任者が語る、事業開発の志望動機

DeNAとSOMPOホールディングスの合弁会社DeNA SOMPO Mobilityが運営するカーシェアサービス「Anyca(エニカ)」。入社2年目から、AnycaのBtoCカーシェア形態である「Anyca Official シェアカー」の責任者を務めるのが、DeNAの宋拓樹さんだ。

宋さんが事業企画・開発を選んだ理由として、若いうちに事業の上流から携われるかが重要な要素だったようだ。

事業企画をしたいと思った理由

就活時に大手からスタートアップまで幅広く見ていましたが、あるスタートアップの新規事業立案型サマーインターンに参加した際に「ゼロイチで事業を創る楽しさ」を知りました。そこからは、事業の上流から関わることができる事業企画に若いうちから携われることが、就職先を決める上での前提条件になりました。 入社2年目の現在、カーシェアサービス「Anyca」のBtoCカーシェア形態である「Anyca Official シェアカー」の責任者を務めていますが、売上目標達成に向けた様々な施策の立案/推進や、料金/車種といった制度設計を行っていく中で、「自らの判断で事業の未来を創っていける楽しさ」は格別であると感じています。

売上目標の達成のために、自ら判断し、自分で事業をつくっていく感覚を得られることが、事業企画・事業開発という仕事の魅力のようだ。

リクルートの事業開発

リクルートホールディングスは、「まだ、ここにない、出会い。」というコーポレートブランディングをもとに事業を展開する、就活生にも人気の企業だ。

社内で新規事業を生み出すにあたり、個人ユーザーと企業クライアントをつなぐ「リボンモデル」という仕組みを採用しており、事業領域として「Indeed」をはじめとした人材領域や、「HOT PEPPER」や「スタディサプリ」といった非人材領域で事業を展開している。

ここからは、リクルートの事業開発担当者がサービスを運営する中で得た教訓を取り上げていく。

■ 社会人インターンシップサービス『サンカク』の事業開発者に聞く仕事の教訓

JobPicksロールモデルの古賀敏幹さんは、リクルートグループのリクルートキャリアに所属し、社会人インターンシップサービスの「サンカク」で事業開発を務めている。

下の記事では、古賀さんの1日のスケジュールから、事業を成功に導くコツ、事業開発として成果を出すために必要なマインドセットを学ぶことができる。

【事業開発】リクルート『サンカク』を成長させた「人を巻き込む力」

そんな古賀さんは、事業企画・事業開発に取り組む中で得た教訓として、「自分で事業をするなら、絶対に逃げないと思うテーマを選べ」とコメントしている。

自身で事業をやるなら、絶対に逃げないと思うテーマを選べ

正確には前職でエンジニアから事業開発の仕事に異動になる際の言葉ですが、リクルートの方からもらった言葉&事業開発という仕事における言葉なのでこちらに記載します。 「自身で事業をやるなら、絶対に逃げないと思うテーマを選べ」という言葉をもらいました。それまでは、「何かを成し遂げたい」「ワンオブゼムで終わりたくない」と、視点が自分にしか向いていないし、社会起点も当事者意識もない状態でしたが、その言葉のおかげで自分起点ではなく、完全に社会起点に立つことができましたし、今のテーマに出会うこと&覚悟を持つことができました。

「何かを成し遂げたい」という自分起点の欲求で動き続けていた中、この言葉がきっかけで社会的な意義や当事者意識の重要性に気付き、「サンカク」の成長を実現させることができたようだ。

NTTドコモの事業開発

NTTドコモは、NTT主要5社のうちの一つで、KDDI(au)、ソフトバンクに並ぶ大手携帯キャリアだ。2021年には、他社に先駆けてオンライン優先の新料金プラン「ahamo」をリリースしたことで、モバイル業界に衝撃を与えた。

【激戦】「ahamoショック」に追い詰められる楽天とMVNO

通信事業の売上が頭打ちを迎えつつあるため、その他事業にも大きく力を入れており、「イノベーション統括部」という部署まで設置するなど、新規事業開発の支援に力を入れている。

現在は、d払いや、dカードのような金融・決済事業の他にも、5G技術の特徴を活かしたコンテンツ・ライフスタイル事業、また法人向けのソリューション事業も展開するなど多岐にわたるサービスを展開している。

■ ドコモのスーパーイノベーターが薦める事業開発のおすすめ本

JobPicksロールモデルの沼田尚志さんは、NTTドコモのイノベーション統括部に所属し、副業で複数社の事業開発担当も務めることから「スーパーイノベーター」として知られている。

【沼田尚志】“スーパーイノベーター流”コミュニティ運営術

そんな沼田さんは、事業開発未経験者へのおすすめ本として『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化論』(朝日新聞出版)を紹介している。

世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史

前提としてイノベーションは結果論だと思っているため、常にバックキャス

過去のイノベーション事例から学ぶことで、未来に起こすイノベーションの可能性を推進することができるという点から、この書籍の内容を参考にできるそうだ。

合わせて読む:【新】事業リーダーの必須科目「KPI設計」のキモ

文・デザイン:伊藤健吾、バナーフォーマット作成:國弘朋佳