【密着1日】営業の新業態、カスタマーサクセスとは
2021年2月2日(火)
門野 SaaSやサブスクリプションモデルのサービスの普及に伴い、売り切りではなく、顧客にサービスを継続利用してもらうことで利益を創出するビジネスモデルが増加しています。
カスタマーサクセスとは、「継続利用してもらう」ために、顧客の成功を支援する仕事です。
ちなみに、混同されがちな「カスタマーサポート」の役割は、顧客の不明点の解消がメインになります。
カスタマーサクセスがカスタマーサポートの役割を含む場合もありますが、両者は別物だと考えてください。
最近ではカスタマーサクセスの定義も変わってきていて、SaaS型サービスを提供しているかに限らず、「営業部門が獲得してきた案件の、その先の仕事」の意で使われているケースも多いですね。「Payme」はSaaS型のサービスなので、従来型カスタマーサクセスです。
代表的な仕事は、給与前払いシステム「Payme」を導入してくださった企業様に対し、使い方を教える「オンボーディング」です。
とはいえ、その過程で顧客から寄せられた相談やお問い合わせには、できる限り応じます。そのため、必然的に業務内容も幅広くなります。

例えば、クライアントが大手企業の場合「まず一部の店舗でサービスを導入・活用し、様子を見て全国に拡大していきたい」という意向を持っていることもあります。
そのような背景がある場合、「Payme」の利用を全国拡大するまでの流れや、従業員にサービスの導入を告知する方法も一緒に考えます。
他にも、そもそも採用力が低いことを課題に感じている企業様には採用活動のサポートをしますし、勤怠管理がうまくできていない企業様には、他社の勤怠管理システムをご紹介することもあります。
複数ある類似サービスの中から「Payme」を選んでもらうためには、私たちカスタマーサクセスがどれだけ顧客を満足させられるかが重要なのです。

現在は在宅勤務なので、8時に起床し、8時半には業務を開始しています。
業務開始後30分は、連絡事項の確認や、メールチェックの時間に充てています。9時からの社内会議では、自分のタスクを他のチームメンバーに共有するので、それまでにタスク整理も行っておきます。
社内会議が終わった後は、10時から始まるオンボーディングの準備。契約を担当した営業担当からの引き継ぎ事項を踏まえ、その企業に提案するサービスの運用方法を考えます。
この日1回目のオンボーディングは、営業代行を行っているコールセンターの企業様に対して行いました。
提案する運用方法は、実際にサービスを利用する人がアルバイトの方か、業務委託の方か、正社員の方かによって変化します。
「Payme」の利用者様には、IT慣れしていない方もいらっしゃるため、私が先方の管理画面にログインし、オンラインで画面共有をした状態で解説しながら設定を進めていきます。
そうなんです。今年の1月からは人事も兼任しています。
この日は、11時からの1時間で新しく採用する方の採用方針を決め、次の30分は他部署のメンバーと、人事として1on1の面談を行いました。
この後、メールやチャットへの返信など細かい作業と昼休憩を挟み、またカスタマーサクセスの仕事に戻ります。
15時から16時は、翌日のオンボーディングの準備と、従業員の控室に貼るポスターなど、「Payme」の導入を告知する資料作成の時間に充てました。
続く16時からの1時間で、社内の管理システムにその日の業務内容を記録。次の1時間は、人事として採用面接を行いました。
18時からは、やっと自由に使える時間です。この日は向こう3カ月間の目標やミッションを決め、ここ最近担当した案件のデータ分析を行いました。
我が社では、カスタマーサクセスのKPI(重要業績評価指標)として「初申請率60%以上」の達成を掲げています。
というのも、サービスを導入したきりで、サービスの活用にまで進まないケースが多々あるのです。
そこで、まずは「Payme」の導入企業で働く従業員の方が、実際に前払い申請をした割合を示す数値を追っています。
今回の分析では、以前は契約日から初申請日まで60日ほど空いていた日数が、20日程度にまで短くなっていることが分かりました。
その要因はカスタマーサクセスの施策なのか、それとも営業担当の契約の取り方なのか、クライアントの性質なのかを、他部署と連携をとりながら、考察をまとめてレポートを作成しました。
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おっしゃるとおり「顧客満足度」は主観的な要素が強く、計測するのは難しいです。
そのため、“よい仕事”ができているかどうかは、客観的な数値で判断します。
我が社では、サービスを継続的に利用していただけるのは「サービスに満足しているから」だと捉えています。
つまり、サービスの継続率が高ければ、カスタマーサクセスとしての役割を果たせているのだと認識しています。
なかには、NPS(顧客推奨度)を重視している企業もあるようです。みなさんも、何かのサービスを利用した際に「他の人にこのサービスを薦めたいと思いますか?」といったアンケートに答えたことがあるのではないでしょうか。
NPSを追っている企業の中には、クライアントが解約を希望した場合に、解約アンケートを通し、解約理由を事細かに聞くところもあるそうです。
もう1つ、我が社が基準としているのが、KPIとして掲げている「初申請率」が向上したかどうかです。
ちなみに、私が入社した2020年4月は初申請率がかなり停滞している状態だったのですが、顧客にハイタッチでコミュニケーションをとり、型を作っていくことで、20%上昇を達成しました。
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Paymeの初期設定はざっくり分けると5段階あります。それらを一気に説明してしまうと「難しそう」「面倒臭そう」という印象を持たれてしまうので、いくつかのステップに分けて進めるようにしました。
また、逐一電話で操作方法を説明したり、ときには初期設定の代行も務めたりします。
ちなみに、同じカスタマーサクセスでも、提供しているサービスが違えば、我が社と質の異なるサポートが必要とされます。
例えば単価が高いサービスを提供している場合、その分クライアントからの期待値も上がるので、より手厚いサポートや豊富な知識が求められるかもしれませんし、複雑なツールを取り扱っている場合は、コンサルティングに近い業務が発生することもあるでしょう。
提供しているサービスや価格帯、クライアントに合わせてサポートの仕方を工夫することが肝要です。

自社のサービスに関して、あらゆる部署に本質的なフィードバックをできる点です。
サービスの利用者と一番接点を持っているのが私たちカスタマーサクセスなので、顧客視点をもってプロダクトを磨くことに貢献できます。
以前、営業担当者が、契約を取ってくる際に「とても簡単にご設定いただけます」と案内したことがありました。
その結果、実際にサービスを利用した方から「全然簡単じゃない」と不満の声をいただいたことがあったんです。
その際は、営業担当者に「最初に設定方法を軽くご説明し、了承を得た上で契約を取ってください」とフィードバックをしました。
他にも、複数のクライアントから「こんな機能がほしい」との声があれば、社内のエンジニアに「この機能を優先的に開発してほしい」とお伝えできます。
反対に、エンジニアから「新しくこんな機能が加わるので、クライアントに伝えてください」と言われることもあります。
クライアントと社内をつなぐ懸け橋となり、よりよいサービスづくりに寄与できるのは、カスタマーサクセスならではのやりがいだと思います。

やりがいと表裏一体ですが、接点を持っているからこそ、クライアントのみなさんからすれば「Paymeの人=カスタマーサクセス」です。
当然、クレームは全て私たちに回ってきます。必然的にトラブルに関するレポート作成やフォロー、謝罪をする機会は多くなります。
システムの不具合や契約をした際の説明の仕方など、自分が関わっていない部分の問題も全て対応しなければならない点は、つらいと感じるときもあります。
私が現在カスタマーサクセスと人事を兼任していることはお話ししたかと思いますが、実は前職でも人事を担当していました。
思うに、私は元来「誰かのために貢献したい」という気持ちが強いのだと思います。
対象がクライアントか社内のメンバーかの違いだけで、どちらもホスピタリティが必要である点は同じだからです。
カスタマーサクセスは「サービスを導入してもらった後」に、人事は「入社してもらった後」に、サポートをする役割があります。
人の役に立ったり、誰かに寄り添ったりするのが好きな人は、この仕事に向いているのかもしれません。

個人的には、新卒の頃から「向いている仕事」にこだわらない方がいいと思っています。
そもそも「やりたくない」という判断を正しく下せるようになるまでには、ある程度の経験と努力が必要だからです。
私は前職に勤めていたときから、「人事の仕事が向いている」という自覚がありました。
しかし、「事業のことが分からない人事は、優秀な人事とは言えない」と気づき、事業サイドのことを知るためにカスタマーサクセスに転身しています。そして今、その選択は正しかったと思っています。
このように、他の職種を掛け算していくことが、後々のキャリアに有利に働くパターンもあります。
若いうちは選り好みしすぎず、今目の前にあることに一生懸命取り組むことで、おのずとやるべきことや、目指すべき方向性が見えてくるはずです。
(取材・文:倉益璃子、編集:オバラ ミツフミ、デザイン:小鈴キリカ)