【NTT東日本】経営を志す私が、現場に立ち続ける理由
2021年7月26日(月)
「縁の下の力持ち」として、社会を支える仕事に就きたいと思っていたのです。
学生時代に所属していた合唱サークルやゼミでは、リーダー役を担う機会が多くありました。
一般的に「リーダー」と聞くと、組織の中でも最も目立つ立場で、先頭を切ってぐいぐいと引っ張るイメージがあると思います。
でも実際には、皆がやりたがらない仕事を買って出たり、あらゆる方面に気を配ったりしないと、リーダーに信頼は寄せられず、メンバーはなかなか付いてきてくれません。
私は泥くさい調整役に回ったり、メンバーの細やかなケアをすることが得意な方でした。
そうした学生生活での自分自身のキャラクターや立ち回りを社会に置き換えたときに、社会を下支えする「縁の下の力持ち」であるインフラ系の業種が向いているのではないかと考えたのです。
通信分野は特に著しいスピードで発展しており、これからも人々の暮らしに大きな変化をもたらすだろうと考えたからです。
また、大学時代に都市社会学のゼミに所属しており、何かしらの形でまちづくりに携わりたいと考えていたのも、意思決定の要因になりました。
この二つの軸で企業分析を進めていくうちに、NTT東日本がスマートシティの取り組みを始めていることを知り、それが入社の決め手となりました。
営業に興味がありました。
現場の最前線に立つ営業は、市場のニーズや動向をつかみやすく、得られるスキルはどのような職種にキャリアチェンジをしても役立つものだと思っていたのです。
また、営業職だった父からよく仕事の話を聞いており、仕事内容をイメージしやすかったことも一つの理由です。
父は、「お客様から『あなたが担当だからこそ契約したい』と言ってもらえる瞬間にやりがいを感じる」と言っていました。
私は人とコミュニケーションを取るのが好きで、新しい関係性を築くのが得意だったので、「営業に向いているのではないか」と考えました。
新潟支店に配属され、中小企業の新規・既存顧客営業を担当していました。
扱っていた商品は、Wi-Fiやクラウドサービス、セキュリティサービスなどの新しいサービスです。
都会に比べてITリテラシーが高くない地域で商品を販売するのに苦労しました。
お客様に弊社の新しいサービスをどう理解してもらい、導入してもらうか。自分なりの方法論を確立するまで、少なくない時間がかかりました。
サービスの良さをうまく伝えられず、失注してしまったことも何度もあります。
長岡の雪深い道を営業車で走りながら「何やってるんだろう、私……」と一人ため息をついてオフィスに戻った日もありました。
お客様である中小企業の経営者の目線に立ち、サービスを位置づけ直したのです。
私が営業を担当していた中小企業の場合、大企業や自治体と異なり、IT部門が社内に設置されていることはほとんどありません。
つまり、経営者の方がIT系の管理を担当していました。
経営以外のさまざまな仕事を引き受ける経営者の皆様の姿は、自分自身が学生時代にリーダーをしていた頃に重なる部分があり、彼らの悩みがとても理解できました。
そこで、私は「自社のサービスのいいところをアピールして説得する」のではなく、「経営者の方が本来注力すべき仕事に時間と労力を割けるよう、自社のサービスの活用でサポートする」というように視点を切り替え、商品を紹介するようにしたのです。
また、お客様がITに詳しくない状態で、「御社はIT系で何か課題を持っていますか」と漠然とした問いを投げかけても、お客様は困惑してしまいますし、どのサービスが何のメリットを持つかをお客様は当然理解できません。
ですから、自社サービスそのものの紹介だけでなく、営業先の企業に類似した導入例を紹介するように工夫もしました。
すると、「自分の企業で導入した場合、どのように自社の課題が改善されるのか」が想像しやすくなり、サービスを利用していただくことが増えたのです。
こうして、お客様の目線でサービスを捉え直し、課題解決のために伴走するように営業を重ねていったことで、全国で上位1割に入る営業成績を上げ、社内の営業コンテストでも最優秀賞を取ることができました。
入社3年目の配属希望面談で、「新規事業を企画する部署ができるが、興味はないか」と声をかけられたのです。
営業として、たくさんの方にサービスを売るなかで、「もっとこんなサービスがあればいいのに」と感じる瞬間が多くあり、新しいサービスを提案する側にもチャレンジしてみたいと思っていたところでした。
「これはチャンスだ!」と思い、即決。
3年間の営業職を経て、営業戦略推進室への異動が決まりました。
弊社の営業戦略推進室は、地域の課題に焦点を当て、それらの解決を通じて新たな収益基盤となる事業を企画・推進する部署です。
社長直下の経営企画部内にありますが、「経営企画」という言葉から一般的に想像されるイメージのように、現場と離れた場所でデータや資料に基づいて意思決定を行っていく部署ではありません。
常にお客様との接点を積極的に持ちながら課題を把握し、解決策を提案していくのが大きな特徴です。
私は特に、農業をはじめとした第一次産業分野を担当しています。
0→1で事業を生み出す難しさを日々実感しています。
普段通信サービスを扱っている我々にとって、農業はほとんど素人に等しい分野です。
現場の視点に寄り添いながら仮説を立てなければ、「外部の人間なんて何も分かりっこない」と地域の方々に向き合ってもらうことすらかないません。
ですから、お客様の目線で課題に向き合うことを、今まで以上に大切にしています。
例えば、現在は鳥獣害による農作物への被害対策の案件を取り扱っていますが、地元の農家や猟師の方にこまめにヒアリングしたり、実際に被害のあった田畑に入ったりして、データや資料だけでは把握できない現場の情報を収集しています。
まさかNTT東日本に入って、イノシシの生態に詳しくなるとは、就活生時代には思ってもいませんでした。
大変なことも多いですが、学生時代から興味のあったまちづくりに関われる喜びや、新しいことを学ぶ楽しさを素直に吸収しながら、自分の力にしていくよう心がけています。
チームワークを大切にする社風が自分によく合っているので、今後もNTT東日本でキャリアを築きながら、ゆくゆくは経営人材になりたいと考えています。
そのためにも、これまで培ってきた、お客様と協働したり、現場目線で提案したりするスキルを生かしながら、さまざまな部署を経験し、経営者に必要なノウハウを身に付けていければと思います。
学生時代のゼミやサークルと規模は違えど、リーダーたるべき人間に求められるものに大きな差はないと思うので、小さな信頼を積み重ね、未来のNTT東日本を担うビジネスパーソンになりたいです。
情報が手元にないなかで「自分らしさ」を判断することは難しいので、まずは先入観を持たずに、いろいろな情報を集めてみてほしいです。
私自身、就職活動を始めた当初は、やりたいことが明確でなかったうえに、人や環境に流されやすい性格で、自分自身が何を大切にしたいのかなかなか分かりませんでした。
ただ、OB・OG訪問や小規模の説明会などで生の声に積極的に耳を傾け、自分に合うもの、合わないものを選別していくうちに、自分の譲れない核が少しずつ見えてきました。
人生は、選択の連続です。
高校時代の部活動や受験とは異なり、就職活動に分かりやすいゴールはありません。
現時点で正しいと思っていることが、社会情勢や時代によって180度転換することは大いにあります。
就職活動も、選択の場の一つです。遠い未来を不安視しすぎず、今最適だと思う選択をしていけば道は開けていくと思います。
そして、人間はどうしても易きに流れがちです。
周囲を見ていても、やはり伸びるのは、目の前のことに地道に取り組める人だと思います。
この事実はどのような場でも不変なはずなので、目の前のことに一生懸命になる気持ちを学生時代から持ち続けていれば、社会人生活を始めたときにもきっと役に立つはずです。
【夏野剛】NTTが世界で勝つための「たった1つ」の戦略
取材:佐藤留美、構成:小原由子、編集:オバラ ミツフミ、撮影:一場杏里紗(本人提供)