「会社の顔」ともいわれるジョブ、人事。就活中に必ず接点を持つ存在であるため、仕事内容をイメージしやすい職種だろう。
しかし、採用以外の仕事が見えにくいため、具体的な業務内容と求められるスキルを深く知る機会はそう多くない。
住宅販売会社 TOKYO BIG HOUSEの宮本くみこさんは、人事を「組織の矛盾を解決し、組織を最適化する仕事」だと定義する。
“一匹狼の営業マン”だった宮本さんは、いかにして組織を見つめる人事のキャリアを築いたのか──。
彼女のキャリアを振り返り、人事という仕事の全容を紐解いた。
—— これまで1万人以上の面接を担当した宮本さんが、「人事」という職業を一言で表現するなら、どのようなものになるでしょうか?
宮本 私は人事を「組織の矛盾を解決し、組織を最適化する仕事」だと考えています。
企業には「経営と現場」の2つの構造があります。目指すべきゴールは一緒かもしれませんが、この2つの間には、得てして矛盾が生まれてしまいます。
たとえば「経営サイドは人件費を安く抑えたいけど、現場サイドは給与を上げてほしい」、「業務を遂行しやすくするルールをつくりたいけど、ルールによって社員が辞めてしまう」といった具合です。
この矛盾を解決し、組織全体のパフォーマンスを高め、お客様に価値を提供するのが、人事の役割です。
—— 学生時代から、人事として活躍されるキャリアを描いていたのでしょうか?
ゆめゆめ想像していませんでした。
そもそも会社員になろうとは思っておらず、真面目に就職活動をした経験もなければ、会社員になってもチームプレーが大の苦手でした。
若い頃は今よりも尖った性格をしており、「社会に出ること=会社員になる」という構図に違和感を持っていたんです。
「会社員は電車の中で死んだ目をしている」という、よくない誤解をしていました。
また学生時代は国内・海外で世界の仲間や住民と一緒に、地域のために動く「国際ワークキャンプ」に精を出していたこともあり、「私はみんなと違う」と思っている節もありました。
最終的にエントリーシートが不要だった企業2社の面接を受けはしたのですが、そういった態度が透けて見えたのか、あっけなく落ちてしまいました。
「そりゃそうだ」と切り替えて、就職せずに、ネパールで日本語教師をしながらボランティア活動をすることにしました。
国際ワークキャンプに参加していた理由でもありますが、小学生の頃にテレビで湾岸戦争を目にしてからずっと、「世界中の困っている人たちを助けたい」という想いを持っていたので。
—— 新卒時代に就職をせず、ネパールで日本語教師をしていた宮本さんが、リクルートジョブズで働くことになった経緯とは?
意気揚々とネパールに渡ったものの、思ったように活動が進まず、半年後に帰国することに。
再びネパールに行こうとは思っていたので、何か役に立つことはないかと帰国後すぐに農業に従事したのですが、それもピンとこなくて。
そんな矢先、気乗りしないまま就職した同級生に会う機会がありました。
会社員生活に辟易しているかと思ったのですが、意外にも楽しそうで。その姿を見て、「働いたこともないのに、会社員はつまらないと決めつけるのは恥ずかしい」と反省しました。
—— そのタイミングで、就職を決意したのですか?
会社員に対するイメージは変わりましたが、まだモヤモヤした気持ちが残っていたので、ヒッチハイクで国内を回っていろいろ考える時間をとっていました。
そんなとき、人生を変える転機が訪れました。
私を拾って乗せてくれた運転手さんと身の上話になったのですが、私がフリーターなことで悪い印象を持たれるのは嫌だなと思い、つい「春からリクルートに就職する大学4年生です」と、うそをつきました。
リクルートは私が前年の就職活動でエントリーした企業だったので、とっさに会社名が思い浮かんだのです。
すると、運転手の方は、偶然にもリクルート出身の方だったのです。
道中はずっと、リクルートのエピソードになり、「リクルートは本当にいい会社だから頑張って」と言われました。
そして、車を降りると同時に、リクルートの面接を受けると決めました。
無事に内定をもらうことができ、リクルートジョブズで、3年間限定の契約社員として働くことになったのです。