【決断】31歳で外資生保に転身。元リク経営企画の戦略的キャリア

【決断】31歳で外資生保に転身。元リク経営企画の戦略的キャリア


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目次

キャリアを戦略的にデザインする方法とは──。


1社に勤め上げることが前提とされる終身雇用の時代は終わり、一人一人がライフスタイルに合ったキャリアを築く時代がやってきた。


一方で、若手社会人ほど将来への漠然とした不安を抱えているケースも多い。経験の少なさゆえに、長期的なキャリアをイメージしにくいからだ。


リクルートの経営企画、外資保険会社の営業、起業家、ベンチャー企業のCOO(最高執行責任者)と、数々の職種を渡り歩いてきた青木想(あおき・そう)さんは、「キャリア戦略とは、『HOW=手段』ではなく、『WHAT=到達したい点』を決めることだ」と語る。


自らの強みを「戦略性」と定義する青木さんのキャリアをひも解きながら、自分らしいキャリアをつくるエッセンスを抽出していく。


青木想さん 経歴

最初は行き当たりばったりでいい


── 経営企画、外資保険の営業、起業家、COOとさまざまな職種を経験しています。こうしたキャリアは戦略的に築いたものですか?


今でこそ、キャリアの戦略性についてお話しする機会もありますが、はじめから戦略を持って築いてきたわけではありません。


特に、キャリアの初期は戦略なんて全く考えていませんでした。


営業がしたくてリクルートに新卒入社したのですが、配属されたのは経営企画の部署。


最初に任されたのは、PL(損益計算書)を見ながら予算と売上目標を管理する「計数管理」という仕事です。


営業志望だった私にとって、正直面白い仕事ではありませんでしたね(苦笑)。


当然、その頃は「将来のキャリアにつながるから仕事を頑張ろう」というモチベーションは、ほとんどありませんでした。


── キャリア戦略を意識し始めたのはいつですか?


リクルートから、ジブラルタ生命(米金融大手・プルデンシャル・ファイナンシャルグループ傘下)に転職した時からです。


きっかけは、離婚でした。実は、25歳と27歳で娘を2人産んでいるのですが、31歳のときに離婚して、私が親権を持つことになったんです。


金銭面の不安に加えて、2回の産休・育休による休職期間も長く、リクルートでどこまで出世できるかも不透明でした。とにかく焦りを感じて、環境を変えなければと考えたんです。


そこで「経済的に自立すること」を目標に、外資の生命保険会社に転職しました。


青木想さん イメージ1
Photo:iStock / key05

── 経営企画から生命保険の営業へ。未経験の職種への転職に不安はありませんでしたか?


もちろん不安はありましたが、一方ですべてが実力で評価される環境に燃えてもいました。


外資の保険営業は、給与形態がフルコミッション(完全歩合制)なので、お客様からお預かりした契約がすべて自分の収入につながります。


遠回りしている暇はないので、とことん仕事に打ち込めて、成果がお給料にもつながる場所がいいなと考え、転職を決めました。


あとは、営業力と人脈を身につけておきたいという気持ちもありました。


ビジネスパーソンとして生きていく上で、汎用性の高い「営業」というスキルは役に立ちますし、「人とのつながり」があれば路頭に迷っても誰か助けてくれるはずだから、人脈は欠かせないと考えました。


そのすべてが最短距離で手に入るのが、外資の生命保険会社だったのです。


── ジブラルタ生命では、全国の新人1387人のうち3位という営業成績を残したと聞いています。何か工夫した点はありますか?


よく聞かれるのですが、特別な工夫はしていません。ひたすら、保険商品を売って、売って、売る。その繰り返しです。


365日保険のことを考えて、1週間に2件以上契約していただくという生活を、74週続けました。お正月も休まず、元旦から働いていたほどです。


—— そこまで頑張れたのはなぜでしょう?

離婚を通して「自分の人生は自分で切りひらいてやるんだ」という気持ちが強くなっていたからですね。


青木想さん 写真1

人間、前向きな気持ちよりも、悔しいとか憎いとか、そういう負のモチベーションのほうが頑張れるものです。


とにかく、自分にも環境にも負けたくない、絶対に勝ってやるんだ、と意気込んだ結果だと思います。


まずは自分の「武器」を備える


── 結果が出ていたにもかかわらず、生命保険会社をやめて起業したのにも「戦略」があったのですか?


「経済的に自立すること」を目標に掲げていたので、戦略の範疇ではありました。


ですが、きっかけは本当にたまたまで、起業家コミュニティの代表と知り合いになったことです。


当初は法人保険の開拓をしたくてコミュニティに通っていたのですが、ある日その方から「青木さんはリクルートで経営企画をしていたそうなので、起業家向けに経営管理に関するセミナーをやってくれませんか」とお声がけいただきました。


リクルート時代は、毎日「総勘定元帳」という、6000〜7000行におよぶエクセルのシートとにらめっこをしていました。だから、帳簿を見せてもらえば、その会社が何で収益を上げていて、どこに経営上の課題があって、何が問題なのか見当がついたのです。


起業家や経営者の方なら、きっとご自身で経営管理をしていたり、経営企画の方が会社にいたりするのだと思っていました。でも、実際にはそうではなかった。


このときに初めて、自分の経営企画での経験が「武器」になるのだと知ったんです。


私の経験が役に立つなら、とセミナーを開くうちに、保険の相談に加えて、経営の相談をいただくようになりました。


青木想さん イメージ2
Photo:iStock / Christopher Ames

それで会社をやめ、保険販売と経営コンサルティングを行う、Loveableという会社を興したのです。


── 現在は、Surpassという企業でCOOをしています。


起業した会社も残してはいますが、今は女性営業のアウトソーシングサービスを手がけるSurpassにフルコミットしています。


起業後に、Twitterでベンチャーの経営情報を発信していたら、Surpass代表の石原(亮子さん)の目にとまり、声をかけてもらって。


私自身、「女性をエンパワーメントしていける存在になりたい」という目標を持っていたため、Surpassの事業とビジョンに共感して入社を決めました。


肩書はCOOですが、プレイヤーとして商談に行ったり、採用イベントの企画、採用面接、新規事業の立ち上げをしたりと、営業と経営を中心に会社のほとんどのことにかかわっています。


── まさに、経営企画と保険営業の経験をかけ合わせたような仕事ですね。


おっしゃる通りで、キャリアにおいて「無駄な経験」は一つもないと思っています。


リクルートで培った、経営管理のスキルは、仕事における大きなアドバンテージですし、外資保険時代に得た営業力は、今でも生きています。


ただ、先ほどもお伝えしたように、経営企画で働いていた当時は「このスキルは今後生きるかも」とは、想像だにしていませんでしたけどね(笑)。


青木想さん  イメージ3
Photo:iStock / baona

キャリア戦略の「誤解」


── さまざまな職種を経験した上で、キャリア戦略を考えるのに重要だと思うポイントがあれば教えてください。


よくある勘違いは、戦略における「HOW=手段」に重きを置き過ぎることです。


今は環境に恵まれていて、Twitterや書籍、Web記事などを通して多くの人のHOWを知れますし、どうやったら成功できるのかを簡単に学ぶことができます。


だから、「HOWをギチギチに組み立てること」が戦略だと考えている人が多いように思えるんです。


「外資系コンサルでとりあえず3年は働こう」「次は、実務経験を積むためにスタートアップに転職しなければ」といった具合に、です。


でも、外資コンサルで働くことも、スタートアップに行くことも、あくまで「手段」でしかないですよね。


大事なのはその先に、何を得たいのか、自分はどうなりたいのか、なのです。


また、こうした手段は置かれた状況によって、変えざるを得ないこともあります。会社が突然倒産したり、出産や親の介護などで自分のライフスタイルが変わることもあるでしょう。


だから、転職しようが、今の会社にいようが、手段はどんな形でもいい。


一番大事なのは、「WHAT=ありたい姿」を決めることです。将来こうなりたいとか、半年後にこういう状態になっていたいという、到達したい「点」ともいえます。


私の場合は「経済的に自立したい」という点があって、HOW=手段として生命保険の営業を選びました。


今Surpassにいるのも、「真の女性リーダーになりたい」という、次の目標となる点があるからです。到達したい点があって初めて、そこへ向かうための手段が見えてくるのです。


青木想さん イメージ4
Photo:iStock / Dilok Klaisataporn

── 青木さんのいう「点」は、どうしたら見つかるのでしょうか?


人によると思いますが、見つけようとして見つかるものではなく、自然と定まるものではないでしょうか。ある意味、偶然の産物です。


だからこそ、点が見つかるまでは、そこへ到達するための手段を増やすために、「武器=スキル」をそろえることが重要だと考えます。


特にキャリアの浅いうちは、選り好みせず、いろんなことにチャレンジするのがいいでしょう。そこで、武器を自分でつくり、点が見つかったら全力で向かうのがいいと思います。


── 武器になるスキルは、どうやったら身につくのでしょうか?


「1万時間の法則」という有名な話がありますが、何らかのスキルを手に入れたいなら、まずは1万時間ほど打ち込んでみるのがいいと思います。


1万時間というと、毎日8時間やって大体3年ぐらい。経験上分かるのですが、1万時間やると、1個のスキルを身につける間に、小さなスキルがあと2、3個できたりするものです。


私の場合ありがたかったのは、配属や育児の関係で、いやが応にも1万時間以上、経営企画をやらなければいけなかったこと。


おかげで、「経営企画」に加えて、エクセル術や社内調整力といったスキルも身につきました。


実は「やらざるを得ない環境」にいるのは、ものすごく幸せなことでもあるんですよ。


無理のし過ぎはよくありませんが、とにかく目の前の仕事をがむしゃらに頑張ることで、結果的にいい武器ができているケースは多いです。


「到達点」を決めたら実行あるのみ

青木想さん 写真2

── まずは武器をそろえて、「点」を決める。その先はどうすればいいのでしょうか?


身もふたもないですが、あとはやるのみ。実行しかありません。


私の場合、保険営業をしていた時は、毎晩まっすぐ家に帰ることはなかったです。


飲み会とか、人がいる場所に必ず行く。商談が夜の10時に終わろうが10時半に終わろうが、人脈づくりのために、今からでも会える人がいないか、友達に連絡して「今どこで何してるの?」「飲んでるよ!」「じゃあ行く」といった感じで(笑)。


ほかにも、人とのつながりをつくったり、小さな交流会を開いたり、知り合いを呼んでセミナーをやってみたり。商談につながるかどうかは二の次で、とにかく人との接点を増やしていましたね。


── そこまで徹底するのは、ハードルが高いように感じます。


そんなことはないです。行動に移せない人は、おそらく「点」の設定が間違っている、つまり自分が「本当に到達したい姿」に気づいていないだけかもしれません。


私はどうしても経済的に自立したかったので、営業に打ち込めました。でも、今いる環境で存分に行動が起こせないという人は、もしかしたらそれ以上にやりたいこと、成し遂げたいことがあるのかもしれません。


本当に自分が行きたい場所はどこなのか。それが一番大事で、自分が目指す目標は、綺麗ごとである必要はありません。


「早く帰って家族との時間をつくりたい」でも「副業で本業以上に稼ぎたい」でも、何でもいいんです。


自分が心の底から求めているものに気づけたら、おのずと行動につながるはずですから。


── 本当に達成したい「点」さえ見つかれば、頑張れると。


もっとも、私も思うように営業ができなくて、転職当初は商談が終わると、悔しくて毎日泣いていました。


32〜33歳ぐらいのいい大人が、上司にハンカチを借りて、借りたハンカチがくしゃくしゃになるくらい泣いて、上司に謝って。


ただ、結果が出始めると、自分の考え方も変わっていきましたね。少しずつではありますが、自信もついていました。


よく「思考が変われば行動が変わる」といいますが、私は「行動を変えて初めて思考が変わる」のだと思っています。


繰り返しになりますが、まずはやってみるしかない。それ以外に方法はありません。


そうやって打ち込むうちに、現実が変わり始めます。いつしか自分の思考の範囲を超える結果が出て、自分が思い描いた「ありたい姿」にたどり着くのです。


その繰り返しこそが、キャリア戦略と呼ばれるものの正体だと思います。


JobPicks未来が描ける仕事図鑑_01

取材・文:平瀬今仁、編集:高橋智香、デザイン:堤香菜、撮影:遠藤素子

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