国家公務員として本業での人事を担当しながら、副業的にキャリア教育研究家として、多くの講演や産学連携教育プロジェクトへの参画など、公務員の枠を越える活動をしているのが、橋本賢二さんだ。
副業や他社留学など、自社の枠を超える“越境型活動“は、これからの働き方のキーワードになっているが、そんな働き方、生き方をすでに公務員の世界で実践している橋本さんに、JobPicks「座右の書」シリーズとして、仕事やキャリア選択で迷子にならないためのお薦め書籍を5冊紹介してもらった。
国家公務員として本業での人事を担当しながら、副業的にキャリア教育研究家として、多くの講演や産学連携教育プロジェクトへの参画など、公務員の枠を越える活動をしているのが、橋本賢二さんだ。
副業や他社留学など、自社の枠を超える“越境型活動“は、これからの働き方のキーワードになっているが、そんな働き方、生き方をすでに公務員の世界で実践している橋本さんに、JobPicks「座右の書」シリーズとして、仕事やキャリア選択で迷子にならないためのお薦め書籍を5冊紹介してもらった。
第一に薦めたいのは、ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』です。
本書はオーストリアの精神科医が書いた強制収容所(ホロコースト)を生き抜いた体験記です。いつ殺されるかわからないという極限状態だからこそ「生きる意味」を徹底的に考えさせられる一冊です。
私は国家公務員ですが、公務員である以前に一人の人間として、自分はどうありたいのかという、自分の生きざまを考えさせられました。
その背景として、今は何事にも意味が求められる時代になってきたことがあります。
ビジネスの世界でも、モノを売るだけでなく、“コト消費“や”トキ消費“が注目されるように、どういう価値、すなわち「意味」を提供できるのか強く問われるようになってきていると思います。
生き方だけでなく、働くことにも意味が求めれるようになっています。そんな時代だからこそ、自分が生きる意味を根源的に考えるいいきっかけになるのが『夜と霧』です。
今は価値観が本当に多様化しています。
みんながみんな「これがいい」という絶対的なモデルがなくなり、自分がいいと思うものを突き詰めて考えられるようになりました。それにより、多様なサービスが生まれ、世の中も充実しているように見えます。
だからこそ、自分自身は何をしたいのか、何が好きなのかという自分の価値観を強く問われる時代だと思います。
初めて読んだのは高校生のときでした。
当時世界史が大好きで、とりわけ、第二次世界大戦の近辺の歴史に夢中になっていました。そうなるとホロコーストは、避けて通れない大きな歴史的事実です。そこで、『夜と霧』を読んだのですが、歴史的な話とは全然違う感想を持ちました。
同書の主人公は、強制収容所という、あまりに悲惨な環境の中でも、冷静に状況を判断し、自分には何ができるのかを考えています。
すべてが切り捨てられた極限状態の、生きることだけに集中せざるを得ないという状況下で、主人公は生きることを精いっぱい体現しているのです。
私はその事実に衝撃を受け、自分自身にも、「何で自分は歴史が好きなんだろう?」「自分は勉強して何をしたいのか?」という問いを投げかけるようになりました。
自分は究極、何をしたいのか。自分が死んだら、何を残したいのか——。そういうことまで考えたいと思った原点となったのが、『夜と霧』でした。
人は誰しも、仕事でモヤモヤしたり、人間関係でモヤモヤしたりするときがありますね。そういうときに、『夜と霧』の極限状態に触れると、そんなモヤモヤはあっという間に吹き飛んでしまいます。
そして、気持ちをリセットさせることができて、「あなたは結局、どうしたいの?」という問いにも、純粋に向き合うことができます。
その意味では、いくつになっても、人生に迷ったとき、進むべき道を見いだすための座右の書と言えます。
残り4042文字(全文5363文字)
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