経営コンサルタントは、企業の課題を特定し、その解決策を提案・実行するプロフェッショナルな職業だ。
しかし、特に若手のコンサルタントほど、「事業を動かした経験が少ない」「特定の業界への専門知識は身につきにくい」といった悩みを抱えているのも事実。
サステナビリティ戦略の構築に強みを持つコンサルタント・矢守亜夕美(やもり・あゆみ)さんも、そうした悩みの中で、自らキャリアを切り拓いてきた一人だ。
大学卒業後、戦略コンサルティングファームのA.T. カーニー(グローバル・ブランド名:カーニー)に就職。その後グーグル、スタートアップを経て、デロイト トーマツ コンサルティングにて再びコンサルの門を叩いた。
現在は人権・サステナビリティ戦略に強みを持つオウルズコンサルティンググループで働いている。
事業会社を経て、再度コンサルに戻ったのはなぜか。また、サステナビリティという自身の専門テーマを見つけた経緯とは。
キャリアの節目に読んだ5冊の書籍とともに、これまでの仕事人生を振り返ってもらった。
── コンサルから事業会社に行き、またコンサルに戻るというキャリアは、戦略的に築いてきたものですか?
むしろその逆で、悩みながらキャリアを築いてきました。
今でこそサステナビリティ戦略を軸に、クライアントの経営戦略の提案・実行を支援していますが、20代の頃は自身の強みややりたいことさえ、つかめていませんでした。
サステナビリティ戦略とは
主に社会・経済・環境の3つの観点から、企業活動を良好で「持続可能」な状態に保つための戦略のこと。 脱炭素やサプライチェーンでの人権配慮といったトピックを取り扱う。
新卒でA.T. カーニーを就職先に選んだのも、学生時代に、自分が一生コミットしたいと思う事業や業種が絞りきれなかったから。
ならば、経営やビジネスの汎用的なスキルが身につきそうな戦略コンサルに入ろうと考えたのです。
その後も、どこなら自分の介在価値を最大化できるのか、どんなテーマなら一生をかけて取り組みたいと思えるのか。それを見極めるために、さまざまな企業で働いてきました。
── これまでのキャリアを振り返って、転機はどこにあったのでしょうか?
転機は、2つあります。
1つは、A.T. カーニーから2社目のグーグルに転職したことです。
4年ほど在籍したA.T. カーニーでは、仕事の右も左もわからない状態から、プロジェクトの重要なパートを任せてもらえるまで、社会人としての基礎を叩き込んでもらいました。
今から10年前の戦略コンサルなので、働く環境は幾分ハードでしたが(笑)、ひたすらに目の前の仕事に打ち込んでいましたね。
一方で、あまりにも前だけを向いて仕事をしてきた結果、キャリアに対して、近視眼的になっているという焦りもありました。
そこで一度立ち止まって、コンサル以外の選択肢も見てみたいと思うようになりました。その矢先、たまたまグーグルの方にお声がけいただいたこともあり、転職することにしました。
── グーグルではどんな仕事をしていたのですか?
法人向けのセールス部署で、業界アナリスト兼マーケティングコンサルタントとして働いていました。
ユーチューブやグーグルの広告プロダクトをクライアントに提案したり、広告運用効果のデータを分析してその後の戦略を立てたりする仕事です。
仕事はとても充実していたのですが、さらに小さな組織でも力試しをしてみたいという気持ちが湧いてきました。
そこで、4年後に社員100名程度のスタートアップに転職。経営企画のポジションで、会社の経営計画の策定からバックオフィス業務まで幅広く取り組みました。
ここで、2つ目の転機が訪れました。スタートアップから、再びコンサルティングファームのデロイトトーマツ コンサルティングに転職したのです。
スタートアップでの仕事は刺激的で、事業や組織を主体的に引っ張っていく経営者の姿を間近で見ることができました。
彼らにリスペクトを感じる一方で、私はそういう立ち回りより、参謀的な立場でいろいろな企業の経営者と並走するほうが性にあっているな、と感じるようになったんです。
そこで、もう一度コンサルの世界に戻ってチャレンジしよう、と決意を固めました。