就活ランキングで人気の大手企業に入社したのはいいものの、大手企業特有の“縦割りスタイル”のせいで、仕事をしている感覚やスキルが身についている感覚が薄い──。
安定を求めて就職先を選んだ若者が、少なからず抱える悩みである。
しかし、だからといって、独立や起業はリスクを伴うので敷居が高い。福利厚生が充実した今の環境も捨てるには惜しい。一体、どうしたらいいのか。
ランジェリーブランド『BELLE MACARON』を展開するashlynの代表・小島未紅さんは「安定志向を持った堅実な若者でも、やりたい仕事に挑戦できる」と語る。
実のところ、小島さんの前職はNTTグループのソフトウェアエンジニアだ。
自身を“究極の安定志向”と語る小島さんは、なぜハイリスクな起業という選択をしたのか。平凡なOLが「好きなことを仕事にする」までの経緯を、赤裸々に語ってもらった。
—— 経営者としてランジェリーブランドをプロデュースする小島さんが、ファーストキャリアにシステムエンジニアを選んだ理由を教えてください。
昔からものづくりに興味があり、新しい価値を創造することに喜びを感じていたからです。
また、大学の授業でかじったプログラミングの経験を生かせる点も、魅力に感じていました。
数ある企業の中からNTTコムウェアを選んだ理由は、私が“究極の安定志向”だからです。結婚や出産をしても仕事を続けたいと考えていたので、福利厚生が整っていたNTTグループは、当時の私にとって最適なファーストキャリアだったのです。
内定をいただいた2013年は、私がiPhoneデビューを果たした年でもあります。
それまでガラケーを使っていたこともあり、「新しい価値を創造すると、こんなにも誰かをワクワクさせることができるんだ」と衝撃を受けました。
iPhoneを手にしてから入社するまでの半年間は、「今度は私が新しい価値を創造する側になれる!」と、期待で胸がいっぱいでしたね。
—— 入社後は、どのような業務に携わっていたのでしょうか?
オンラインストレージサービスの設計からコーディングまで、幅広い業務に携わらせていただきました。
とはいえ、バリューチェーン全体に携われる機会はそう多くありません。NTTコムウェアだけでなく、大半の大手企業がそうであるように、業務の多くは縦割りです。
私でいえば、設計からコーディングを一貫して担当する機会は少なく、胸を張って自分のスキルや実力を語れるほどの実戦経験を積むことはできませんでした。
また、そもそも携わるシステムの大半は、NTTグループ周辺の回線や社内システムです。つまり、社内でキャリアを積めたとしても、それを社外で生かせる保証はありません。
期待に胸を膨らませて入社したのはいいものの、仕事が板についてきた2年目には、「このままでは、結婚や出産を機に職場を変えざるを得なくなったときに、自由に転職先を選べなくなってしまう」と危機感を覚え始めました。
究極の安定志向だからこそ、どこでも活躍できるスキルが身につかない環境に、不安を感じたのです。