【事例研究】高専卒業生に広がる「技術者の先」にあるキャリア

【事例研究】高専卒業生に広がる「技術者の先」にあるキャリア

目次

  • 高等専門学校生の就職状況
  • ITエンジニアとしてのキャリア
  • データサイエンティストの道も
  • コンサルやマーケでも活躍

JobPicks経験談まとめ

「みんなでつくる仕事図鑑」JobPicksは、さまざまな職業のロールモデルが投稿してくれたリアルな経験談を多数掲載している。本連載では、その投稿内容を参考に、仕事や就職・転職の悩みを解消するヒントを探っていく。今回は、高専出身者のキャリア研究だ。


高等専門学校生の就職状況


かつては製造業の躍進により「技術立国」と呼ばれた日本。その土台を支える役割を担っていた高等専門学校(以下、高専)の出身者たちに、今、新たな期待がかけられている。


日本の高専は、高度成長期のモノづくりを担う技術者を育成するべく、1960年初頭に生まれた。


機械、材料系、電気、電子系、情報系、化学、生物系などの技能を習得する高等専門機関で、学生は中学卒業からの5年間で各専攻を身に付ける。高校を卒業してから大学に進学するより、短期間で専門技術を学べるのが特徴だ。


文部科学省によると、全国に高専は国公私立合わせて57校あり、約6万人の高専生がいる(2020年度)。その中で、近年はIT・通信分野の高度な技術者が育つことにも期待を寄せられている。


同じく文科省の調べで、高専卒業後の産業別就職者の割合は、製造業が最も多く半数近くを占めている。だが、下図のように、情報通信業への就職者も13.9%で第2位となっている。

文部科学省「高等専門学校の特色:産業別就職者割合(令和2年3月卒業者)」
出所:文部科学省「高等専門学校の特色」産業別就職者割合(令和2年3月卒業者)

この背景には、IT・通信産業の盛り上がりに加えて、近年進む職種別採用も関係しているだろう。


リクルートキャリアの「就職白書2020」によれば、今は約7割の企業が、新卒採用で職種別採用を行っている。

リクルートキャリアの「就職白書2020」

中でも、IT関連のエンジニアリングやデータサイエンスなどで特別な技能を持つ学生を、高額な初任給で雇い入れる動きが出始めている(具体例は下の記事にて)。

では、実際のところ、高専出身者は就職後にどんなキャリアを描いているのか。JobPicksに登録しているロールモデルの中で、高専を卒業した人たちのその後を見てみよう(注:ロールモデルの所属・肩書は、全て本人が投稿した時点の情報)。


ITエンジニアとしてのキャリア


飯田有佳子さんは、岡山県の津山工業高等専門学校(津山高専)を卒業した後、サイバーエージェントやニューズピックスでソフトウェアエンジニアをしてきた。どちらもWebサービスやスマホアプリを提供する企業だ。

飯田 有佳子
飯田 有佳子さんの経歴








  • 現在

> 飯田有佳子さんの経験談を読む


また、求人メディア「Green」や従業員のエンゲージメント解析ツール「wevox」を提供するアトラエでソフトウェアエンジニアを務める中村充さんは、群馬工業高等専門学校(群馬高専)を卒業後、九州大学に進学。

大学時代の学生起業を経て、アトラエでエンジニアとして働いている。

中村 充
中村 充さんの経歴










  • 現在

> 中村充さんの経験談を読む

学生起業を経験しているからか、エンジニアとしてプロになるには?のコメントを見ると、ビジネスについての言及が多い。中村さんが、ソフトウェア開発だけでなくプロダクトづくり全般に関心を持っていることがうかがえる。

ソフトウェアエンジニアこの職業のプロになるには

同業の先輩や同僚にアドバイスされたことで、最も仕事上の教訓になったことは何ですか?

中村 充
経験者中村 充
株式会社アトラエ

遊ぶように働く

弊社社長からの言葉ですが、ビジネスは想像しているよりもずっと長期戦です。100メートル走でも1500メートルでもなく、フルマラソンを走りぬくようなイメージで捉えることが重要です。

ちょっと周りの人たちに遅れをとっている、自分の成長速度に焦りを感じる、昇格試験に合格できなかった、評価が思ったよりも高くなかったなどと感じている場合には、ぜひもっと広い視点で物事を捉えるようにしてほしいと思っています。

42.195キロを走っているのに、スター...

トダッシュの10メートル差がついてしまって落胆しているのであれば、顔をあげてどんなペースで走れば自己ベストが出せるのか?を考えて走り続けた方が良いです。 大事なことは、想像するよりもずっと長い戦いになるので、正しい努力と選択の積み重ねが長期で雲泥の差を生むということです。 間違えてもコスパの尺度を見誤らず、一見勝負にもみえないことを勝負だと捉え、120点の結果を出し続けた先にこそ、みたことのない景色が広がっているのだと思います。 そして、この長期戦をいかに楽しんで進めるか?が勝負の分かれ目になると考えています。 仕事を仕事だと捉えている間は120点の成果を出すことに体力を使い、疲弊してしまいます。これが遊びだと認識している場合は、楽しくて仕方ないので全く苦になりません。 遊ぶように働ける場所をみつけ、正しい努力と選択を繰り返し続けることが、ビジネスというマラソンを走り抜けるコツだと思います。


その延長線上には、小賀昌法さんのようなCTO(最高技術責任者)へのキャリアパスも考えられるだろう。

小賀さんは、北海道の釧路工業高等専門学校(釧路高専)を卒業後、日本電気システム建設(現・NECネッツエスアイ)やヤフーを経て、ITアウトソーシング業のトランスコスモスで事業企画・事業開発を経験。

技術力と事業開発の経験を生かして、VOYAGE GROUPのCTOに就任している。

Koga Masanori
Koga Masanoriさんの経歴










  • 現在


  • 現在


  • 現在

> 小賀昌法さんの経験談を読む

現在は日本CTO協会の理事も務め、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速するための活動も行っている。


IT業界で活躍する高専出身者には、小賀さんのほか、さくらインターネット代表の田中邦裕さん(京都府・舞鶴高専を卒業)や、コロプラ創業者の馬場功淳さん(宮崎県・都城高専を卒業)などもいる。


こうした先達のおかげで、高専出身者の活躍の場は広まりつつある。


データサイエンティストの道も


近年は、エンジニアリングに加えてデータサイエンスの世界でも高専出身者が活躍し始めている。


JobPicksのロールモデルでは、大野康明さんや岡本壮大さんが、高専出身でデータサイエンティストを務めている(大野さん、岡本さんともに、高専卒業の情報はLinkedInより)。


大野さんは、東京工業高等専門学校(東京高専)から筑波大学大学院システム情報工学研究科を経て、スマホアプリのデータ分析事業を展開するフラーでデータサイエンティストになった。

大野 康明
大野 康明さんの経歴




  • 現在

> 大野康明さんの経験談を読む

一方の岡本さんは、静岡県の沼津工業高等専門学校(沼津高専)を卒業後、筑波大学大学院システム情報工学研究科を経てAIGジャパンに入社。


同社でデータアナリストを経験し、その後エヌエヌ生命保険のデータサイエンティストに転職している。

岡本 壮大
岡本 壮大さんの経歴








  • 現在

> 岡本壮大さんの経験談を読む


2人に共通するのは、高専を出た後に、大学院でデータサイエンスを学んでいる点だ。高専のカリキュラムで、この分野を専攻できる学科がまだ少ないというのが背景にあるのだろう。


だが、AIなどの先進技術を駆使したデータ活用は、日本政府も人材育成に本腰を入れる分野だ。


日経クロストレンドの記事によると、2019年、マーケティング・コンサルティング・データ分析関連職種の中で最も求人数の伸び率が高かったのはデータサイエンティストで、2年間で7.5倍になったという。


高専で身に付けた技術力を、データサイエンスの世界で発揮していく人も、増えていくことが予想される。


コンサルやマーケでも活躍


高専出身者のキャリアパスが広がっている証拠は、他のロールモデルの経歴からも読み取れる。


現在、情報セキュリティ企業のCISOでCEO(最高経営責任者)を務める那須慎二さんは、北海道の苫小牧工業高等専門学校(苫小牧高専)を卒業した後、エンジニアから経営コンサルタントに転じて現職に就いた。

那須 慎二
那須 慎二さんの経歴










  • 現在

> 那須慎二さんの経験談を読む


今は、経営コンサルタントの仕事でもテクノロジーの教養が欠かせない。IT戦略がそのまま事業の成長に直結するようになっているからだ。那須さんのキャリアを見ると、この事実がうかがえる。


また、ITベンチャーのスマートニュースやスケールアウト(現・Supership)で、デジタル広告プラットフォームのサービス開発やマーケティング責任者を歴任してきたMoonshot代表の菅原健一さんは、宮城工業高等専門学校の卒業生だ(2009年に仙台電波工業高等専門学校と合併し、仙台高等専門学校・名取キャンパスに名称変更)。

菅原 健一
菅原 健一さんの経歴


  • 国立宮城工業高等専門学校 材料工学科・卒業


  • CMO(最高マーケティング責任者)株式会社Supership正社員


  • 現在
    Webマーケター・デジタルマーケター株式会社Moonshot会社役員

> 菅原健一さんの経験談を読む


広告のデジタル化が進む中、テクノロジーとマーケティングをつなぐ役割としても、高専出身者が活躍できるという事例の一つだ。


下の記事で、『10年後、生き残る理系の条件』(朝日新聞出版)の著者・竹内健さんは、次のように述べている。


私自身、エンジニアとしてスタンフォード大でMBAを取得しましたが、日本では技術のことを知っていて経営を理解できる人材がまだ不足しています。

(中略)文系の方でファイナンスなど数学が必要とされるところには弱い人も多い。文系と思われがちな分野でも、理系の学部を卒業した人が活躍できる分野は多いのです。


──【竹内健】変わり続けることが、激動の時代を生き抜く術



高専という高等専門機関で学んだ基礎を、技術開発以外の領域で発揮するチャンスは、今後も広がっていくと考えて間違いない。


JobPicks未来が描ける仕事図鑑_01

文:伊藤健吾、デザイン:國弘朋佳、バナー写真:iStock / alexsl

※ この記事に編成されている経験談は、記事作成時の経験談の内容と情報が異なる場合があります。

この記事に関連する職業

経験談・年収・キャリアパス・将来性などのデータ・ロールモデルをこちらでご覧いただけます

関連する記事

JobPicksオリジナル記事