連載:のぞき見仕事術
志望業界が決まっている就活生や、新卒入社・未経験転職で慣れない仕事に四苦八苦する若手社会人に向けて、各職業のプロフェッショナルの仕事術を紹介する連載。第1回目は、経営コンサルタントの必須スキルといわれる「エクセル」についてだ。
「若くして成長できる」「給料が高い」などの理由から、就活生のコンサル人気が加熱している。
就活サイトONE CAREERの「東大京大 22卒就活人気ランキング」では(元記事)、トップ20社のうち11社をコンサルティングファームが占めるなど、年々この傾向が強まっている。
だが、コンサルティング業界は価値を出せなければ退職勧告もあり得る厳しい世界だ。そのためか、多くのコンサル志望者から「コンサルタントとしてサバイブする仕事術が知りたい」という声をよく聞く。
ファイナンスや英語、論理的思考力など、必須と呼ばれるスキルは多々あるが、中でも欠かせないのがデータ分析のスキルだ。
特にエクセル活用のスキルは、その汎用性の高さから、新人からベテランまで求められる基本中の基本といっていい。
そこで今回は、A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:カーニー)で経営コンサルタントとして活躍し、現在はAIベンチャーのWACULでCFO(最高財務責任者)を務める竹本祐也さんを取材。
なぜコンサルタントにエクセルのスキルが欠かせないのか。業務でよく使う関数や、勉強法を聞いた。
なぜエクセルが必須スキルなのか
コンサルタントの業務でエクセルのスキルが欠かせない理由は、大きく3つあります。
1つ目はスピードです。
コンサルはクライアントから稼働時間単位でお金をもらっているので、短時間で質の高いアウトプットが求められます。
例えば、ある仮説を検証するためにデータの相関関係を調べるとしましょう。エクセルでスムーズに分析を行えば5分で仮説検証が終わり、次のアクションに移ることができます。
一方、もしエクセルの苦手なコンサルがいて、分析を外部に委託したら、それだけで最低1日はかかってしまいます。時間の投資対効果という観点でも、エクセルを使いこなすのが必要不可欠なのです。
2つ目は汎用性です。
職業柄、コンサルはクライアントとのコミュニケーションが頻繁に発生します。その際、“共通言語”となるのがエクセルです。
誰でも操作ができますし、ファイル上でセルごとの計算式も確認できるので、どんな計算が行われているかは「見れば分かる」状態です。
たとえ知らない関数があっても、エクセルくらい広く普及したツールであれば、ネット検索をすれば必ず解説記事が出てきます。つまり、特別な知識がなくても誰もが簡単に使えるわけです。
最後の3つ目は再現性です。
コンサルはプロジェクト単位でデータを分析しますが、そのプロジェクトが終わった後も、クライアントのビジネスは続きます。
そのため、分析を行う際はクライアント自身が繰り返し使えるような設計が大切です。エクセルであれば、最初に関数を組み込んでおくだけで後々データを追加してもすぐ計算し直せます。
データの保存先となるデータベースに、新規データが追加された場合でも、自動で別シートに最新の分析結果が出るように設計しておけば、クライアントは同じエクセルのファイルを来年も使えるのです。
今は、エクセルよりも便利な分析ツールがたくさん出ています。でも、一般的に普及していないツールだと、クライアントがちょっとした修正さえできなくなる危険性があります。
最近だと、RPA(Robotic Process Automation:PC上の業務をソフトウェアに組み込まれたロボットが代行すること)を使った自動化が流行していますが、これだと計算式がブラックボックス化する懸念があります。クライアント自身がデータベースの仕様を変えたら、上手く処理されなくなるデメリットもあるのです。
コンサルには、汎用性と再現性を伴うデータ分析を、スピード感を持って行うことが求められます。だからこそ、エクセルを操るスキルが大事なのです。
エクセル超活用、3つのステップ