社会に出るのが怖い——。
チャレンジしたい仕事が見つからず、働くことに対して漠然とした不安に駆られている学生は少なくない。
組織・人事系スタートアップのアトラエでデータサイエンティストとして働く土屋潤一郎(つちや じゅんいちろう)さんは、文学部から転部し、工学部で電子情報工学を専攻。大学院で自然言語処理を研究するも、「研究は向いておらず、孤独だった」と大学時代を振り返る。
「できることなら働きたくない、自堕落で典型的な“意識の低い”学生だった」彼は、いかにして仕事に醍醐味を見いだすようになったのか。
土屋さんが就職までにたどった「猶予期間」をひも解きながら、WILLを見いだせない学生が社会に一歩踏み出すヒントを探っていく。
留年して、専攻を選び直し
—— アトラエでデータサイエンティストとして働くことになった経緯を教えてください。
大学時代のサークルの先輩から誘いを受けたことがきっかけで、大学院1年生の5月から約2年、インターンとしてアトラエに参加しました。
新卒で正社員として入社したのは2020年4月からです。今はワークエンゲージメントを可視化する当社のSaaS型サービス「wevox」のデータサイエンスチームで仕事をしています。
—— 2年間もインターンしたということは、アトラエで働くことに相当な思い入れがあったのですか?
確かに、「2年のインターンを経て入社」とだけ聞くと高い志を持ってアトラエにコミットしていたように感じるかもしれません。
しかし、アトラエの事業に対して強い興味・関心があったわけでも、データサイエンティストとして何か挑戦してみたいことがあったわけでもありません。
学生時代は将来やりたいことも特になかったですし、むしろ「できることなら働きたくない」とさえ思っていました。
勉強でもそれ以外のことでも、時間を忘れて何かに没頭したことはほとんどなく、気ままで自堕落な大学生活を送る、典型的な“意識の低い”学生でした。
今でこそアトラエの価値観に共感し、データサイエンティストという職にやりがいを見いだしていますが、学業をも含めて、学生時代に長い回り道をしなければ、仕事の楽しさにはたどり着けなかったと思います。
—— どのような大学生活を過ごしていたのでしょうか?
大学入学当初は文学部に進学し、西洋史を専攻しようとしていました。
ところが、3年生の時に初めて研究室に一歩足を踏み入れた際、「ここであと2年過ごす自信がない」と直感が働き、西洋史を学ぶことを諦めたのです。
なぜそう感じたのか、いまだに理由は言語化できませんが、研究室の雰囲気がどこか肌に合わなかったのだと思います。
そこで、1年留年し、専門分野を選び直すことにしました。
歴史以外では言語に興味がありましたが、「同じ文学部のなかで専攻を変えるだけでは、環境が変化しない」と考え、工学部の電子情報工学科へと転部し、自然言語処理を学ぶことにしました。
「好きを仕事に」なんて願い下げ