ゴールドマン・サックスのアナリストから、A.T. カーニーのコンサルに、そして企業のマーケティングのDX(デジタルトランスフォーメーション)を手掛けるスタートアップWACULのCFO(最高財務責任者)として、上場を目指す──。
竹本祐也さんのキャリアは、絵に描いたようなエリートのプロフィールに見える。
だが意外にも、就活では苦労続きだったと明かす。
もともと、経営のプロフェッショナルになりたいというボンヤリとした夢は抱いていた。そのため、コンサル会社とマーケティングで有名なP&Gを受けようと決めた。
「でもP&Gはインターンの手前で落ちましたし、その後に受けた外資系コンサル会社も1社は筆記で落とされ、2社目は1次面接で、3社目は2次面接で玉砕しました。4社目も落ちたあたりから、『東京にネズミは何匹いると思う?』なんて質問をしてくる意地悪な業界は願い下げだと、残りの2社は一次面接を“寝ブッチ”してしまいました(笑)」
そこで目指した新天地が証券業界だった。実は中学時代から投資をしていたほどの株好きだ。運よく、日系証券会社でインターンになった。
「この仕事は面白い。これを自分の仕事にしたい」
最後にたどり着いたのが、職種別採用を行っていた外資系金融機関で、唯一エントリーシートが日本語だったゴールドマン・サックス証券(以下、GS)だ。ここも、インターンに応募したものの落とされた会社だった。
GSの採用試験は面接の回数が多いことで、つとに有名だ。
苦手な英語力に対して、「できる?」と聞かれた時は焦った。
「苦し紛れに、京都大学の学生の平均値くらいですね、と答えると、では、試しに英語で話してみようと、英語で『週末は何をしていますか?』と聞かれてしまいました」
I go to GUSTO with my friends!
と答えるのが精一杯で、この時は「絶対に落ちた」と思った。
だが、後に聞いたところ、日本語による論文の評価が高く、無事採用された。
「ラッキーだとホッとしましたね」
迷ったら危険な道をゆく
GSといえば、金融機関の頂点に君臨する企業だ。それだけ年収も、仕事量も凄まじいイメージがある。
「私は何かを選ぶ時、あえて危険な道を選んだほうが面白いと考えます」
だからこそ、雇用が安定した国内証券会社ではなく、パフォーマンスや市況によっては解雇もあり得る“危険な道”を選んだ。
「こうした思考に大きな影響を与えてくれたのが、画家の岡本太郎さんが書いた『自分の中に毒を持て』という本です」
人間はほんとうは、いつでも二つの道の分岐路に立たされているのだ。この道を取るべきか、あの方か、どちらかを選ばなくてはいけない。迷う。
一方はいわばすでに慣れた、見通しのついたみちだ。安全だ。一方は何か危険を感じる。もしその方に行けば、自分はいったいどうなってしまうのか。不安なのだ。しかし惹かれる。ほんとうはそちらの方が情熱を覚えるほんとうの道なのだ
──『自分の中に毒を持て』より
歓喜と驚きに満ちた人生を歩みたければ、自分で掴みとれ──同書はそんな、力強いメッセージで溢れている。
「関西出身なので、大阪にある『太陽の塔』やそれを作った岡本太郎さんの存在は知っていました。『芸術は爆発だ!』の人だ、と。だからこそ、大学生の時、書店でこの本を見つけ、タイトルにピンと来て購入し、一気に読みました」
その偶然の出会いが、人生を変える「座右の書」になった。
「敵は他人ではなく現状に甘えようとする己だとか、モノマネ人間になるなといった岡本太郎の考え方に共鳴しました。もともと私の中にあった価値観が言語化された感覚でした」
読後、ますます「人とは違う、変わった人間になりたい」と思うようになったと語る。