【新就活】学歴・専攻で決めつけない「意外な適職」の見つけ方
2021年4月23日(金)
近年、「ITコンサルタント」では女子大・美大出身者が増えているという。
アクセンチュア社長の江川昌史さんは、インタビューで「2015年の社長就任後、まずやった仕事は女子大と美大を訪問することでした」と語っているほどだ。
私が2015年の社長就任後、まずやった仕事は女子大と美大を訪問することでした。「アクセンチュアです、怪しいものではありません」と。 ——【アクセンチュア】トップが語る「6年で3倍」規模拡大の全貌
【アクセンチュア】トップが語る「6年で3倍」規模拡大の全貌
なぜ、ITコンサルで女子大・美大の需要が増えているのだろうか。
近年増えているデジタル関連のコンサルティング案件では、クライアントの先にいるエンドユーザー(サービスを利用するユーザー)に寄り添う提案を期待されているからだ。
江川さんも、以下のように語っている。
デジタルの仕事は、たとえBtoB(法人向けの仕事)でも、その先のC(カスタマー)のことを考えなくては成立しません。そのためには、市場と同じような多様性のある人材を社内に持つ必要がありました。 ——【アクセンチュア】トップが語る「6年で3倍」規模拡大の全貌
女性や美大卒など多様な人材を採用することは、サービスデザインの領域でも、エンドユーザーの心をつかむ上でも、極めて重要だ。
そのため、市場と同じような多様性のある人材層を社内にも持つ必要があるという。アクセンチュア以外の総合コンサルティング会社でも、以前は男性社員が多かったため、女子大や美大卒の採用数が増加している。
電通や博報堂などの総合広告代理店に多くいる「マーケティングプランナー」は、その華やかなイメージにより、文系学生からの根強い人気を誇っている。
しかし、マーケティングプランナーは実のところ、理系出身者も少なくない。特に建築学科卒が多いという特徴がある。
博報堂の沼田宏光さんは、理由をこう語る。
「何かを突き詰めて考える、考え抜く」仕事のため、特にコンセプトづくりの点で共通点のある建築学科卒が多い。 ——書籍『JobPicks 未来が描ける仕事図鑑』より
マーケティングプランナーは、ターゲット顧客の共通項など「何かを突き詰めて考える、考え抜く」力が求められている。
元来、マーケティングプランナーは、商品を売るための施策として広告のプランニングからパッケージデザインまで幅広く携わっていた。現在はデジタル化の進展に伴い、アプリの開発企画やSNSマーケティングなど、業務の幅がさらに広がっている。
しかし、手法や守備範囲がどれだけ広がっても「買ってもらう仕組みづくりへと向かうのは変わらない」(博報堂・喜田村夏希さん)。
そのため、コンセプトづくりに近い考えを学ぶ建築学科卒が活躍しているのだ。
昨今、大規模データが容易に手に入る環境や、機械学習の利用機会の増加から、「データサイエンティスト」「AIエンジニア」の需要が急増している。
矢野経済研究所の調べによると、データサイエンスにかかわる人材は、日本だと2018年時点で25万人不足している。企業の6割が十分に人材を確保できていないと答えるほど売り手市場である。
実際に、2020年の転職市場全体での有効求人倍率は1.18倍であるのに対し、データサイエンティストの有効求人倍率は11.9倍、AIエンジニアは10.8倍(ともにパーソル調べ)と大きく差が開いている。
データサイエンティストは、自社の膨大なデータを活用する「大企業」、顧客の持っているデータを分析して事業改善の提案をする「コンサルファーム」、統計学的な手法や機械学習の技術力を特徴とする「ベンチャー」など様々な会社で活躍している。
人手不足が深刻化している影響から、最近は、情報系学科以外からの出身者も多くいる。書籍『JobPicks 未来が描ける仕事図鑑』の制作時に行った取材でも、次のような傾向が浮かび上がった。
大半が情報系か経済系の分野を大学院で専攻している。情報系であれば機械学習、経済系であれば、マーケティングの効果検証などに応用できる因果推論を中心に学んでいる学生が多い。 ——書籍『JobPicks 未来が描ける仕事図鑑』より
AIエンジニアも同様に、人材不足を補うために以下のような傾向があるようだ。
情報系を専攻しており、機会学習を専門の研究で使った経験のある学生が多い。それ以外の分野では、バイオインフォマティクス、マテリアルズインフォマティクス、計量経済学などで機械学習を使った経験があって入ってくる学生もいる。 ——書籍『JobPicks 未来が描ける仕事図鑑』より
以前は情報工学で有名な大学や、海外の名門大でコンピューターサイエンスを専攻している人が多かったが、最近は多様な大学・学部・専攻の卒業生がいるという。
かつて、心理学科や哲学科、文学科など人文科学系の学科では、「学問を生かせる就職先がない」という声も上がっていた。しかし、そんな人文科学系出身者が多く活躍している職種がある。
一般的に出身校や専攻は問われない。一方「外資系企業で人事部門のトップになる人は、大学で心理学や組織マネジメントを学んでいた人が多い」(LUSH・安田雅彦さん)。 ——書籍『JobPicks 未来が描ける仕事図鑑』より
人文科学系の出身者は、コミュニケーションに興味がある人も多いため、「人」に関する仕事に活路を見いだす場合が多い。
また、人に貢献するという切り口では、常に顧客に寄り添う姿勢が重要な、営業の新業態「カスタマーサクセス」も向いているだろう。
カスタマーサクセスは、サービスを利用し続けてもらうため、顧客と伴走する必要がある。顧客に対する興味や成功の後押しをできる人が向いている職種と言える。
特に「経営コンサルタント」は高学歴な人が多く、ハードルが高いと感じるかもしれない。
実際に東大卒が6割の経営コンサルファームもあるなど、学歴を重視しているのは事実だ。それでも、多くのファームが「学歴不問」と謳っているのは、仕事で必要なマインドが学歴以上に重視されるからだ。
多様な産業の多彩な問題解決が仕事なので、常に新しいことに挑戦したがる成長意欲や好奇心が強くないと、続けるのがしんどい。 ——書籍『JobPicks 未来が描ける仕事図鑑』より
また、DX(デジタル・トランスフォーメーション)需要の影響から、ITコンサルタントは慢性的な人手不足という問題を抱えている。
仕事内容も、経営課題の発見からアプリ開発まで多岐にわたり、デザイナーなど異職種とのコラボも増えている。
中途採用では学歴不問な場合が多く、工業高校やアナウンサー出身、元ユニクロの店長など、異職種からの転身組も増えていることが分かった。
【山下良輔】工業高校から、有名コンサルに転職した31歳の逆転人生
大学の学部・専攻・学歴を超えたキャリアは、この他にも数多くある。人の数だけキャリアがあり、あなたに「合う」仕事のヒントが見つかるはず。
この記事で内容を引用した書籍『JobPicks 未来が描ける仕事図鑑』では、取り上げた職業以外にも
未来をリードする22職種で「必要なスキル・マインド・学歴」
新卒社員が「最初にやる仕事」
就職後に身に付くスキル
などが載っている。これらの情報と、自分のやりたいことを考え、納得のいくまで仕事選びをしてみては?
文:平瀬今仁、編集:佐藤留美、伊藤健吾、デザイン:黒田早希