経営コンサルタントは、クライアントの経営陣と密にやりとりしながら、経営改革を実現に導く仕事だ。
だが近年は、製品・サービスのマーケティングや新規事業における試作品の開発など、より「実行」へのニーズが高まり、幅広い業務を担うようになっている。
ボストン コンサルティング グループも、こうした市場の要請に答えるため、2018年5月にDigitalBCG Japan(以下、DigitalBCG)を創設。人工知能(AI)やデータサイエンスなど、最新のデジタル技術を活用しながら、新戦略の策定や実現を一貫して支援している。
注目は、コンサルティングそのもののデジタル化に伴って、過去には入社してこなかったような経歴のコンサルタントが増えていることだ。
元デザイナー/フロントエンドエンジニアで、前職ではエナジードリンクのレッドブル・ジャパンでブランドマーケティングをしていた打越武さんも、その一人だ。
DigitalBCGでは「エクスペリエンスデザイナー」として、クライアントが手掛ける事業のユーザー体験向上に寄与している。
どんな変遷を経てエクスペリエンスデザイナーになったのか、打越さんのキャリア曲線を振り返ってみよう。
打越さんのキャリアにとって、最も学びを「広めた」時期は、学生時代のインターンだった。
「エンジニアになりたかったというより、とにかく『ビジネスが動いているところ』で経験を積みたいと思っていました」
モバイルゲームの開発会社など、複数のベンチャー企業でインターンをした打越さんだが、実は大学に入るまでパソコンすら触ったことがない学生だったという。
日本大学芸術学部では映像を専攻していたが、ベンチャーでのサービス開発に時間を割くようになったのは「新しいプロダクトが生まれる場所を見てみたい」「トレンドになっている成長産業に身を置きたい」と感じたから。
打越さんが学生だった2010年代前半は、スマートフォンの普及も相まって、アプリ開発に取り組むベンチャーが乱立していた。
実際、インターン先は東京・両国のマンションに数名しかいないような環境だった。
システム開発に関する知識は、職場で本を読みながら覚えていった。
「失敗も含めて、素人が意気込みだけでやれるのは、若い時ならではの特権です。分からないことはすぐ聞いて、なるべく早くキャッチアップする。20代の前半までは、そう意識して動くようにしていました」
インターン先の社長からは、「自分がこれからどうキャリアをつくっていくかより、今、世の中は何を求めていて、それに対して何をアウトプットしていくかを意識して仕事をしよう」とアドバイスされた。
この助言が、打越さんの仕事の基礎をつくり出した。