転職のプロが解説 トレンドは「越境転職」「DX人材」「副業3.0」

転職のプロが解説 トレンドは「越境転職」「DX人材」「副業3.0」

    間もなく2月も終わろうとしています。みなさんが新年に立てたキャリアの目標の中には転職や副業に関係するものも多いかもしれません。

    今回は、NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」にも出演し、転職エージェントとして、大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポートをしているmorich代表の森本千賀子さんに、2024年の転職トレンドを解説していただきました。

    森本さんが注目するのは3つのキーワード。それは「越境転職」「DX人材」「副業3.0」です。

    「今すぐの転職なんて考えていない」という人でも、現在の転職市場の大きな流れをつかみ、長期的なキャリアデザインの参考になるかもしれません。

    JobPicks編集部が今年1月に開催したウェビナーから、キャリアアドバイスのプロが見据える最新の転職市況を紹介します。

    目次

    morich代表 森本千賀子プロフィール

    加速する「越境転職」


    森本さんはまず、コロナ禍が一段落したことでインバウンドの需要が回復したことや、企業のDXに関係する部門の求人環境が好転している現状を解説しました。「体感値ではコロナ前を上回るレベルで採用が活発になっている」と話します。

    そして、大量の人材が企業間を行き来するようになると、培った経験やスキルを生かしながらもこれまでとは全く異なる業界や業種に転職する「越境転職」がスタンダードになり、その流れはさらに加速すると予測します。過去10年間の中途採用市場動向(リクルート調べ)をみても、転職者の約7割が異業種転職だといいます。

    では、越境転職するにあたって必要なスキルとは何でしょうか。森本さんは、仕事に紐づいた専門知識である「テクニカルスキル」だけではなく、より汎用性の高いスキルの大切さを強調しました。


    森本:「どこでも持ち運びができ、どんな業界でも通用するような「ポータブルスキル」を身につけておくことが重要です」

    キャリアトレンド

    そのポータブルスキルはさらに細分化できるといいます。主なものが「課題設定力」「課題解決力」「コミュニケーション力」です。

    そしてもう一つ、コロナ禍を経て私たちが身に着けるべき力があると続けます。

    森本:「コロナ禍を経験したいま、変化に柔軟に対応できるかどうかという『サバイバル力』が問われてます」

    「キャリアの考え方の中に『同じことを繰り返しやって、成長が鈍化する』という現象があります。成長が鈍化した際、もう1回成長するために必要なこと。それは非連続にキャリアをつくることです。要するに、今までの延長線上ではなく、コンフォートゾーンから抜け出し、全く自分の今までやってきたこととは違うキャリアをつくることがこれから求められると思います」

    ウェビナーで登壇した森本千賀子さん
    ウェビナーで登壇した森本千賀子さん

    「DX人材」に高い需要

    DX分野では直接企業内で直接推進に関わる部門だけでなく、DXを支援するコンサルティングや人材系のビジネスが活況です。背景には日本の生産年齢人口の減少があるようです。

    森本:「2040年には労働人口が1000万人不足するとも言われています。労働人口を女性やシニアの方、外国人労働者らでカバーできず、(日本の産業界は)DXで生産性を上げていく方向に向かっています」

    「しかし、企業でDXを進めようにも人材が不足していることが喫緊の課題となっています。多くの企業でDXが経営戦略に組み込まれて重要となるなかで、DX人材は需要が高いと言われています」

    人手不足数

    人材業界でも新しい動きが活発です。

    森本:「人的資本経営を掲げている企業も多く、これまで大手企業で積極的ではなかった中途採用をする動きも加速しています。女性管理職を強化したい企業も多いです」

    「DXや人材教育に国や地方自治体の行政が強化しようと、さまざまな助成金もあります。DX業界や人材業界は活況になっています」

    自己実現に向けた「副業3.0」時代へ

    森本さんはこれからの副業についても解説しました。

    森本:「今、働き方の選択肢がどんどん増えています。副業や兼業、起業が非常にやりやすい時代。多様な働き方ができる時代とも言えます」

    「個人のキャリアもリモートワークによって時間が生まれ、比較的自分の時間が作りやすくなってきました。またこれからは人生100年時代とも言われ、60歳で定年ではなく、働き続けて収入を確保し、自分自身のキャリアの選択肢をつくる副業が重要になってくると思っています」

    転職のプロが解説 トレンドは「越境転職」「DX人材」「副業3.0」
    BongkarnThanyakij / GettyImages

    森本さんによると、2024年の現在は「副業3.0」の時代

    これまで副業は、単に副収入を得るための「副業1.0」本業に活きるスキルを磨く「副業2.0」と変遷を辿ってきました。そして「副業3.0」は、自身の将来のキャリア実現に向けて取り組む副業で、セルフブランディングやリスキリングに活用できると説きます。

    “副業”が当たり前に

    森本:「会社を辞めるという決断には勇気が必要です。しかし、何かやりたいことがあるならまずは副業からスタートしてみるのがいいでしょう」

    「これからの副業3.0の時代は、自分のやりたいこと(will)の実現に向けて、本業ではなかなか手がつけられないものを副業で実現していく時代が本格的に訪れます。それが2024年のトレンドとなっていて、これからはセルフブランディングやリスキリングの時代へとつながっていきます」

    サードプレイスから生まれるネットワーク

    これまで、非連続的にキャリアを歩みながらサバイバル能力をつけるために、コンフォートゾーンから抜け出すことや副業の活用などを解説した森本さん。

    コンフォートゾーンから抜け出し、副業に挑戦するために最も重要なのは自宅や学校、職場でもない、自分なりの「サードプレイス」を持ち、ネットワークを作ることだと力を込めます。

    森本:「組織の中だけではなく『外での活動』をおすすめしたいです。学びとソーシャル、それから余暇をしっかり楽しめるコミュニティを持つことで、本業とは違うバックグラウンドや価値観を持つ方々と交流できるます。

    「また、自分の存在価値を確認できるサードプレイスを持ちながら、ビジネスパーソンとして最強の武器になる「人脈ネットワーク」を作ることができます。これがより一層、重要な時代になると思います」

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    2024年は“キャリア自律”の年に

    これまで2000人以上の転職支援を行ってきた森本さん。講演の最後には、時代や環境の変化に合わせて継続的に学びつつ、「キャリア自律」することの重要性を説きました。

    森本:「意思を持って行動すれば、人は必ず変わります。これから先、自分のキャリアは自分の意思を持ってつくる。そして自分で選んだ人生を正解にするのは自分次第です」

    「2024年は“キャリア自律”の時代です。自分の意思でキャリアを作る年にしましょう」

    (文・写真:比嘉太一、編集:竹本拓也、デザイン:高木菜々子)