学歴がキャリアに「関係する」と感じているビジネスパーソンが8割に上っていることが分かりました。
社会的信用やステータスアップ、学歴で判断する企業の多さなどが影響しているようです。
年代別では「学歴が必要」と感じている20代が約7割。一方で、40、50代は約6割に止まっていて、20代と比べて、学歴へのこだわりが薄いのが特徴です。
ジョブ型雇用の広まりとともに企業の採用やキャリア形成に「学歴不問」が浸透するなか、当のビジネスパーソンは気にしてしまうという乖離が起きています。その本音と建前をみていきましょう。
調査は就職や転職に関する研究・調査をしている「Job総研」が実施し、2月13日に発表。20〜50代男女のビジネスパーソン計629人から回答を得ました。
調査では学歴とキャリアの関係性の有無とその理由、また学歴が影響する場面や自分以外の相手への学歴意識の有無、学歴社会への価値観などを尋ねました。
学歴とキャリアの関係性の有無について、「関係すると思う派」が全体で80.3%を占める結果になりました。
内訳は「とても関係すると思う」が21.0%、「関係すると思う」は27.7%、「どちらかといえば関係すると思う」は31.6%でした。
理由に関しては「社会的な信用やステータスが上がるから」が55.4%で最多となり、次いで「未だ学歴で判断する企業が多いから」が48.7%、「最終学歴は希望する仕事に影響するから」が36.8%と続きました。
学歴社会の必要性に関して、「必要だと思う派」が66.0%で過半数を占め、内訳は「とても必要だと思う」が8.2%、「必要だと思う」19.2%、「どちらかといえば必要だと思う」は38.6%でした。
年代別の回答では20代が最多で、「必要だと思う派」が73.9%、次いで30代が68.8%、40代が59.5%、50代が57.3%の結果に。年齢を重ねるにつれて、学歴の必要性が薄くなる傾向が浮き彫りとなりました。
意識する相手として「同僚」が71%を占め、次に「上司」は55.2%、「部下」は49.9%と続きました。
反対派「学歴なくても優秀な人はいる」「人柄を大事にして」
学歴社会への賛否を聞くと「賛成派」が66.9%で7割弱を占め、内訳は「とても賛成」12.2%、「賛成」12.9%、「どちらかといえば賛成」41.8%でした。
賛成派の意見としては「人材発掘のための保証になる」「若い時に努力したことを測るバロメータの1つになる」など歓迎する声が上がる一方、反対派の意見として、「学歴がなくても優秀な人はたくさんいる」「学歴と仕事のスキルは異なる」などの意見が上がりました。
■賛成派
学歴は取り組む姿勢や努力を客観的に判断できる材料になると思うので、学歴社会に賛成
勉強以外で能力を発揮できる人もいるので学歴重視社会には反対だが、判断材料にするだけなら賛成
大勢の中から人材を発掘するためには、最低限度のレベルの保証のようなものにもなるのは賛成
学歴はその人が若い時にどれだけ努力したか、苦労をしてきたかを測るバロメーターの1つ
特技やコミュニケーション力に自信がない人は、学歴をアピール要素にできるのはありがたい
■反対派
人手不足もあり、企業目線で考えると学歴での判断は一定理解できますが、個人的には反対します
私は高卒で、周りが社会人になるまで別のことを頑張っていたため、学歴で判断される社会に反対
学歴がなくても優秀な方はいるので、学歴社会には反対です。人柄が大事にされた方がいいと思います
努力の証として意識されるのは納得。だが学歴を重視しすぎて才能の見逃しに繋がるのであれば反対
学歴と仕事でのスキルは少し異なると思うので、学歴社会という”社会”になることに賛成できません
Job総研室⻑の堀雅一さんは学歴社会の必要性を20代が最も感じていることに関して、「今後も日本における学歴社会の継続及び更なる浸透も予測できる」と強調します。
調査の結果から、学歴とキャリアの関連性は高く、学歴を意識する相手が同僚であることからも、就職活動時には競争力が必要と捉えられていることが見受けられます。
年代が上がるにつれて学歴意識が低くなる傾向には、就職活動時期が”学歴フィルター”という言葉の定着前後か否かが関係していると考えられますが、それ以上に影響を及ぼしているのは”社会人歴”であると考えられます。
経験を積むほど、キャリアを築く上で学歴以外の要素の必要性を感じていくことができるため、学歴へのこだわりも薄くなっていくと推察することができます。
40、50代の学歴社会への価値観が新しいものになり、今後の日本社会の風潮が変わっていく可能性も読み取れますが、学歴社会の必要性を20代が最も感じ、価値観を受け入れている状態を踏まえると、今後も日本における学歴社会の継続及び更なる浸透も予測できる調査結果と言えそうです。
(取材:鍬崎拓海、文・編集:比嘉太一、バナーデザイン:franckreporter / GettyImages)