IT職種転職者の7割が年収増 セキュリティエンジニアは67万円 

IT職種転職者の7割が年収増 セキュリティエンジニアは67万円 

    転職してSEやインフラ、Webエンジニアなどの技術職(以下、IT職種)の平均年収は477万円で、転職した人全体の平均よりも26万円多いことが分かりました。また、転職前後の年収について、上がった人の割合は全体が約6割だったのに対し、IT職種はそれを上回る約7割となりました。

    DXやクラウド化が進むなか、人材獲得競争が激化している様子が伺えます。

    目次

    IT転職後は477万円、平均を26万円上回る

    転職サービスdodaを運営するパーソルキャリアは2023年1〜6月、dodaのエージェントサービスを利用して転職した個人を対象に転職前の平均年収と決定時の年収などを調査。2024年2月8日に「IT職種転職前後の平均年収レポート」を発表しました。

    IT職種における転職前後の実態調査では、転職をした個人全体の平均決定年収は451万円だったのに対し、IT職種に転職した人の平均決定年収は477万円となりました。

    また、転職者の転職して年収が上がった人の割合は全体で約6割だったのに対し、IT職種は約7割とそれを上回りました。

    IT職種転職者の7割が年収増  セキュリティエンジニアは67万円 
    出所:doda「IT職種の転職前後の平均年収レポート」

    IT職種が転職によって年収が上がる背景についてdodaは、IT関連の人材不足で採用難度が高まったため、給与水準を見直し改善することで離職防止や採用力強化を狙う企業が増えたため、とみています。

    dodaの転職求人倍率レポートによると、実際にIT職種は2022年後半から10倍を上回り、2023年12月には過去最高の13倍を超えたといいます。

    年収アップ幅1位はセキュリティエンジニア、額ではITコンサル

    ポジション別で見ると、IT職種経験者が転職してセキュリティエンジニアになった場合、転職前の490万円から557万円にアップ。増加幅は67万円で他職種と比べて最大となりました。

    2位のITコンサルタントは520万円から580万円で64万円増、3位のデータサイエンティストは506万円から556万円で50万円増でした。

    上位に入った3職種について、doda編集長の加々美祐介氏は次のように理由を解説しています。

    セキュリティエンジニア

    サイバー攻撃やシステム障害による情報漏えいなどを未然に防げるよう、セキュリティシステムの提案や設計・構築を行うポジション。DX推進やIoT化などの技術革新により、企業では仮想サーバーやクラウドで情報を管理するケースが増加し、サイバーリスクに晒される可能性も高まりました。そのため、どのようにセキュリティレベルを上げるか、対策を講じるべきかを考える人材の需要が伸びています。しかし経験者は少なく、企業は採用競争力を高めるべく転職時の年収を引き上げています。結果、増加幅が最も大きくなったと考えられます。


    IT職種転職者の7割が年収増  セキュリティエンジニアは67万円

    ITコンサルタント

    ITシステムの導入、開発、リニューアルなどIT領域全般に関するコンサルティングを担うポジション。昨今は企業からコンサルティング会社へのDX推進に関する相談が増えているため、コンサルティング会社は即戦力となる人材を採用するべく、年収を引き上げていることが要因とみています。なお、転職決定時の額面では1位(584万円)でした。これは、コンサルがプロジェクトの上流工程を担当すること、さらに現場経験を数年積んでから転職することが多く、もともとの年収水準が高いためでしょう。


    データサイエンティスト

    ビックデータの解析をすることで、経営に役立つ情報を発見し課題解決に貢献する職種です。こちらも、「業務の効率化や顧客体験価値を高めるヒントを得るべく、IoT化により蓄積されたデータを生かしたい企業が増えた」ことが年収増加の要因になっているようです。


    転職前の職種もセキュリティエンジニアが1位に

    転職前の職種から見た決定時の年収の増加幅を見ると、同じく1位はセキュリティエンジニアでした。増加幅は64万円。2位はデータサイエンティストの63万円、3位はインフラエンジニアの44万円と続きました。

    システムのネットワークやサーバー、データベースといったインフラ構築や管理を担うインフラエンジニアが入ったことについて加々美氏は、リモートワークの浸透によりデータをクラウド化する企業が増えたため、(クラウドサービスとして)シェアの高いAWSやAzureを扱えるエンジニアのニーズが高まったことを要因に挙げています。

    IT職種転職者の7割が年収増  セキュリティエンジニアは67万円
    metamorworks / GettyImages

    IT人材の採用難易度が極めて高い状況が続いています。調査からは、企業が採用成功率向上のために年収を引き上げている傾向があることが読み取れます。

    加々美氏は「もちろん給与は、はたらく場を選ぶうえで重要なポイントの1つですが、『その転職を通して何が得られるか』に立ち返ることも大切です。長期的なキャリアプランを見据えた上で今回の転職で重視すべきポイントは何かを考え、選択することで、自身が本当に望む「はたらく」を叶えることに繋がるのではないでしょうか」とコメントしています。

    (文:鍬崎拓海、編集:竹本拓也、バナータイトル:TU IS / GettyImages)