ガムシャラに努力しているにもかかわらず、まるで結果が出ない時。何から手をつけたらいいのか分からず、八方塞がりになっている時。とある一言のアドバイスで、人生が激変することがある。
共に分岐点に立ち、時に伴走者して人生を導いてくれる存在——「メンター」がいることで、自分1人ではどうしようもない困難を打破し、自分の視座以上の景色にたどり着いた経験を持つ人も少なくないだろう。
今年4月、コロナ禍の真っ只中でインターネット通販アプリ『KAUCHE(カウシェ)』を運営するX Asiaを起業した門奈剣平さんも、その1人である。
門奈さんは慶應義塾大学に在学中、篠塚孝哉氏が創業した宿泊予約サービス『Relux(リラックス)』を運営するLoco Partners(ロコ・パートナーズ)へインターンとして入社している。まだ自社サービスすらない創業期で、篠塚氏に次ぐ2人目のメンバーだった。
Loco PartnersではWebディレクターからキャリアをスタートし、社員になった後は中国子会社の代表を務めるまでに成長。今度は自身が経営者として挑戦するにあたり、「篠塚さんとひたすらやり合ってきた8年間の経験が、経営者人生を歩み始めた今、すごく生きています」と語る。
門奈さんにとってのスーパーボス・篠塚孝哉氏とのエピソードから、キャリアの早い段階から実力を磨く術を探っていく。
門奈さんがLoco Partnersの門を叩いたのは、大学1年次のこと。受講した大学の講義で、「大学の中に閉じこもっていてはいけない」と告げられたことが長期インターンに参加するきっかけになった。
「入学して早々、教授に『世界に飛び出すか、今すぐにスタートアップ企業でインターンをしなさい』と言われたんです。在学していた慶應SFCは、いわゆる日本の大学とは違ったユニークな校風があります。そうしたアドバイスを複数の教授から受けたことで、Loco Partnersで長期インターンを始めました」
Loco Partnersをインターン先に選んだのは、「たまたま」とのこと。先輩に篠塚氏を紹介され、「ソーシャルメディアや旅行に関する事業を展開している」と聞き、その場で働くことを決めた。
「初出社日、事務所についても篠塚さん以外のメンバーがなかなか出社しません。『他の方はいつ出社されますか?』と聞いたら、『メンバーは私たちだけだよ』と。その時に初めて、自分が2人目のメンバーだと知りました。『いやいや、聞いてないよ』と(笑)。
でも振り返ってみれば、だからこそ濃密な時間を過ごすことができたと思います。何をするにも分からないことだらけで、いったい何から学び始めればいいのか見当もつかない。そんな状況下で、どんどん仕事が飛んでくるのです。当時の心境を言葉にするなら、“暗闇の中でボクシング選手にボディブローを喰らい続けるような状態”でした」
2人で立ち上げた組織は、門奈さんが退職する際には200人規模になっていた。複数の投資シリーズを経験し、KDDIグループにもジョイン。事業立ち上げ、売却、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション / M&A後の効果を最大化するためのプロセス)と、篠塚氏と“同じ空気”を8年間吸い続けた。