【CEO】人生を変える「メンター」の見つけ方

【CEO】人生を変える「メンター」の見つけ方

目次

  • ボスと過ごした怒涛の8年間
  • 困難は「祭りのように楽しむ」
  • 学ぶべきは「はい上がる力」
  • 出会い全てを学びに変える

ガムシャラに努力しているにもかかわらず、まるで結果が出ない時。何から手をつけたらいいのか分からず、八方塞がりになっている時。とある一言のアドバイスで、人生が激変することがある。


共に分岐点に立ち、時に伴走者して人生を導いてくれる存在——「メンター」がいることで、自分1人ではどうしようもない困難を打破し、自分の視座以上の景色にたどり着いた経験を持つ人も少なくないだろう。


今年4月、コロナ禍の真っ只中でインターネット通販アプリ『KAUCHE(カウシェ)』を運営するX Asiaを起業した門奈剣平さんも、その1人である。


門奈さんは慶應義塾大学に在学中、篠塚孝哉氏が創業した宿泊予約サービス『Relux(リラックス)』を運営するLoco Partners(ロコ・パートナーズ)へインターンとして入社している。まだ自社サービスすらない創業期で、篠塚氏に次ぐ2人目のメンバーだった。

門奈剣平さんの経歴

Loco PartnersではWebディレクターからキャリアをスタートし、社員になった後は中国子会社の代表を務めるまでに成長。今度は自身が経営者として挑戦するにあたり、「篠塚さんとひたすらやり合ってきた8年間の経験が、経営者人生を歩み始めた今、すごく生きています」と語る。


門奈さんにとってのスーパーボス・篠塚孝哉氏とのエピソードから、キャリアの早い段階から実力を磨く術を探っていく。


ボスと過ごした怒涛の8年間

門奈剣平さんと篠塚孝哉さん
Loco Partnersにいた当時、篠塚孝哉氏(写真左)と撮ったツーショット写真

門奈さんがLoco Partnersの門を叩いたのは、大学1年次のこと。受講した大学の講義で、「大学の中に閉じこもっていてはいけない」と告げられたことが長期インターンに参加するきっかけになった。


「入学して早々、教授に『世界に飛び出すか、今すぐにスタートアップ企業でインターンをしなさい』と言われたんです。在学していた慶應SFCは、いわゆる日本の大学とは違ったユニークな校風があります。そうしたアドバイスを複数の教授から受けたことで、Loco Partnersで長期インターンを始めました」


Loco Partnersをインターン先に選んだのは、「たまたま」とのこと。先輩に篠塚氏を紹介され、「ソーシャルメディアや旅行に関する事業を展開している」と聞き、その場で働くことを決めた。


「初出社日、事務所についても篠塚さん以外のメンバーがなかなか出社しません。『他の方はいつ出社されますか?』と聞いたら、『メンバーは私たちだけだよ』と。その時に初めて、自分が2人目のメンバーだと知りました。『いやいや、聞いてないよ』と(笑)。


でも振り返ってみれば、だからこそ濃密な時間を過ごすことができたと思います。何をするにも分からないことだらけで、いったい何から学び始めればいいのか見当もつかない。そんな状況下で、どんどん仕事が飛んでくるのです。当時の心境を言葉にするなら、“暗闇の中でボクシング選手にボディブローを喰らい続けるような状態”でした」

門奈剣平さん エピソード1

2人で立ち上げた組織は、門奈さんが退職する際には200人規模になっていた。複数の投資シリーズを経験し、KDDIグループにもジョイン。事業立ち上げ、売却、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション / M&A後の効果を最大化するためのプロセス)と、篠塚氏と“同じ空気”を8年間吸い続けた。


困難は「祭りのように楽しむ」


門奈さんに篠塚氏からの教えを尋ねると、口元に手を当て、過去を噛み締めるかのようにゆっくりと口を開いた。


「彼にはたくさんのことを教わりました。仕事がうまくいかず、何もかも投げ出したくなった時に、『仕事にも人生にも波があり、うまくいかない時も当然ある。その時に堪えることができれば、また必ず良い波がやってくる』と教えてくれたこと。


Loco Partnersに入社するか、大企業に入社するかで迷っている時に、『選択それ自体に正解を求めてはならない。選択したことを運用と改善によって正解にすることが大切だ』と教えてくれたこと……。数え出したらキリがありません」


数ある学びの中でも、「強いて一つを挙げるなら、マインドセットです」と門奈さんは言う。今、自分が経営者になったことで、篠塚氏の凄みをヒシヒシと感じている。


正式にLoco Partnersへ入社した1年目、門奈さんは中国市場の開拓を任されていた。しかし、アポイントを取った企業のほとんどに契約を断られ、組織の立ち上げにも苦心していたそうだ。


「何もかもうまくいかず、1人、中国のホテルで泣いていました」


そんな時、支えになったのは、篠塚氏の困難を楽しむマインドセットだったそうだ。


「会社を経営していると、何度も困難にぶつかります。起業して間もない今は特にそうです。そうした困難を乗り越えるには、心が折れそうになったり、体が疲弊したり、当然苦労が伴いますよね。でも篠塚さんはそれを明るいものだと捉え、まるでお祭りのように楽しむのです」

門奈剣平さん エピソード2

「Reluxの時も本当に大変でしたが、起業家はみな、そうした経験をしてきたのだなと。社会に新しい価値を生み出そうと自ら起業した今、あの経験は、僕の心の強さになっています」


X Asiaが大切にしている価値観“Enjoy Working”には、篠塚氏の教えが少なからず影響しているそうだ。


「仕事を楽しむ力を持って初めて、困難を乗り越える心の持ちよう、不利な状況を打破する運を手に入れられるのだと思っています」


苦労時代を思い出し、今につながる当時のエピソードを振り返る門奈さんの目には、笑顔ながら涙が光っていた。


学ぶべきは「はい上がる力」


メンターを持つ効能として、しばしば「知見の共有」が挙げられる。しかし門奈さんは、「それはメリットの一つですが、本質ではありません」と語る。


メンターがなぜ重要なのか。それは、弱い自分に正面から向き合えるからだ。


人は1人だと弱く、現実から目を背けてしまう生き物である。メンターは、弱った自分を孤独からすくい上げ、はい上がって前進する道筋を示してくれる。


「起業家として成功することを目指す上で、絶望や困難から何度だってはい上がる胆力が必要です。自らそれを培うよりも、早い段階でメンターと呼べる存在を見つけることをお薦めします」


「将来起業を考えているのなら、起業家のそばで学ぶことが近道になる」というのが門奈さんの考えだ。起業を一つのジョブ(職務)と捉え、それを実行するビジネスパーソンのそばにピタリとつき、起業とは何か、CEOになるとはどういうことなのかを、自分の頭で理解できるまで学ぶべきだと言う。

門奈剣平さんの過去写真
篠塚氏とは、一時期、文字通り「寝食を共にしていた」

「これは、今すぐ実践できるフィールドワークです。特にアーリーステージの起業家のそばにいることができれば、事業の立ち上げからグロースまでを、肌触りを持って経験できる可能性があります。


僕は篠塚さんの下で起業家修業をしたことで、自分1人では出せないスピードの成長ができたと思っています」


出会い全てを学びに変える


「優れたメンターを見つけるには、どうしたらいいですか?」と尋ねると、「そんなに難しく考える必要はないですよ」と門奈さん。出会う人、一人一人に真摯に向き合うことこそが、メンターに出会うコツだと語る。


「篠塚さんが将来成功しそうだとか、そうした打算的な考えで時間を共にしていたわけではありません。何者でもない大学生だった僕にチャンスをくれた彼に、できる限りの努力で報いたいとガムシャラになっていたら、結果的に“良い関係性”になっていたというのが実際のところです。


また、メンターは必ず1人であることもないです。出会う全ての人を『一度きりの人生で巡り合った大切な存在』だと捉え、真摯に付き合っていけば、きっと素晴らしい学びが得られるはず。こうして取材していただいているこの時間も、僕にとって学びです」


門奈さんが経営するX Asiaに、篠塚氏は取締役として参画するそうだ。打算なき良い関係性が今後も続いてくことに関して「また“ドンパチ”できそうです」と笑う。


「今回彼に非常勤役員の形で入ってもらったので、再び一緒にスタートアップシーンで新たな挑戦ができると、とてもワクワクしています。会社では、今度は僕が次の世代のメンティーをして、機会を提供しまくっていけたら嬉しいです」


取材・文:オバラ ミツフミ、編集:伊藤健吾、デザイン:堤 香菜、撮影:竹井晴俊

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