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【解説】現役博報堂社員が語る、マーケティングプランナーの仕事術

【解説】現役博報堂社員が語る、マーケティングプランナーの仕事術

  • マーケティングプランナー

この記事に登場するロールモデル

目次

  • 商品よりビジョンに共感する時代
  • 世の中を見るプロになれ
  • 尖った専門性と絶大な信頼

「CMをつくる仕事」「広告のキャッチコピーを書く仕事」といった華やかなイメージから、就活生に根強い人気を誇る広告代理店の仕事。



とはいえ、現在の広告代理店で重視されるのは広告を制作したり、配信したりすることだけではない。



クライアントの製品・サービスが売れる仕組みを考えたり、時にはその会社の存在意義さえをも再定義するようなマーケティングプラニングの仕事の重要性が高まっている。



大手広告代理店・博報堂で働く喜田村夏希さんは、「マーケティングプランナー」として活躍する。



製薬会社やコンサルティングファームを経て現職に至る彼女は、「マーケティングプランナーの仕事は時代とともに変化する」と語る。



なぜ、クライアント企業にとって部外者である広告代理店が、マーケティングに携わるのか。転職を経験してきたからこそ知っている、マーケティングプランナーという仕事の本質をひもといていく。

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商品よりビジョンに共感する時代



—— 喜田村さんにとって、マーケティングプランナーとはどのような仕事でしょうか。



「価値を生活者に届ける仕組みづくり」をする仕事です。



広告会社といえば、テレビCMや新聞広告など、消費者の目に触れる部分のみを担うイメージを持たれがちですが、実際は異なります。



経営者と肩を並べて企業全体のビジョンの策定に携わることもあれば、商品と消費者の接点である広告の制作に携わることもあります。



誰に、どんな価値を、どのような方法で届けるのか——。価値の創出から伝達まで、常にクライアントに寄り添い続けるのが、私たちの仕事です。

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Photo : iStock / takasuu

—— 具体的にはどのような業務を行っているのでしょうか。



現在は、大手化粧品会社や外資系ヘルスケア企業、バイオベンチャーなどを担当し、ビジョンの策定や事業開発支援、新商品開発支援、テレビCMやSNSなどの広告物の制作を行っています。



以前の広告といえば、お茶の間で流れるテレビCMのような、いわゆるマス広告のみが主流でした。



しかし、インターネット技術の進展により、広告はデジタル領域に進出しました。



インターネット記事やSNSへの広告掲載が可能になるなど、広告のあり方が以前より多様になったのです。



これは企業にとって、選択の幅が広がったと同時に、その中から最適な選択肢を選び取る必要性が生じたことを意味します。



いま一度、商品や企業それぞれが持つ価値を、どのように伝達すべきか、精査することが求められているのです。



価値を、事業や商品・サービスに、さらに広告物に落とし込むまでの一連の流れが、私たちマーケティングプランナーの仕事といえるでしょう。



—— 広告のあり方の変化は、マーケティングプランナーの業務にどのような変化をもたらしましたか?



以前よりも、クライアント企業の経営層の方々にアプローチし、企業活動の礎となる企業ビジョンの策定にまで関与する場面が多くなりました。



彼らにとって、広告会社のマーケティングプランナーはあくまで外部の人間です。



しかし、第三者である私たちが、企業の根幹をなすビジョンの策定に介入することには、大きな意義があると考えています。



—— それは、なぜでしょうか。



喜田村:内部の人たちがユニークだと気づいていない“当たり前”のことが、世の中ではユニークで、独自価値となり得ることが多くあるからです。



インターネット技術の進展は、広告の多様化だけでなく、好き嫌いによって細分化された“無数のお茶の間”を生み出しました。



以前のように、みんなが同じテレビ番組を視聴する時代は終わり、自分の嗜好に合った情報だけを自由に選び取れるようになっています。



もはや、一様の広告で消費者全体に価値伝達することは、不可能な時代なのです。



漠然と全体に訴求するのではなく、企業のユニークな考えや描く未来に共感してくれるファンを見出し、その人たちをターゲットとして価値伝達する方が効率的といえるでしょう。



ただ、より多くの人々に企業のファンになってもらうためには、明確な企業ビジョンを体現した商品やサービス、そしてそれらを生み出す社員が不可欠です。

そこで重要となるのが、ビジョン策定のプロセスです。



ときにはワークショップも用いて、企業の目指す世界や提供したい価値、ユニークネスを、社員全員で見直していく。



さまざまな部署や年齢の方々を巻き込み、一つ一つ確認作業をする過程こそが、ビジョンの浸透した事業や商品・サービスづくりのために不可欠です。



広告会社がこのプロセスに関わることで、“外”の視点を客観的に取り入れながら、ファシリテーターとして社内のより多くの人を巻き込み、企業の持つユニークネスが詰まったビジョンの策定と、それに対する社員の深い理解を導くことができるのです。



世の中を見るプロになれ

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Photo : iStock/Dilok Klaisataporn

—— 2度の転職を経験された喜田村さんから見て、マーケティングプランナーに似ている仕事はありますか?



私の前職である経営コンサルタントと、仕事内容が似ている部分があります。



経営層と話し合いながら、企業の価値観を確かなものにしていく。濃淡は違えど、どちらの職種もこの過程に携わっています。



—— 喜田村さんが考える、コンサルタントとマーケティングプランナーとの決定的な違いを教えてください。



目指すべきゴールの違いです。



経営コンサルティングファームの場合、経営層とともに、中期経営計画などによって企業の進むべき道筋を描き出すのが主な仕事です。



企業の進む方角を正しく見極めることがある種のゴールともいえるでしょう。



一方、マーケティングプランナーはあくまで「価値を消費者へ伝達する」のが最終目標です。



経営層とともに考え抜いた企業ビジョン、目指したい世界を、どのような方法で実現していくべきか、その具体的なプロセスを、手法問わず生み出していくところに面白さがあります。



企業のファンづくりが求められる今、共感を生む企業ビジョンはもちろん大切です。



しかし、マーケティングプランナーは、ビジョン策定だけでなく、その具現化こそがゴールなんです。



—— クライアント企業の中にも「マーケティング」を担う部署は存在すると思います。マーケティングプランナーが、企業の外側にいるからこそできることがあれば、教えてください。



外部のマーケティングプランナーは、その企業の顧客だけではなく、市場全体、世の中全体をフラットに見ることができます。



クライアント企業の中にいるマーケター、いわゆる「インハウス・マーケター」は、一般的に特定の商品やブランドを担当し、マーケティング戦略を練ります。



つまり、自社の商品やサービス、顧客の動向を追うプロです。



しかし、自社商品やサービスを知りすぎているが故に、市場に潜む様々な可能性や他業界の動向を見逃してしまうことがあります。



そこで求められるのが、広告会社に所属する私のような、いわゆる「支援系のマーケター」です。



私たちは常にインハウスのマーケターと違う視点に立ち続け、内部の人たちだけでは気づくことのできない、生活者の変化をフォローしています。



これにより、過去の顧客調査のみにとらわれることなく、今の市場動向から未来のニーズを見据えた商品・サービス設計も可能になります。



尖った専門性と絶大な信頼

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Photo : iStock / Dilok Klaisataporn

—— マーケティングプランナーとして活躍するために、必要なことを教えてください。



自分だけの専門分野、得意領域を持っておくことです。



マーケティングプランナーには、マーケティングスキルはもちろんのこと、デジタルやテクノロジー、ブランディング、経営知識など、多岐にわたる領域に精通することが求められます。



いずれも基礎知識を持っておくことは必要ですが、全員がそのすべてを専門レベルまで引き上げることはほぼ不可能です。



だからこそ、尖った専門性や得意領域を一人一人が持っていれば、それを軸として仕事の機会や幅は大きく広がっていきます。



例えば、あるプロジェクトが立ち上がったとき、誰をアサインするかを決める判断基準は、「プロジェクトをいかに前進させてくれるか」です。



プロジェクトの内容を見て、「この仕事ならこの人だ」と瞬間的に名前が思い浮かぶくらいになれば、自然と仕事が集まってきます。



けれども、入社当時から高い専門性を持つ人は、当然ながらそう多くないでしょう。



まずは、「この人ならなんとかしてくれるだろう」という絶大な信頼を得にいくことも1つの方法です。



幅広い知見や社会を見る独自の視点、柔軟な思考力は、“専門性”ではなくとも、大きな武器になりうるのです。



—— 最後に、マーケティングプランナーに向いている人の特徴について、教えてください。



ものごとに対して“違和感”を感じ取れる人です。



情報を所与のものとせず、これって本当にそうなんだろうか、それで正しいんだろうかと考え、新たな機会や解を見つけ出すことのできる人は、この仕事を楽しめると思います。



例えばとてもシンプルな例ですが、普段からテレビCMを多く出稿しているクライアント企業が、Z世代向けの新商品ローンチ時に、テレビCMメインでの出稿を希望していたとします。



しかし、それは必ずしも適切な施策とはいえません。



なぜなら、Z世代はテレビよりもYouTubeやInstagramなどを観ている時間のほうが長いからです。



クライアント企業の意向とは異なっても、マーケティングプランナーとして違和感を覚えるならば、自身の思う別の解を導き出し、それをクライアント企業にしっかりと伝えるべきだと思っています。



私たちの仕事は、あくまで「価値を正しく伝達すること」だからです。



常に第三者の視点を忘れず、より良い解があると思うならば、マーケティングのプロとしてそう伝える。



このような覚悟を持てる人たちに、マーケティングプランナーの仕事は向いていると思います。



取材・佐藤留美、取材・構成:井上茉優、編集:オバラミツフミ、撮影:喜田村夏希(本人提供)

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