本を読む。ドラマを見る。それも就きたい仕事の名前を知る方法

本を読む。ドラマを見る。それも就きたい仕事の名前を知る方法


    この記事に登場するロールモデル

    「私はこの職種に就きたい」と熱く語る就活生が、職種とやりたいことにズレが生じることもしばしば。安易に職種で自分のやりたいことを規定しすぎてしまうと、内定をもらって働き始めたときには思っていた仕事から遠く離れてしまうこともあります。まずは自分の就きたい仕事について、どう解像度を上げるかというのも大事な就活の第一歩。

    この連載では、学生向けのキャリア支援講師をする山本梨央さんが、就活生に宛ててアドバイスをつづります。第12回は「就きたい仕事の名前を知る」。漠然と「こういう仕事に就きたい」と思っているけれど、言葉に出した時にまだ違和感がある。そんな方にとって、本当にやりたいことの言語化のヒントが見つかるかもしれません。

    就活生への手紙 #12 “就きたい仕事” 迷子な人へ

    目次

    就きたい仕事の「名前」がわからない

    就活生や新卒で働き始めた人たちの「キャリアの悩み」を聞いていると、ときどき「おや?」と思うことがあります。それは、彼らが目に見えている範囲での肩書や職種名しか知らない中で、「自分はこの職種に就きたいはずだ」と言い聞かせているように見えること。やりたいという仕事の内容と、職種名にギャップがあることが多々あるのです。

    きっと、就きたい仕事の名前がはっきりしない状態というのは不安でしょう。だから、無理やり知っている職種に当てはめてしまう。当てはまると、なんだかその職種に就かなければいけないという焦りも芽生えてしまう。そんなスパイラルをよく見かけます。

    就活生への手紙 #12 “就きたい仕事” 迷子な人へ
    gettyimages / z_wei

    しかし、社会に出てみて思うのは、就活中や新卒1〜2年目くらいで知っていた職種名と、実際の仕事内容に乖離があるケースも多いということ。たとえば、こんなケースがありました。

    「ある雑誌に憧れて出版社に入ってみたものの、実際に手を動かして企画や編集を行っていたのは、別の編集プロダクション(つまり別会社)だった」

    「広告のクリエイターを目指して広告代理店に入ってみたけれど、アートディレクターになったらなかなかデザインをする機会がなく、現場で実際に物作りをするのはデザイナーだった」

    こういう悩みが、実は本当に多いのです。

    「本当の職種名」は隠されているわけではない

    では、なぜ実際の仕事内容と職種名にギャップが生まれてしまうのでしょうか?就活生の目線になれば、誰かがだましたり、隠したりしているのでは?と不審がられてしまっても仕方ないと思います。

    しかし、これは悪意を持って隠されているわけではありません。BtoBで実際に仕事で関わっている人同士では当たり前のことでも、BtoCで消費者の手元に届くまでには簡略化されて、関わった全員の名前、全社の名前が載っていなかったりするだけ、ということなのです。

    探そうと思えば、どんな人たちが関わっているのか、業界紙を読んだりすることで紐解けることもあります。

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    gettyimages / Wako Megumi

    本を読んだりドラマを見たり。やりたい仕事を言語化するヒント

    まずは自分で職種を決めつけてしまう前に、やりたい仕事の内容を説明できるようになる必要があります。では、どうやって言語化していったらいいでしょう?どう知るのがよいのでしょう?

    おすすめは、本を読むこと。これは、あなたが憧れている業界の著名人が出している自叙伝やエッセーなどでもいいですし、その業界を舞台にした小説でも構いません。OBOG訪問では、業界全体、仕事全体のことを聞き切るには絶対的に時間が足りないでしょう。それを補うことができるのが、本なのではないかと思います。

    たとえそれがフィクションだとしても、まずはぜひ「業界のことを知る」と思って手にとってみることをおすすめします。これまでに何人かの小説家の方とお話する機会がありましたが、自分が働いたことのない職種について書くときには、徹底して取材をしたり、現場に足を運んだりしている姿勢に感銘を受けました。

    一人の就活生の立場からは入り込めないところまで、代わりに取材をしてくれた人が、わかりやすく仕事について書いてくれている。そう考えると、本だけでなくドラマやドキュメンタリー映像も十分参考になると思います。

    小説を読んだりドラマを見たり、というと遊んでいるようにも思えるかもしれませんが、まずは視野を広げるためという目的で触れてみるのもよいでしょう。

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    gettyimages / Worawee Meepian

    「やたら顔の広い先輩」に相談してみる

    「私のやりたい仕事はこういうことかも」というのが見えてきたら、思いつく限りで一番顔の広い先輩に相談をしてみるのもよいかもしれません。顔の広い人というのは、幅広く仕事をしているというだけではなく、なんだかいろんな飲み会に顔を出している、いろんな業界に知り合いがいそう、というくらいでよいです。SNSで見ていると、そういう人っていませんか?

    なぜそういう「顔の広い先輩」に相談してみるのがよいかというと、仕事であろうと、飲み会であろうと、いろんな「職種」の人の話を聞いている可能性が高いから。自分のやってみたい仕事内容を説明できるようになったら、そういう大人に聞いてもらいましょう。できれば、何人かに相談してみてもよいかもしれません。すると「自分のやりたい仕事を職種名にするならこれなのかな」というのを、教えてもらえる機会が増えるはずです。

    「私なんかが誘っていいのかな」と遠慮したくなる気持ちもわかります。けれど、就活中で迷っているとなれば話を聞いてくれる人は案外多いもの。勇気を出して、ぜひ聞いてみましょう。

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    gettyimages / recep-bg

    迷ったら、職種は絞り込まなくてもよい

    職種の方向性が見えてきただけでも、検索できる情報が格段に広がるし、就職活動においてどんな業界研究をすべきか、解像度解像度がとても上がっているはずです。

    だんだんと自分がやりたいことが見えてきたとして、「どちらも捨て難いな」と迷ってしまうこともあります。それは、まだその職に就いたことがないのだから仕方ないこと。まだ就活中なのであれば、無理に絞り込みすぎずにどちらの可能性も欲張って探ってみてもよいのではないでしょうか。

    社会に出て、実際に働いてみてから「自分のやりたい仕事はこっちだったかも」と気づくことは大いにあります。働きながら転職活動を視野に入れて、より自分のやりたい仕事にチューニングしていくことだって大事なキャリアプランの作り方。

    私の大好きな翻訳家は、編集などの仕事をしていた方でしたが、本格的に翻訳の仕事をし始めたのは55歳とおっしゃっていました。「こういう仕事に就いてみたい」という気持ちは、新卒だけでなく、何歳になっても諦めずに持ち続けていいものだと思います。

    就活の間は、その「仕事の探し方」のヒントを得ることこそが大事。すぐにやりたいことが見つからなくても「探し方のコツがつかめてきた」だけで、大きな一歩を踏み出していると言えるでしょう。

    就活生への手紙 #12 “就きたい仕事” 迷子な人へ
    gettyimages / baona

    (文: 山本梨央、デザイン:高木菜々子、編集:筒井智子)