JobPicks編集部の学生インターンが、就職活動のリアルな体験や等身大の思いをつづる「就活生日記」。今回は、X(旧Twitter)のDM(ダイレクトメッセージ)に送られてきた「就活相談に乗りますよ」というメッセージから始まった、見知らぬ男性とのやりとり。当初は「心強い」と感じて、オンラインで話しましたが…。就活生を狙ったエージェント勧誘や詐欺について考えます。
JobPicks編集部の学生インターンが、就職活動のリアルな体験や等身大の思いをつづる「就活生日記」。今回は、X(旧Twitter)のDM(ダイレクトメッセージ)に送られてきた「就活相談に乗りますよ」というメッセージから始まった、見知らぬ男性とのやりとり。当初は「心強い」と感じて、オンラインで話しましたが…。就活生を狙ったエージェント勧誘や詐欺について考えます。
Twitterの就活垢にハマっていた頃のことです。就活を始めたばかりの当時、何から手をつければいいか分からず、不安な気持ちでいっぱいでした。
そのため、初めはとにかく情報を集めるために、フォローしたタイムラインの投稿を見ることが多かったです。それが、だんだん自分宛にメッセージが来るようになり、DM(ダイレクトメッセージ)も見るようになりました。
就活垢のプロフィールには、「25卒」や志望業界など情報を載せている人がほとんどで、私も真似て記載していました。そう書いてからというもの、ダイレクトメッセージが次々に届くようになりました。
「就活の相談に乗りますよ」「おすすめのエージェント紹介します」「同じ25卒なのですが、一緒に自己分析しませんか」
様々なダイレクトメッセージが送られてきます。毎日たくさんのメッセージを読んでいると、少しうんざりしました。
そんな時に何気なく開いたメッセージに目が止まりました。
「私も同じような業界を志望していました。よければ相談に乗りますよ! 今は大学4年生で、部活と両立しながら就活していました...」
自分の置かれている状況と重ねて親近感を抱かせるメッセージで、なんだか心強そうな方が出てきたと思いました。私は就活の不安な気持ちを少しでも無くそうと、DMでのやりとりから、1on1で話をする約束をしました。
1on1の当日まではDMで「何が不安なのか」「就活の軸は何なのか」「就活の状況はどうなのか」といったことを相手から聞かれました。
相手は自分について「どういう人かnote(投稿サイト)に書いているので、よければ見てください」と言います。
勧められたnoteをみると、部活をしているような若い男性の写真が出てきました。そこには「部活と両立しながら就活を進めた方法」「就活するために大事なマインド」といったテーマで記事を書いていました。
こうしたやりとりや記事から、私の最初の印象は「怪しい人ではなさそう」というものでした。
1on1の当日になって、「就活の参考になる話を聞けるかな」と期待と緊張をしながら、Zoomに入りました。事前にチェックしていたnoteの写真の男性が画面越しに出てきました。
男性は、事前にプレゼン資料を用意していました。データや体験談を交えた就活の振り返りで、スライドは30枚以上。時間をかけて、かなり作り込まれた印象を持ちます。
ただ、話を聞いているうちに、だんだんと怪しい雰囲気になっていきました。
話のメインが、彼自身の就活体験談ではなく、本人が利用していたという就活エージェントの紹介だったからです。
私は以前、エージェントで高額の費用を払って詐欺被害にあったという就活生の話題をウェブニュースで読んでいました。
もしかして、これってそうなんじゃ......。段々と怖くなってきましたが、途中で抜けるのは申し訳ないと思い、説明を最後まで聞きました。
そうして我慢して聞いていたのですが、いつの間にか手が震えていました。
思っていたのと違う。早く、このオンラインから抜けたい.......。
不安に駆られるなか、男性はこう迫ってきます。
「このエージェントに入りますよね」
「チャットグループに入れば雰囲気がわかると思うので、入ってください」
「とりあえず、画面のQRコードを読み込んでLINEを追加してください」
私が退出するでもなく、応じるでもなく戸惑っていると、相手は言葉巧みに、まくし立ててきます。
私が丁重に断ろうと話そうとしたその瞬間、相手はさらに圧をかけてきました。
「悩む要素は何があるんですか?」
「明日までに決めてもらわないと、こちらも時間がない」
焦っているようで、口調も段々と早くなっています。
さっきまで笑顔だった表情が、眉間にシワを寄せて、苛立ちを隠せない様子です。
私は不安な気持ちを超えて恐怖を感じながらも「検討する」とだけ言い残して、Zoomを退出しました。
その後、就活生の金銭トラブルなどについて調べてみました。
国民生活センターによると、2022年度には200件近く就活トラブルが寄せられたといいます。被害金額は、50万円以上100万円以下が最も多く、全体の約36%を占めています。
トラブルの傾向にも変化が見られるようです。2020年度に発表された就活トラブルへの注意喚起は、就活セミナーの会場や事務所で行われるものだったのに対し、2022年度ではSNSやオンライン会議によるものに注意を呼びかけています。
実際に、セミナー勧誘の販売購入形態のうち、Web会議を含む電話勧誘販売は、2021年度は 17.6%だったのが、次の年には33.3%まで増加しています。
「オンラインで無料カウンセリングを受けると、無理やり勧誘され、断ろうとすると解約料を要求された」という声もありました。
「私も同じような被害にあっていたかもしれない」。そう考えるだけで、体が震えてきました。
私の周りでは、就活でエージェントから高額な金銭を要求された友人もいます。
私のケースと同じようにDMでやり取りし、30万円を払うよう要求されたそうです。
その友人も就活が不安で、進め方が分からず、勧誘されたエージェントに入るか迷ったといいます。
30万円は決して安くはない金額です。友人は「バイト代でなんとか払えなくはない。第一志望のところに行きたいし、支払いに応じようかな」と考えたようです。
ただ、最終的には「就活相談で高額すぎる」と感じて払いませんでした。
人生で初めての経験する就活。自分の大事なファーストキャリアを選ぶ大きな岐路で、だれもが不安な気持ちになります。
その気持ちにつけ込んでくる高額請求や詐欺に、私の小さな体験記が、少し立ち止まったり、考え直したりするきっかけになってくれればと願っています。
(文:中井舞乃、デザイン:高木菜々子、編集:比嘉太一、野上英文)