五七五で「ESを 書くのもAI 読むのもAI」に蛙化現象

五七五で「ESを 書くのもAI 読むのもAI」に蛙化現象

    ESを 書くのもAI 読むのもAI──。就職活動の悲喜こもごもや世相をユーモアにうたう「就活川柳・短歌」と「採用川柳・短歌」の入賞作(2024年卒版)がこのほど発表されました。

    キーワードに使われたのは、コロナ禍を経て復活した「リアル面接」から、流行りの生成AI「ChatGPT」や「ジョブ型採用」、お断りの「お祈りメール」に「内定辞退」、さらにはZ世代のトレンドワード「蛙化現象」まで。

    就活生と採用担当者の“本音”が交差する受賞作品から、JobPicksが厳選して紹介します。

    目次

    300弱のノミネートから選ばれたのは

    就活川柳・短歌は、HR総研と就活生向けクチコミサイト「就活会議」が毎年、共催しています。

    就活生と採用担当者の部門でそれぞれ公募し、今年は就活生部門で221作品から12作品、採用部門で73作品から13作品が入賞しました。

    最優秀賞に選ばれた作品は、長い就活で内定を見事に勝ち取った時の心境をつづった作品です。

    川柳1

    審査員コメント:

    「届いた合格メールを信じられず、何度も何度も見返しては喜びをかみしめている作者の姿が目に浮かび、幸せに満ちあふれた作者の素直な気持ちを感じさせてくれる逸作です」

    「『合格』の通知は誰にとっても、いくつになっても嬉しいもので、心躍り、この先のモチベーションが高まりますよね。ぜひこの喜びの気持ちを忘れずに、自信を持って社会人として大きく羽ばたいてほしいと思います。心より応援しています!」

    川柳・短歌から見る 採用・就活の最前線
    maroke / iStock

    増えた「オンライン面接」 画面のそばに

    続いて優秀賞。コロナ禍を経て、面接は対面形式だけではなく、オンライン面接が一般的になったからこそ生まれた作品がありました。

    「私が 尊敬するのは 母親です」

    審査員コメント:「自宅でのオンライン面接で『本人に聞かれたら恥ずかしい』と照れながら小声で家族への想いを語る作者の様子が目に浮かぶ作品です」

    「本人に聞かれないようにしながらも『尊敬している』と言われるお母様は世界一幸せ者ですね。たくさんの愛情を受けてまっすぐに育ったことでしょう。ぜひ家族の方にも『私の家族は世界一だよ!』と大きな声で伝えてほしいです」

    川柳・短歌から見る 採用・就活の最前線
    mapo / iStock

    Z世代の流行語から作品続々

    Z世代が選ぶ2023年上半期の流行語ランキングで1位となった「蛙化現象」をキーワードに盛り込んだ作品も数多く選ばれました。

    「蛙化現象」とは、恋愛感情や好意を抱いている相手のささいな言動が気になり、気持ちが急速に冷めてしまうという現象を意味する言葉。Z世代を中心に使われているトレンドワードです。

    就活部門で佳作に入った作品から。SNSも就活には欠かせないツールとなりました。

    川柳3

    審査員コメント:「長い間、憧れ続けてきた会社なのに、踊りながら自社PRをする社員の姿をSNSで見た瞬間に、『こんなに踊らされる会社に入りたくない!』と一気に志望度が下がってしまった作者のショックが表現されています」

    『楽しんで自社のPRができる会社との出会いをお祈りいたします!』

    GettyImages-1284373312川柳・短歌から見る 採用・就活の最前線
    metamorworks /iStock

    採用現場でも興ざめの「蛙化現象」

    一方、企業の採用担当者が詠んだ作品にも「蛙化現象」。こちらは最優秀賞に選ばれました。

    川柳4

    審査員コメント:「学生から熱烈なラブコールを受けていたのに、内定を出した途端に冷められるという作者の悲痛な叫びが伝わってきて、旬ワードでの表現が秀逸です!」

    「作者の苦労に共感するとともに、熱意ある学生との素敵な出会いを応援せずにはいられない作品です」

    Z世代に流行している「蛙化現象」。就活中の学生と応募を受けた企業との間でも発生中です。

    川柳・短歌から見る 採用・就活の最前線
    somethingway / iStock

    就活にも広がるAIの存在

    生成AI「ChatGPT」の浸透で、トレンドワードにもなっている「AI」。採用側がAIをネタにした作品も優秀賞に選ばれました。

    川柳5

    審査員コメント:「世界中で反響をよんでいる「ChatGPT」を題材に描かれ、最も旬な話題を取り込んだ作品です」

    「AIがESを本人に代わって作成できてしまい、ESを読んで選考するのもAIでできてしまう時代。まさに『AI』 vs 『AI』」

    「『人』のお出ましはその先の面接でのお楽しみとなるのでしょうか。ひと昔前の『就活ノウハウ本』を参考に応募用紙や履歴書を作成していた頃が懐かしいですね」

    川柳・短歌から見る 採用・就活の最前線
    Vertigo3d / iStock

    就活生部門でも「AI」や「ChatGPT」を使った作品が複数入賞しました。

    就活生の間ではいま、生成AIを使うことに肯定的な意見と否定的な意見が拮抗している調査データ(記事)もあり、賛否が割れています。

    川柳6

    審査員コメント:「エントリーシート作成にもChat GPTの利用が便利と騒がれ始める中、作者の就職活動に対する真摯な思いを感じる作品です」

    「Chat GPTの便利さを理解しつつも、自身の経験は自分の言葉で表現することが最強のES対策となるという作者に、強い共感を覚えます。自分で紡ぎ出した言葉の一つひとつにこそ、AIにはない『思い』が込められるのだと信じています」

    川柳7

    審査員コメント:「ChatGPTなどの生成AIツールが急速に発展する時代に直面し、就職活動でも学生・企業の両者ともにAIに完全に置き換わってしまうSFのような世界が現実味を帯びてきたかもと、想像を膨らませる作者」

    「志望企業への『愛』も応募学生への『愛』も、自分の言葉でこそ伝わるものがあるはずです。ぜひ、熱い想いを込めたあなたの言葉で「愛」を叫んでください!」

    川柳・短歌から見る 採用・就活の最前線
    gyro / iStock

    就活や採用現場のリナルな世相を映した「2024年卒 就活川柳・短歌」「2024年卒 採用川柳・短歌」。近い将来、AIで生成された作品が最優秀賞を受ける日が来るのでしょうか。

    出典:HR総研のオフィシャルページでは、「2024年卒 就活川柳・短歌」「2024年卒 採用川柳・短歌」の全入選作品について、作者の思いを踏まえての寸評・解説とともに掲載しています。

    (文:比嘉太一、編集:野上英文)