“アメリカの就活生”と語った日米シューカツ比較

“アメリカの就活生”と語った日米シューカツ比較

    就職活動を終えたJobPicksインターン生が思いをつづる「就活卒業日記」。今回は、シェアハウスのルームメイトであるアメリカ人と話した就活の話。日本の文化を学んでから来日した彼は「日本の就活って不思議だね」と語ります。

    日本の就活はどこか堅苦しく、「アメリカはきっとカジュアル」という印象を抱いていましたが、彼らの就活には日本とは違う悩みがあるようです。就活期は自分のことで精一杯でしたが、同じように頑張っている同世代が海外にいることにも気付かされました。

    就活卒業日記#03 「ここは変だよ、日本の就活」

    目次

    「日本のシューカツって面白いよね」

    学生最後の夏休みに私はほとんどの時間をバイトとインターン、学校の予定に使いました。

    予定が毎日詰まっているので、くたくたになって帰ることが多いのですが、そんな私の楽しみの一つが、住んでいるシェアハウスのルームメイトであるレオとの会話です。

    レオは大学院生で夏休み期間中、インターンシップで日本に来た中国系アメリカ人です。日本のサブカルチャーに興味があり、映画や音楽に詳しい彼とは趣味も合って、部屋でよく話をします。

    そんな彼がある日、私の仕事にまつわる動きが気になったのか聞いてきました。

    「タクミって、何のインターンやってるの?」

    就活卒業日記#03 「ここは変だよ、日本の就活」
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    レオが科学館や中小企業支援のインターンシップ活動をしているという話は聞いていましたが、私からはその時まで自分の話をしていませんでした。

    「Webで記事を書いてるよ。仕事とか転職、就活に関すること書いてる」

    JobPicks編集部で5月からインターン生として加わっていることを説明しました。

    「おーう、シューカツね」

    そんな反応が返ってきました。

    なんとなく引っかかった私が「え、何その言い方?」と聞くと、レオは次のように語ります。

    「日本に来る前に日本のことを勉強しようとYoutubeを見ていたら、日本の変わった文化としてシューカツが取り上げられているのを見たんだ。日本のシューカツって面白いよね。アメリカとは結構違っていて、不思議な文化だと思った」

    そういうわけで、この日の2人の話題は「日本とアメリカの就活比較」になりました。

    就活卒業日記#03 「ここは変だよ、日本の就活」
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    Youtubeで知った「日本の就活」

    レオは日本に来るのが夢で、大学院のある米カリフォルニア州のバーで頑張って働き、貯めたお金でようやく日本に来る機会を得ました。現地での暮らしが少しでも有意義に過ごせるよう、日本の文化をあらかじめ学んでおこうと、色々なYoutubeを見たといいます。

    彼が「予習」として観ていた動画の中に、日本の就職活動を扱った内容がありました。東京藝術大学のMAHO YOSHIDAさん(当時)が2012年に制作した7分あまりのアニメーション「就活狂想曲」で、再生回数は860万回超。英語のコメントも残されています。

    この動画をみてレオが特に不思議に感じたのは「みんなが同じタイミングで、同じ格好をして、同じこと(就職活動)をしている」ということ。

    聞けばアメリカでは、就職活動を始めるタイミングは人それぞれ。服装も受ける業界や会社に適した服装を選ぶため、「リクルートスーツ」とは違って、みんなそれぞれ違うそうです。

    この動画では、そうした日本の「横並び意識」を強調している部分はありますが、そう言われて見てみると、確かに日本の学生がまったく同じ行動をしているように映るのもわかります。

    レオは決まった服装で臨む説明会や面接のおかしさだけでなく、日本の企業インターンシップについても違いを指摘します。

    「アメリカでは、インターンシップは社会経験を積むためにやってる人が多いと思う。一方で、日本では『その会社に採用されるため』にやるんだよね? アメリカでも確かに、インターンシップをやった方が採用されやすいとは思うけど、そもそもの目的がちょっと違うかも」

    私が今のインターン活動を始めたのは、PR会社から内定をもらったのと、ほぼ同じ時期。つまり内定後から、来春の卒業までをより良い期間にしたいのが目的です。

    JobPicksをインターン先に選んだのは、企画を立てる勉強と、これまで興味を持ってこなかった経済やキャリアの分野をのぞくため。会社に入ってからのPRコンテンツ作りにも、メディアで働くことは良い経験になる、と最近は思っています。

    ただ、こうした話を大学の友人たちに話すと、「就活の時(内定をもらうまで)以外に、インターンをしようと思ってなかったなぁ〜」という反応がほとんど。

    レオが言うように、日本の就活生は「インターンシップをするのは就活で有利になるだろうから」というのが大半だと感じます。

    就活卒業日記#03 「ここは変だよ、日本の就活」
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    “アメリカの就活生”の悩みって?

    レオとこうして話していると、日本の学生だけが早い時期から就活やインターンシップに悩みを抱えているようにも感じました。「アメリカの就活は、日本で話題になる就活の問題が無いのかな」

    ただ、アメリカにはアメリカの就活事情があるそうです。

    学生のレオは、日本での滞在を終えたこれから、就活を始める予定ですが、1番の壁となるのが大学の専攻(学部)だといいます。

    レオによれば、アメリカでは学部によって雇ってもらえる可能性がある仕事が大きく変わるそうです。今だとプログラミング関係の学部生は就職先が多い一方で、英語学部や芸術関係の学部だと就職先がかなり少ないそうです。

    レオの専攻は音楽です。

    「音楽の学部では就活は大変だと言われているから、僕も苦労するだろうね」

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    日本はどうでしょうか。

    「新卒一括」や「総合職」の採用が昔から根強く残っています。学生の立場からすると、日本では専攻の学部にあまり関係なく、受け入れ先もたくさんあるように思います。

    私の周りでも、文学部だけどIT関係の仕事を志望して内定をもらった、といったケースは少なくありません。もちろん自分の専攻と受ける仕事がマッチしている方が、内定や入社後の活躍がしやすいかもしれません。

    ただ、国際文化を専攻した私は就活をしている時、自分の学部や学科で志望先を限定したり、特に気にしたりしたことはありませんでした。レオとは随分と違います。

    就活卒業日記#03 「ここは変だよ、日本の就活」
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    この日、レオとは1時間にわたって就活の日米比較についてカジュアルに話しました。

    日本の就活やインターン事情に少し詳しくなったレオの感想を紹介します。

    「実際は自分が事前に動画で知ったような就活ばかりじゃないね。タクミみたいに好きでインターンしている人もいるし、大学を卒業して就職じゃない選択をする日本人もいるようだし。お互いの国で、より良い就活に変わっていったらいいよね」

    国は違えど、就活生が目指すのは「自分にとってより良い未来の実現」だと私は思います。達成に向けて、それぞれの国で常識となったルールや慣習のもと、悩みを抱えながらも社会人として巣立っていく......。そう思いをはせると、なんだか胸が熱くなり、互いに励まし合いたくなります。

    世界中の同世代と、これからどんな世界をつくっていけるのか。8月中旬にレオはアメリカに帰ってしまいましたが、彼も彼らしい就活を頑張ってほしいと心から願います。

    (文:鍬崎拓海、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)