就職活動を続けていると、体力的にも精神的にも疲れてしまう、ということはどんな人にもあると思います。大学生にとっては、それまで学校やバイト先への移動だけで完結していた生活が、急に慣れないスーツを身にまとい、人によっては長距離移動が頻繁になることも多いでしょう。
就活ではありませんが、私は新卒の研修期間中、リクルートスーツを毎日着ていたのですが、あまりに肩凝りがひどくなり、初めてマッサージに行ったことがありました。そのときに言われたのは「シャツとかジャケットで肩が凝ってしまっているのかもしれませんね」という言葉。履き慣れていない靴に、慣れないジャケットで、姿勢以外にも肩が凝る原因があるのかと、目からうろこでした。
フィジカルだけでなく、メンタルの部分でも私は就活中、疲れ果てていたことが記憶に残っています。ただ、疲れていても「周りが頑張っている」「同じ企業を受けるライバルはこの時間も努力を続けているのかも」と考えると、一秒たりとも無駄にはできない、という気持ちになってしまうもの。しかも入試やテストと違って、明確な「終わりの時期」がわかりません。内定が出るまでって、あとどれくらいかかるんだろう? そんな気持ちで過ごしていました。
エントリーシートの書き方や面接の仕方、グループディスカッションのコツなどは、教えてくれる人がたくさんいます。でも、就活中の休み方を教えてくれる人はどうでしょう? 頑張る方法の知識が増える一方で、休み方に関しては積極的に調べようと思わない限り、なかなか情報が入ってくることはないと思います。
会社によって選考スケジュールがバラバラだから、A社のエントリーシートを書き上げた日にB社の面接へ行き、同じ週にはC社のグループディスカッションが控えている。そんなふうにマルチタスクの渦中にいたら、確実に疲弊している自覚はあっても、休み方について調べようという気力も残っていないケースも多いでしょう。
OBやOGに就活相談をするときも、限られた時間で相談するとしたら会社のことを聞いたり、就活のポイントを聞いたりするだけで精一杯。休み方なんて相談したら、甘いと思われてしまうのでは? 手を抜いていると思われるかも。そう考えてしまうのも無理はないと思います。
「休息」は「手抜き」じゃない。パフォーマンスを一定に保つための手段
でも、よく考えてみてください。「就職活動」というのは一時的なもので、実際に入社したあとのライフスタイルは、月曜から金曜まで働いて、土日はしっかり休む。残業があったとしても、平日にプライベートを楽しむ時間が全くないわけじゃない。そう、就活の先にある「社会人生活」にだって、休みはあるのです。
私はこれまで、会社員生活も、フリーランスとしての生活も経験してきました。その間には、もちろんいろいろと大変なタイミングもありました。平日は終電まで働いて、家に帰って深夜3時まで残りの作業をして、枕元にPCを置き、朝6時に起きた瞬間から働けるようにして、休日返上で働いていた時期も……。仕事が楽しい、やりがいもある、頑張りたいから寝ている時間ももったいない!とはりきりすぎていたんだと思います。
結局、働きすぎるとそのしわ寄せは確実に自分の心や体にきてしまうようで、仕事を長期間休まざるを得ない状況になりました。1週間のうちに、土日休みがあることは大事。残業があったとしても、定時という概念があるのも大事。それを痛感しました。
休み方は人それぞれですが、全く休みなく働き続けるより、休息を取り入れた方が確実に集中力が高まったり、パフォーマンスが上がったりするのです。さらに、持続可能性も上がります。これは就活にも言えることで、適度に休みを取り入れることで、面接での臨機応変な対応ができたり、志望理由を考えるときの言語化がスムーズにいったりするメリットもあると思うのです。
休み方に悩んだら、どんな情報に「触れたくないか」を考えてみよう
では、どんな息抜きがいいのでしょう? たとえば、就活が始まる前だったら同級生とごはんに行ったり、飲みに行ったりしておしゃべりをするのが楽しみだったという人はたくさんいると思います。でも就活が始まった途端、目指す業界は違えど、同じ「就活」という荒波の中にいる同級生が、次々内定を決めていく様子を聞くのがしんどい……という気持ちになってしまうこともよくあるのではないでしょうか?
内定が出ない同士で頑張ろうと励まし合っていた友人に、ついに内定が出てしまった! そうなると、気分転換のつもりでごはんに行ったはずが、逆にますます焦ってしまうという結果に。そんなエピソードも聞いたことがあります。
たとえば「誰かと楽しむ」以外の趣味に触れてみたり、スマホから離れられるように映画館に行ってみたり、好きな本を読んでみたりするのもよいかもしれません。サウナなどもいいかもしれませんね。もしくは、就活と関係ない後輩たちと遊ぶのもいいのかも。もうだめだ、と疲れてしまったときは、自分勝手にわがままになってよいのです。自分が一番リフレッシュできる時間をつくってみましょう。
リフレッシュの時間が、自己分析の棚卸しにつながることも
エントリーシート、グループディスカッション、面接、合間にウェブテスト、さらにその勉強、というループの中にいる間は、きっと選考に関わる項目がいやでも目に入ってきてしまいます。その枠の中に無理に当てはめて自己分析を進めようとすると、難しくて立ち止まってしまうこともあるでしょう。
リフレッシュする時間に、少し就職活動の渦中から抜け出してみることで、ふと自分のやりたいことやキャリアプラン、得意なことなどが頭に浮かぶ瞬間もあると思います。私自身、実は仕事選びにおいて自分が優先していることは、休んでいる間、ぼんやりしているときにふと気づきました。就活のことを考えていたわけではないけれど「そういえばあのバイト、楽しかったなぁ」と思い出を振り返っていたら、自分にとっての仕事観が見えてきたのです。
もちろん、とことん疲れてしまっているときは、そんな棚ぼたも意識せずに、休むことに専念するのが最優先。とはいえ、それまでずっと就活のことを考えていたのなら、頭の中は就活関連の要素で溢れているはず。それが整理される瞬間は、リフレッシュのタイミングで訪れることも多々あると思います。
休むことも就活のうち。もしかしたら、休んでこそ自分の道が見えてくることもあるかもしれません。甘えなどではなく、自分のパフォーマンスを上げるために、そして自分の大事な「これから」をしっかり見据えるためにも、就活中に疲れたら、しっかり休むことをおすすめします。
(文: 山本梨央、デザイン:高木菜々子、編集:筒井智子)