内定・入社後「ブルー」は2度やって来る。2年目の先輩3人の解

内定・入社後「ブルー」は2度やって来る。2年目の先輩3人の解

就活を終えた24年卒の学生が新社会人になるまで、残り半年あまり。​​来春からの生活に胸を躍らせながらも、どのようなスタートを切れるかと不安も抱いているでしょう。

そんな社会人0年目を招いたイベント「​​キャリアのゼロイチまるわかりDAY!」(主催:NewsPicks for Students、​​​​ONE CAREER)が開かれました。

登壇した3人は社会人2年目で、内定後からこれまで少なくとも2回は気持ちやモチベーションが大きく落ち込むことがあったと振り返ります。社会人になるまでの悩みや入社後に感じたギャップ、いま働く上で大切にしている心構えとは......。

目次

「遊んどけ」だけでなく助言が聞けるイベントに

モデレーターを務めたのはONE CAREERエバンジェリストの寺口浩大さんです。

寺口さんプロフ

2017年からONE CAREERでPRの仕事をしている寺口さんは今回、イベントを主催した背景に自身の経験があると冒頭に語りました。

寺口:「20代に3回ほど転職しました。今回の企画をなぜやろうと思ったかというと、僕が大学生時代、割としっかり楽しんで時間を過ごしている中で、入社前に何をしようかと考えたことがあったんですね。遊ぶことはもちろん大事だったんですけど、何か未来につながることもやりたいなと思った時に、聞ける人が当時、周りに1人もいませんでした」

内定をもらった会社の人事の人に「何をしたらいいのか? 」とたずねたという寺口さん。返ってきたのが、「がっつり遊べ」という、ありきたりな答えだったといいます。

寺口:「それは言われなくてもやります、と。結局、誰も教えてくれなかった『何か未来が楽しみになるような時間の過ごし方』。これだけ人と人がつながっている世の中だから、誰かが教えてくれるんじゃないかと思って、僕が当時に聞きたなと思ったことが聞けるイベントに今日したいと思いました」

イベント開催の背景を語る寺口さん
イベント開催の背景を語る寺口さん

登壇したのは、社会人2年目として活躍する3人です。​​デロイト トーマツ コンサルティング 合同会社の秋山亮さん(24)、​​​​​外資系のIT企業で働く安東翼さん(24)、ユーザベースの糸井あかりさん(24)。それぞれのモチベーショングラフを会場に映して、内定後から入社まで、さらに入社後から現在までの約1年半を振り返りました。

グラフをみると3人とも、内定後からこれまで、共通して少なくとも2回以上の落ち込みを経験したことがわかりました。

早くに始めた就活。終えて内定ブルー 

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社でコンサルとして働く秋山亮さん。大学では経営学部に所属し、マネジメントを学びました。その学びを実務でも生かしたいと、コンサルティング会社に入社。組織・人事領域のコンサルタントとして、人事のマーケティングや設計に従事しています。

希望する業界から内定をもらった秋山さんですが、内定直後と社会人になってから約半月後に2度、気持ちが沈んだと明かしました。

秋山さんプロフ

秋山:「まず就活を終えて、燃え尽きてしまいました。目標を見失ってしまったんです。志望していた会社から内定をもらい、社会人0年になった残りの学生生活で若干バーンアウトのような燃え尽き気味になりました」

「大学2年生ごろから就職活動していたんです。スタートが周りよりも早くて、ずっと就活のことだけを考えて学生生活を送ってきただけに内定をもらって就活を終えたら、『これから何をすればいいんだっけ? 』って」

「コロナ禍で就活はすべてフルリモートでした。リクルートスーツも持っておらず、部屋ですべて就活を完結させた形でした。他の人たちがどのように就活をやっていたとか、選考の進捗とかも情報交換していないという状況で、周りが見えてないような期間でした」

入社0年目を振り返る秋山亮さん
入社0年目を振り返る秋山亮さん

就職サイトを運営する「マイナビ」による2022年の調査では、秋山さんのように「内定ブルー」に陥る学生は、およそ半数に上るといいます。就活は早期化が年々進んでおり、就活生の2人1人が内定をもらった直後に働くことへの不安や燃え尽きたような気持ちを抱えるようです。

秋山さんは、会社から出された内定者向けの課題に没頭したり、友人らと過ごしたり。

秋山:「内定者課題を少しずつ進めつつ、友人と飲みに行ったりしながらモチベーションを少しずつ上げていきました。残り少ない学生生活を友人らとわいわい過ごすことも、やっぱりお勧めです」

リモートで気持ちと仕事の質を高めるには

秋山さんの2回目の落ち込みは、入社直後でした。

フルリモートの勤務で、入社同期とのつながりをまったく持てない日々が続きます。

秋山:入社してから3カ月間、フルリモートで研修がありました。横の繋がりを感じることが難しかったです。もしオンラインの研修や勤務が続いても、同期と仲良くなるためのコミュニケーションの機会を意識することが大事だと思います」

横のつながりだけでなく、会社への帰属意識も抱きづらかったといいます。

「朝起きてパソコンの電源を入れて、9時から18時まで仕事をして終わるような働き方だと、自分がそもそも会社に所属しているという思いを持ちづらい。可能な範囲でいいので出社して働くのが、とくにスタート段階で自分を成長させる意味でもすごく大事だと思います」

golubovy /iStock
golubovy /iStock

秋山さんは入社して半月ほど経ったころ、仕事でも壁に当たったといいます。業務のタスク量の多さと求められるアウトプットの質の高さに、自信を失ってしまいました。

秋山:「『自分はこれぐらいはできる』と思っていたのに、思っていた能力と、求められる能力との間に差があることを見せつけられた出来事がありました。自分のやり方やスキルを見直さなきゃならない瞬間が誰でもあると思うので、改善しながら、スキルや業務の質を高めていくことが大事になると思います」

mapo /iStock
mapo /iStock

これを聞いた寺口さんは、社会人になってから自信を失った時には、毎日確実に仕事をこなしていくことで、自信を取り戻せると助言しました。

寺口:「たぶん自信がないから自信を持ちたい、自信を持ちたいから守りたい、みたいな感じの悪循環が生まれると思います。僕も最初から結果を出したいと、すぐに思っちゃうんです。だけど、だいたい無理」

「実は無理でよくて、周りの人たちもあんまり気にしていない。それよりは一生懸命に頑張り続けることのほうが期待されています。今できないことに絶望するより、毎日やれることを1個ずつ増やすことにエネルギーを使った方が、結果的に自信がつきます」

モデレーターの寺口さん
モデレーターの寺口さん

業務を抱えすぎない。「 NO」と断る勇気

就活を終えて入社してからも、それまでの学生生活とは違った生活に適応が求められます。

外資IT企業で営業やデータアナリストとして働く安東翼さん。入社してちょうど1年後に、仕事を引き受け過ぎてしまった経験を明かしました。

安東さんプロフ

安東:「4月に入社して、早い人だと10月くらいから社内プロジェクトなどの大きな仕事を任せてもらえるようになります。任されること自体はいいことですが、どうしても労働時間が伸びがちです。私は目の前の仕事に追われて、辛かった経験をしました」

「そして(ちょうど入社から1年が過ぎようとした)今年3月ごろ、アサインメント(業務)の量が結構多くなって、どれも中途半端になっていました」

登壇した安東翼さん
登壇した安東翼さん

安東:「多くの社会人1年目は仕事を振られたら『やります!』と、やっぱり言いたくなると思います。チャレンジすることはいいことですが、働く時間は有限。24時間のうち睡眠時間を除いて、働ける時間は16時間ほどです。でも、業務時間外に働くことを毎日続けるのは、限界があります」

「やはりどこかで、本当に自分がやるべき仕事なのかを考えて、選択する必要があります。自分がやるべき仕事以外の仕事をお願いされた時に『NO』と断ることも大事だと今は思います」

会場で登壇者3人の話に耳を傾ける学生たち
会場で登壇者3人の話に耳を傾ける学生たち

NOを伝えるためにも「報連相が大切」

1年目としてやる気や活躍する姿を見せたい気持ちと、抱えすぎずに「NO」を言う勇気。そのバランスをどうとるのでしょうか? イベントに参加した学生たちに、安東さんは古くから言われきた「報連相」(報告、連絡、相談)の重要性についても語りかけました。

自身の体験を話す安東さん
自身の体験を話す安東さん

安東:「​​マネジャーやチームメンバー​​に対して業務の進捗や業務量の報告、連絡、相談をすることが日頃から必要だと思います。コミュニケーションを密に取る、ということです」

モデレーターの寺口さんも、上司の立場からこれを補足します。

寺口:「確かに報・連・相は大事ですね。例えば、今週、何の業務にどれだけ時間を使ってるのかというのを示してくる人がいたとします。上司がコンディションが少し悪そうだなと感じたら、ヘルプ入ることもできるし、期限内に間に合わないと事前に報告されていれば、手立てを先に考えることもできる」

「一人で抱え込まないためにも報連相は大切ですね」

モデレーターの寺口さん
モデレーターの寺口さん

インターンと社員の違いは主体性

ユーザベースのNewsPicks編集部に所属する糸井あかりさんは、記者として日々、特集記事の制作などに奔走しています。

学生時代の長期インターンから正社員になった1人です。組織や社風は肌感覚で分かっていたといいますが、それでも社員になるとギャップに悩まされたと明かします。

糸井さんプロフ

糸井:「大学4年で1年近く今の会社でインターンをやっていたので、社会人1年目からある程度は社内の雰囲気も分かっていました。なので働くことへのギャップを感じることはないと思っていたんです。でも、いざ正社員になると、自分から主体的に仕事をやっていかなければならない状況に悩みました」

「『私って本当は何がやりたかったんだっけ? 』って分からなくなったんです」

戸惑いを感じた糸井さんを救ったのは職場の仲間だといいます。

「それから、いろんな先輩方が助けてくれたんです。同僚や先輩が『仕事を一緒にやろう』と誘ってくれたおかげで、仕事の楽しさを改めて教えてもらって、モチベーションが回復しました」

モチベーショングラフを見ながら話す糸井さん
モチベーショングラフを見ながら話す糸井さん

新卒入社の同期が少なかったことの良さと大変さについても語りました。

糸井:「会社は同期が8人と少ないです、同じ部署に同期がいないので、ポジティブな側面だとライバル意識というかバチバチせずに仲良くて絆が深まっていると感じます。一方で、部署が違うので、業務に関する辛さを分かってくれる同期が少ないので、そこは大変な面もありますね」

寺口:「辛いことを共有することは大事ですからね。社外で相談できる人がいればいいですね」

上司の言葉が成長を後押し

糸井さんが仕事で成長を大きく感じたのは、米国ニューヨークへの海外出張だったといいます。出張から帰ってきてからの執筆作業にも凄く悩んだといいます。

糸井:「同年代の起業家の方たちに実際に会って刺激をもらいました。特に私と同じ年で、生理商品を開発しているナディア・オカモトさんのインタビューは印象に残っています」

糸井さんは日本にルーツを持つオカモトさんを取材。生理をタブー視するのではなく、クルーになりたいというオカモトさんの活動や商品開発の秘話をインタビューしました。

upthebanner /iStock
upthebanner /iStock

糸井:「サステナブルな生理商品を作りたいという熱い思いに触れました。TikTokのフォロワーも400万人いて社会の共感を集めていて、彼女のパワーに圧倒されました」

ただ、そうして胸が高まって帰国した後、今度は取材した内容をどう記事にするかという壁にあたります。

糸井:「取材はすごく楽しかったんですが、記事をどう書いたらいいか分からなくて…」

ここでも救ってくれたのは、職場の上司でした。

糸井:「『本当に自分の心が響いたことが読者にも共感を得やすい』という言葉に救われました。自分がどの話が面白かったのかという点を大事にして記事を書き上げました。成長をとても実感できた仕事でした」

「上司・先輩のほうが気を遣っている」

登壇した3人は、来春から新社会人として働く「社会人0年目」の学生たちに、いま働く上で大切にしていることをアドバイスしました。

秋山:「社会人1年目は、コミュニケーションをすごく大事にしてほしいです。特に上司や先輩とのコミュニケーションを積極的にしてほしいです」

秋山さんは、新社会人が考えている以上に、上司や先輩のほうが若い人とのコミュニケーションの取り方に気を遣っていると指摘します。

秋山:「『こう言ったらパワハラに聞こえるのかな』『今の若い人はどういうことを考えているんだろう? 』とすごく気にしています。だから、こちらから積極的に上司や先輩を食事や飲みに誘ってみましょう。忙しいかも、と遠慮する人もいるかもしれませんが、気にする必要はまったくないと感じています」

秋山さんイラスト

円滑なコミュニケーションを自分から取っていく上で、気になるのは、リモートワークとの兼ね合い。

秋山:「飲み会や食事以外の方法でも、職場にいれば自然と密にコミュニケーションが取れます。今、リモートワークの会社も多いですが、はじめは積極的に出社することがやはりおすすめです」

「一番ユーザーに近い入社1年目」を生かそう

安東さんは、自分が感じた問題意識を組織内で積極的に声を上げていくことの重要性を語りました。

安東:「入社1年目って考え方が真っさらで、一番ユーザーに近いと思います。会社それぞれの雰囲気もあるかと思いますが、1年目だからこそ感じる違和感や問題意識を大事にして、それを社内で発信することが大切だと思います」

安東さんは1年目にそうした問題意識を共有することを遠慮していると同僚から指摘されたといいます。

安東:「問題意識を持った時には、先輩や上司に論理とデータを持っていき正面から話す。そうすれば伝わると思います。そこで重要なのは、コミュニケーションのとり方で、入ったばかりの1年目は誠実さと素直さが大事です。誠実に問題意識を語って、素直に先輩の言っていることを聞いていく。そのうえで自分の意見もあわせて伝えれば、上司や先輩も必ず聞いてくれます」

安東さんイラスト

迷ってもアクションあるのみ

糸井さんは悩みがあっても動き続ける、アクションを取り続けることが次につながると強調しました。

糸井:「私は入社直後の4〜5月に悩んだタイプでした。そこで消極的になって行動をストップさせたことを後悔しています。やっぱり行動しないと何も解決しなかったので、もしみなさんが同じように入社後に悩んでしまったら、失敗を恐れずに行動していくことが大事だと思います」

糸井さんイラスト

モデレーターの寺口さんも「悩む暇があったらアクション」を推します。

寺口:「僕もどっちかというと行動派なんですが、悩んだ時はアクションを起こして刺激を受けたり、情報をインプットしたり、何かしらプラスに行動しないと思考が回らないことがあります」

「入社1年目は経験がないので、それをアクションでカバーするようなメカニズムが大事なんだろうなと思ってます」

社会人0年目、1年目の悩みは三者三様。ただ、前向きに活躍する3人もわずか1年半の間で、いろいろな壁にぶつかりながら、乗り越えてきたことがわかりました。みなさんも先輩たちのメッセージを手がかりに、残りの学生生活を充実させ、社会人のスタートを切ってください。

(取材・文:比嘉太一、撮影:飛塚倫久、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)








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