「就活しないかも」友人の発言から考えた「新卒入社」は正義か?

「就活しないかも」友人の発言から考えた「新卒入社」は正義か?

    就職活動中のJobPicksインターン生が、リアルな体験や思いをつづる「就活生日記」。今回は、友人の発言から自分が就職したいのはなぜか?を見つめ直したという話です。「大学生ならば、就活をして就職するのが当たり前」だと思っていた自分。どのようなファーストキャリアを歩むのか。フリーランスをはじめ多様な選択肢がある中で、「新卒」として働く意味を改めて考えました。

    就活生日記♯05 新卒カードを捨てたくない 立教大学文学部3年 髙栁綾

    目次

    「就職」「就活」が当たり前の毎日

    大学3年生の私は、現在就職活動のまっただ中にいる。

    自己分析をするほか、エントリーシート(ES)の作成や適性検査の勉強、面接の練習など。大学の講義に出席するかたわら、就活のあれこれに追われている。

    同じ学年の友人たちもほとんどが就職活動をしており、顔を合わせれば「インターン」「ES」など、たいてい就活関連のあれこれを話し合う。

    学生生活に就活が加わったことで日常は忙しさを増したが、私はその現状を大変だとは思っていても、ごく自然に受け入れていた。

    なぜだろうか? その理由を考えるまでもなく無意識のうちに、「みんな今の段階を経て社会人になっているから」「大学3年生なら、誰しもが自分と同じ状況であるはず」と考えていたからかもしれない。

    「私、就活しないかも」思いがけない友人の一言

    ある日、他大学の友人と食事をした。高校時代から親交があるその友人が、ふと気になることを言っていた。

    「就活をするかわからない、新卒で就職しないかもしれない」

    就活生日記♯05 新卒カードを捨てたくない 立教大学文学部3年 髙栁綾
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    それを聞いて、私は驚いた。

    「大学卒業後は就職をするのが当たり前であり、そのためにも今の時期は就活をするべき」だと思っていたからだ。

    友人の話を詳しく聞いてみた。どうやら企業に雇用されて働くよりも、フリーランスで何かをしたいらしい。

    フリーターをしながら将来の夢のために活動する...という話はよく聞くが、友人の将来設計はなんというか、あまりにも大まかすぎないか?と思ってしまった。

    友人は誰もがうらやむような大学に在籍している「優秀な学生」だ。人格者でもある友人が手を伸ばせば、どんな会社でも働くことができそうなのに。新卒就職の機会を何もみすみす手放さなくてもいいのではないか?

    友人の持つステータスと、本人が望む生活に関係はないとわかっていても、正直、心の中ではそう思ってしまった。

    ただ友人の人生は友人のもの。私に何かを言える権利はない。私は黙って友人の話を聞いていた。

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    なぜ今「新卒入社」?

    この日の友人との会話を経て、自分が大学を卒業した後に新卒入社をなぜしたいのか? 理由を考えてみた。

    まず、「新卒として働かなければいけない」と思っている理由について。

    その最たるものは、人生の選択肢を限定したくないためだ。

    私は今就職をしないと、将来選びたくても仕事を選べない状態になってしまうのではないか、という心配がある。新卒ブランドが強い日本では、新卒で就職をしておかないと、いざ本当にやりたい仕事を見つけた時に、その仕事を選べなくなるのではないかと不安になるのだ。

    新卒で就職をしておけば、そのまま働き続けたり、転職したりもできるだろう。多様なキャリアプランを思い描ける。

    しかし、既卒の状態で何年か経過してから就職しようとしても、希望の仕事につくことは難しいだろうし、そもそも仕事を選択する自由はないに等しいように私は感じる。

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    非正規雇用として働くことはどうか?

    仕事の裁量や収入面を考えると、非正規雇用として働くことは、正社員として働くよりも将来への不安は大きい。

    いきなりフリーランスや起業して経営者になれるような才能も技術も、バイタリティーも、私にはない。何より仕事とはお金を稼ぐための手段だけではなく、自分と他者の人生を豊かにするものとしてもあってほしい。非正規雇用では仕事の裁量権や選択肢も限られてしまうと耳にしたことがある。やりたいことができても、自分の立場のせいでやりたいことが限定されるのは悔しいことではないだろうか。

    今就職しないことで将来の可能性を狭めたくないと、無意識のうちに考えてしまった。

    「大学出て何してるの?」気になる周囲の声

    新卒入社を「義務」のように考えているのは、きっと世間体を気にしていることも理由の一つだ。

    一般的に、大学を出たら働くことが「普通」であるはずだ。

    「え、働いてないの?」「大学出てフリーター?」「社会人になることから逃げてるだけ」「新卒就活、失敗したら人生終わり」など、考え出したらきりがない。周囲の友人たちは当たり前に就職して働いている中で、「仕事」がない不安定な自分の立場は際立ってしまうのではないか。

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    「ニートになりたい」と冗談で口にする友人はちらほらいるが、本気でそう思って就職をしない覚悟を持っている人はほとんどいない。

    働く手段としては、起業やフリーランスなどもあるだろう。

    しかし、仕事をしたことがない状態で明確に一つのこと、いわゆる「やりたいこと」をやり遂げようとすることはすごく難しい。一定の社会人経験を積んだ後にこそやるべきではないかと考え、やっぱり選択肢としては外してしまう。

    となると、やっぱり「新卒入社」しか道がないように感じてしまう。そして根底にある、働いてお金を稼ぐ「自立した」「一人前」の大人にならなくてはいけない、という焦り。

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    やっぱりなりたい、憧れの社会人

    就職への義務感を除いて、社会人になって働きたい理由も考えてみた。

    私には、「かっこいい社会人になりたい」という夢がある。

    子供の頃は、社会人と聞くと、スーツを着てオフィスでパソコンと向き合うような存在を連想していた。おそらく、最も身近な社会人である父がそうだったからだ。

    父には楽しく仕事をしているイメージはなかった。幼い頃から転勤が多く、単身赴任をして日本や海外を転々としていた父は、いつもなんとなく仕事で疲れていた。

    そんな父の姿を見て育った私は、「仕事って大変で疲れるものなんだ」と考えてきた。

    しかし、自分が年を重ねてたくさんの社会人を目にするうちに、「働くって素敵なことなのかもしれない」と思うようになってきた。

    最近は特にインターンの活動や就活を通して、知らなかった職業を新たに発見したり、今までなんとなく知ってはいた仕事の魅力を再発見したりしている。その中で「働くって本当にいろいろな形があるんだ」と気づかされることが多い。

    人を笑顔にしたい、社会に貢献したい、国を動かすような大きなことをやりたいなど、働く上で大切にしている価値観はきっと人それぞれだ。

    ただ、自分のやっていることに誇りを持って面白く仕事をやっている人たちは、皆それぞれ輝いて見える。

    何より自分や他者の人生を豊かにするため、目的を持って道を切り開いていく社会人の姿は本当にかっこいい。そんな存在に早く私もなりたいのだ。

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    「私は入社して働きたい」考えた末の選択

    どうして就活をしているのか? そもそもどうして働きたいのか?

    友人の発言をきっかけとして、そんな問いを自分の中に立てた。当たり前に思っていた「新卒」の意味を自分なりに捉え直そうとする大切な時間となった。

    いろいろ考え込んでしまったが、自分がこれから働く意味を改めて考える良い機会となったように感じる。結論、自分としては個人で働いたり、学生を続けたり、あるいはフリーターになるよりも、企業に入社して仕事をする方が思い描いた人生を歩むことができると思っている。

    そのため、大学の次のステップとして実際に企業に入社して働いてみたい。私は、自分が社会人になるために自分の新卒チケットを使おうと思っている。

    就活生日記♯05 新卒カードを捨てたくない 立教大学文学部3年 髙栁綾
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    仕事をして、やりたいことがたくさんあるのだ。

    会社員生活で出世し、より責任ある立場として企業や社会をより良くしてみたいし、フリーランスとして働くことにも興味がある。副業や趣味にも力を入れたい。

    実際の仕事は辛く大変なことの方が多いのかもしれないし、仕事や人生を甘く考えすぎではないのかと、周囲から言われることは多い。

    自分でもあきれる部分はあるが、自分がこの気持ちを忘れなければ、どんなことでもかなえられると思っている。そのためにも今回、ここで記したことを忘れずに社会人になりたい。

    とはいえ、私はいまだ就活中の身だ。

    自分の憧れる社会人になるため、人生を豊かにするための一歩として、まずは自分にあう企業を見つけて内定を獲得したい。自分の理想とする人生のために、これからも就活は続けていくつもりだ。

    (文:髙栁綾、デザイン:高木菜々子、編集:筒井智子)