やりがい、成長、年収よりもリモート希望「もう会社に戻れない」

やりがい、成長、年収よりもリモート希望「もう会社に戻れない」

    コロナ禍で広がったリモートワーク。最近は「オフィス回帰」を求める動きがあり、転職の動向調査では、リーダー層の半数近くが出社に「賛成」です。一方、全体としては「反対」の意見が半数近くに上ります。

    立場によって賛否が割れていますが、コロナ禍で学生時代を長らく過ごしたZ世代の就活生にとっては、働くなら「リモートワークは必須条件」だという調査結果も発表されました。

    「もう出社はしたくない」という空気が広がるなか、どんな働き方が最適なのでしょうか。

    目次

    職位で割れた「出社回帰」への賛否

    ワーキングペアレンツ向けの転職サービスを運営する「XTalent」が実施した転職動向の調査(全国20代〜50代の男女1,085人対象)によると、「リモートワークを廃止・縮小する企業が増えている出社回帰現象」への意見として「反対」が全体の48.7%に上り、「一部賛成」(37.9%)を上回りました。はっきりと「賛成」と答える人は1.3%にとどまりました。

    仕事・家事・育児と多くのタスクをこなす人たちにとって、出社すること自体が重荷に感じられ、背景に通勤の時短やスケジュール調整にも柔軟なリモートワークへのニーズがあることがうかがえます。

    一方、30〜40代のリーダー層以上の回答者は、出社回帰に「一部賛成」と「賛成」を合わせて半数近くを占め、「反対」(39.6%)と逆転しました。

    リーダー層にとっては、チームビルディングや日々のコミュニケーションのしづらさを感じているのかもしれません。

    出社回帰あなたはどっち? リモート推進のZ世代 反対派の管理職
    出所:XTalent株式会社より

    調査によると、反対する女性は、少子高齢化で労働人口が減っていく中で多様な働き方を進めて行かなければならないと強調します。

    「せっかくコロナによって、リモートワークで仕事ができるし、メリットも多いことが分かったのに、それをまた単純に元に戻す流れをとるというのは、明らかに発展性がない」

    「コロナ前の固定概念に縛られているだけではないかと思います。高齢化、人口減とますます働き手が少なくなる日本において、このコロナで得た『リモートワーク』という強い武器をしっかり活かして、多様な人、多様な働き方を企業が積極的に活用していくべきだと思います」

    出社回帰あなたはどっち? リモート推進のZ世代 反対派の管理職
    chachamal / iStock

    30代男性は「働き方への柔軟性が低い、ということ自体が人材採用の競争力の低下を引き起こす」と指摘します。

    一方で、出社回帰に賛成派の意見としては以下のような声があげられています。

    「サービス業、小売業になるので、出社する人たちが増えた方が経済が回る(お金を使う頻度が増える)と感じるため」(30代男性・セールス系)

    「出社の方が捗ることもあるのは理解しているので」(30代女性・マーケティング系)

    「リモートワークは作業効率が悪い」(40代男性・セールス系)

    コロナ禍で変化した企業選びのポイント

    調査では、「新型コロナウイルス発生前後で、企業選びにおいて重視していた条件の上位3つを教えてください」という質問への回答も公表しました。

    2019年以前は、1位が「仕事へのやりがい」、2位「自分の経験が活かせる、成長できる」、3位「一緒に働く経営者・仲間の人柄、社風」でした。

    これに対して、コロナ禍以降(2020年〜2023年)では、1位が「リモートワーク可」、2位「柔軟な勤務時間」、3位「子育てに理解のあるカルチャー」と、上位が入れ替わり、特に働きやすさを求める声が強まっていることがわかります。

    出社回帰あなたはどっち? リモート推進のZ世代 反対派の管理職
    出所:XTalent株式会社

    「フル出社の会社に、もう戻れない」

    2月に転職した都内の男性(33)は、入社を決めた理由の一つに「フルリモートの職場だったから」と話しました。

    「前職は毎日、出勤していました。朝も早いですし、セクションリーダー(上司)の仕事が終わるまで、顔色をうかがって無駄に残業する日々。効率の悪い働き方をしていました」

    今はリモートで会議参加やPC作業をしており、早起きしたり、満員電車に乗ったりする必要もなくなりました。上司を「忖度」した無駄な残業もなくなったといいます。

    「必要な時に会社に行けばいいので、自分の判断で出社とリモートの使い分けを判断できるのは嬉しいですね。フル出社の会社には、もう戻れません」と語ります。

    出社回帰あなたはどっち? リモート推進のZ世代 反対派の管理職
    west / iStock

    就活生もリモートワークできるかを重視

    リモートワークを求める声は転職者だけに限りません。

    コロナ禍で学生生活を過ごしたZ世代の就活生の間でも、企業側にテレワークを求める割合が高くなっています。

    就職情報を発信する「学情」が、2024年度卒の就活生を対象にした調査では、約6割の学生が「就職活動において勤務スタイル(出社かテレワークか)を重視する」と回答しました。

    出社回帰あなたはどっち? リモート推進のZ世代 反対派の管理職
    出所:株式会社学情

    就職先に希望する勤務スタイルでは、「出社を基本とし、週に数日テレワーク」(46.5%)と「同じ割合で出社とテレワークを組み合わせる」(22.5%)と、在宅でのリモートワークを週の半分以上で求める声が7割近くに上りました。

    「毎日出社」は16.5%で、「毎日テレワーク」は3.1%にとどまる結果で、出社とテレワークを組み合わせた「ハイブリッド型」を希望する声のほうが大きいです。

    出社回帰あなたはどっち? リモート推進のZ世代 反対派の管理職
    出所:株式会社学情

    オンライン中心だった大学生活で

    筆者は就職活動を終えたばかりの大学生4年生です。大学生活は新型コロナウイルスによる影響で、オンライン授業やオンデマンド配信の講義が当たり前でした。

    大学生活の収入源としてバイト代わりに3年間、リモートでの仕事も経験しました。大学でも学外でも、オンライン上での活動が日常です。次第に、毎日のように出退勤やその準備に時間を奪われることをネガティブに感じるようになりました。

    出社回帰あなたはどっち? リモート推進のZ世代 反対派の管理職
    paprikaworks / iStock

    一方、「リモート中心の生活」が数年間も続いたため、「社会人になれば心機一転、リアルで人と関わる機会が増えるのではないか」と期待もしています。

    来春に入社する予定の会社はリモートワークが可能です。憧れの出社を心待ちにしつつ、在宅勤務も活用しながら、自分のライフスタイルに合ったハイブリッドな働き方を探っていければ嬉しいなと思います。

    (取材・文:鍬崎拓海、編集:比嘉太一、野上英文)