「理系就活ってラク」最終面接の壁、自己分析の“ふりだしに戻れ”

「理系就活ってラク」最終面接の壁、自己分析の“ふりだしに戻れ”

    JobPicks編集部の学生インターンが、就職活動のリアルな体験や等身大の思いをつづる「就活生日記」。今回は、理系界隈でよく話題になるという「自分史作りって必要なの?」という話題から。自らの最終面接での失敗談から、自分なりの答えを探りました。

    就活生日記♯05 理系に「自分史なんて要るの?」

    目次

    「自分史作りって必要なくない?」

    理工学部で修士1年の私はいま、人生2度目の就活中です。学部時代の就活では、友人たちとよく、こう話していました。

    「自分史づくりって要らなくない?」

    理工学部生の多くは、エンジニアなどの技術職や文系でもコンサルティングといった専門職を志望していました。

    このため、「採用で見られるのは志望度の高さと能力。人間性はそんなに見られないし、せいぜい自分の強みと弱みくらい把握しておけばいいかな」というのが、周囲の何となくの共通認識でした。

    就活生日記♯05 理系に「自分史なんて要るの?」
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    私も自己分析はそこそこに、これまでの20数年間の半生を振り返る「自分史作り」には手をつけていませんでした。

    営業職を志望していた私の考えは「営業で最も大事なのは人当たり」。そこで就活では、人当たりがよく、かつ営業成果を出せる「出来る人」に映るようなアピール方法ばかりを考えていました。

    自分史作りに割く時間があったら、1つでも多くの模擬面接やグループディスカッションの経験を積んで、「出来る人」に見せる練習を重ねた方がいい。そう思っていたのです。

    ほら、2次面接までトントン拍子

    就活は準備も選考も順調に始まりました。

    ESでは、志望動機やガクチカ(学生時代に力を入れた経験)が主に聞かれますが、それぞれの業界・企業で最もウケがいい(あるいは求められている能力に合致しそうな)エピソードを選び、志望動機を書きました。

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    1次と2次面接は、ほとんど30分程度。面接担当者は、人事や志望した部署の社員で、年齢層も幅広い印象を受けました。

    質問はESの内容に沿った内容がほとんどでした。私は面接では緊張しない性格なので、とても生意気ながら「就活って案外、楽だな」という感覚すらありました。どの面接も手応えがあり、その場で次の面接に進むことをを伝えていただけることもありました。

    振り返ると、1次・2次面接を比較的スムーズに通過できたのは、入社後に即戦力として使えるスキルや人当たりの良さを上手くアピール出来たからだと思います。

    最終面接で“連敗” 自己分析の不足を痛感

    こうして「余裕をぶっこいていた」私が、何度も失敗したのが最終面接でした。

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    「能力」や「それを証明する経験」、「一緒に働きやすそうか」といったことを見られていたのは、1次、2次面接まで。

    最終面接では、次のようなポイントを重点的に見られていると感じました。

    • その人が頑張るための「原動力」

    • 「原動力が生まれた背景」

    • 「会社に本当にフィットしそうか」

    このうち「原動力」を私はうまく言語化できませんでした。

    原動力は、業界ごとに臨機応変に持ち出したガクチカや1つの成功体験や経験からだけでは、なかなか絞り出すことができません。自分のこれまでの人生すべての活動の中から、「原動力」が生まれたきっかけや軌跡を探す必要があったのです。

    就活で最もこの解に近づけるアプローチが、「自己分析・自分史づくり」だと思います。

    役員「それだけ? そんなに簡単じゃないと思うけど…」

    最も悔しかった最終面接での私の失敗体験を振り返ります。

    面接担当者は役員クラスで、いかにも頭のキレの良さそうな男性でした。30分間の面接の後半、前半の受け答えをもとに質問されました。

    「あなたが営業として成果を出してくれそうな事はわかりました。じゃあ、10年、20年たったときに、うちの会社にどんな利益をもたらしてくれるの?」

    私は、「自分が営業で培った経験を活かし、若手社員の育成に従事したい。また、自身の辛かった経験やそれらを乗り越えた経験を踏まえ、若手の相談に乗り、より良い結果を出せるよう支援したい」と答えました。

    背景のエピソードとして、「塾講師として、受験生の生徒を励まし続けた経験を活かしたいから」という内容も話しました。

    ただ反応は、「それだけ? 他者を元気づけるのって、そんなに簡単じゃないと思うけど…」。

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    振り返ると、この役員が聞きたかったのは、私がいますぐに使える力やわウケのいい経験だけではなく、もっと根っこの考え方だったように思います。

    1. 私が若手の支援をしたいと思った感情面での原動力

    2. それに紐づく、自分が主役となった経験

    こうした深掘りした答えが何一つできませんでした。

    最終面接の壁は思ったよりも高く、私はようやく気づきました。自分のこれまでの人生すべてから、揺るぎない「原動力」とそれが生まれたきっかけを探す必要がある、と。

    就活で最もこの解に近づけるアプローチが「自己分析・自分史づくり」だと、私は思います。

    私の14年間 ペンを握って振り返ってみた

    記憶がある小学校から大学院までの14年間の出来事を3ステップで振り返りました。

    まず、パソコンやスマートフォンで打ち込むのではなく、ペンを握ってノートに具体的な出来事を書き出す作業から始めました。このアナログなやり方は、自分自身の過去を整理しやすいだけでなく、昔の記憶を呼び起こしやすいと感じました。

    次に、書き出した出来事について、楽しかった経験や辛かった経験をそれぞれ書き足しました。

    最後に、これら経験から今の自分の「原動力」につながった体験を蛍光ペンでマークして、当時の思いや振り返ったことで気づいた感想、教訓などを深掘りしました。

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    (自分史ノートの一部:小学生編)

    この「深掘り」の一つでは、大学受験について振り返りました。

    中高一貫教育の高校3年生、周りの多くの友人たちは指定校推薦やAO入試で進路が決まっていました。私は一般入試で難関私立大学を目指していましたが、受験のモチベーションを継続させることにとても苦労しました。

    その当時の私は、自らが小学生だったころの中学受験を振り返っていました。中学受験では遅れを取るなか、あきらめずに挑戦したことで最後は合格。こんな成功体験を思い出しました。

    この体験を思い出した高校3年生の私は、同級生の多くが進路を決めて遊び始めるなか、自分の受験勉強に打ち込みました。もうダメかもしれないとあきらめかけても、投げ出さずにやるべきことに集中した6年前の経験や自信が支えになったのです。

    そして、大学受験でも志望校に合格し、その後に経営工学という分野に出合って、大学院で研究に励んでいます。ありがちな成功体験かもしれませんが、「粘り強さ」という私自身も自覚する性格や強みにつながっていると、改めて気づくことができました。

    就活生日記♯05 理系に「自分史なんて要るの?」
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    日々振り返れる“自分史”手元に

    自分史とは過去の振り返り。私は少し恥ずかしいと感じてもいました。ただ、成功体験だけでなく辛かった体験も書き出して、一歩引いて俯瞰してみると、辛い体験もいまの私の強み、そしてその原動力になっていると実感しました。

    大学院生になってからの「人生2回目の就活」。就活をどこか軽く見ていた1回目は、成功体験や楽しかった出来事といった耳障りのよいエピソードだけを都合よく振り返っていました。そしてそれを得意げに面接官にアピールすることが、目的化していました。

    就活生日記♯05 理系に「自分史なんて要るの?」
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    「活躍できる自分」をPRしたいために、ポジティブな振り返りばかりしていましたが、そうではなく、ネガティブな感情や経験からも自らの強みを見いだすことができました。これは自分史作りで、丁寧に自分と向き合った一つの成果だと思います。

    いま日々、エントリーシートの作成や面接対策に追われています。志望する業界で働けるよう、等身大の自分をしっかりアピールしたい。自分の強みや就活で大切にしたい軸を手書きでまとめた「自分史ノート」を日々めくって、私は就活に改めて向き合っています。

    (文:吉岡彩羽、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)